フキ(フキノトウ)

広島工業大学 環境学部 地球環境学科 教授 中野 武登(なかの たけと)

フキ(蕗)については皆さんよくご存知だと思います。

フキは「富貴」に通じること、また雪の残る土の中から春に先駆け、重い土を持ち上げ、冬の落ち葉もものともせず黄緑色の芽を出すフキノトウ、このようなことで、古来からフクジュソウなどとともに新年の花として飾られてきました。

今回は、このフキノトウについて少し書いてみます。

さざれ水 うねれる岸に 蕗(ふき)の薹(とう)
三つ四つ見えて 小雨に濡るる

窪田 空穂

フキの芽は、実は夏のころから土の中に用意されているのです。フキノトウを良く見てもらいますと解りますが、準備段階から花になる芽とその葉になる茎は別になっています。それぞれが多くのリン片で覆われて寒さをしのいで越冬します。

春の気配を感じた途端に、まず花芽がふくらんで頭をもたげてきます。葉をつける短い茎には幅が広く大きくなったリン片が花の周りを包むようにつきます。これが次第に土の表面に姿を現してきます。この花茎は、そのままにしておきますと、どんどん伸びて30cm程度になり花を咲かせます。

雌雄異株で、一般に雄花は白黄色、雌花は白色です。でも伸びきった花茎の姿は、ぼんやりした姿で、引き締まった格好ではありません。花が開いてしばらくしてから地下茎から私たちが良く知っている葉が伸びだしてきます。

フキノトウは、早春をつげる花の芽です。フキノトウはまだ花が開かないつぼみのうちに摘み取ります。

料理をするには若いほど良いので、普通は時期を見計らって、土を掘り返して探します。土の中でまだ眠っているかもしれない若い芽を掘り取るのは、なんとなく可哀そうな気がします。

摘んできたフキノトウは、一つまみの塩を入れた熱湯でゆでて、細かくきざんで味噌などで食べます。地味な花ですが私たちの口にほろ苦い春をはこんでくれる食材の一つです。また、天ぷらにしたり、味噌漬けや塩漬けにして保存食にもします。

秋田県では、フキノトウが県花です。

寒いですけど、春の味覚を探しに野山へ出かけてみられてはいかがですか?

探すときは、半日陰で保水力のあるような場所を目当てに出かけてみて下さい。

着てみれば 雪消の川べ しろがねの
柳ふふめり蕗(ふき)の薹(とう)も咲けり

斉藤 茂吉

冬はやき ふきの薹(とう)をも我つまむ
老いたるものは 香をかぐはしむ

土屋 文明

山峡を バスゆき去りぬ 蕗(ふき)の薹(とう)

三好 達治

蕗(ふき)の薹(とう) 雲の茜は空にのみ

馬場 移公子