くりさき しんいちろう
栗崎 真一郎 Shinichirou Kurisaki
工学部 建築工学科
准教授
出身:熊本県 (鹿児島県立鹿児島中央高校)
s.kurisaki.fv@it-hiroshima.ac.jp
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私の専門は『建築計画』『建築設計』です。『建築計画』とは、建築物が人間の心理や行動、また地域に対して与える影響にまで目を配った上で、建築を考えていく学問のこと。実際の建築設計も行うのですが、その前段階に比重を置いているわけです。
建築計画の観点から私が注目しているのが「学校の統廃合について」。少子化の時代、あちこちで統廃合により学校の数を減らそう、と計画されています。しかし学校、特に小学校の場合「この小学校はこっちに吸収させよう」と単純な数合わせで進めると、様々な面で悪影響を及ぼしかねません。
子供自身はどうでしょう?統廃合によって近くの小学校がなくなると、遠いところまで通わなければなりません。「吸収された」という引け目が、子供の心理に影を落とす可能性もあります。そして、小学校は地域の「コミュニティーを形成する場」という重要な役割を果たしています。なくなることで、地域社会のつながりが壊れていくかもしれません。学校自体、従来通りのつくり方でよいか?という問題もあります。
私は、少子化時代に合った小学校のあり方・統廃合の進め方を研究しています。
参考になる事例が広島にあります。広島は離島の多い地域ですが、離島での小学校の統廃合問題は、より深刻です。島に一つしかない小学校がなくなると、子供たちは毎日、船で通学しないといけなくなるのですから。
そこで複数の小学校や中学校が協力して授業を行い始めました。普段、子供たちはそれぞれの学校で授業を受けます。そして週1~2回、音楽や体育などの時、複数の学校から1つの学校へ、子供たちが集まるのです。これなら通学もさほど大変ではありませんし、児童数減少により単独の学校では難しかった授業が、行えるようになります。なにより子供に、他校の児童と触れ合う機会が生まれます。少子化が進み、統廃合せざるを得なくなった時でも、普段から見知っている児童が大勢いる学校に行くなら、子供の心理的な負担は減るでしょう。
言わば『小学校のネットワーク化』。これで統廃合問題が全てうまくいくわけではありませんが、少なくとも数合わせで単純に線引きするより、はるかに良いやり方です。離島だけでなく山間地域や、もちろん都市部の学校でも十分に応用できる方法だと思います。
統廃合後の学校をどうするか、も見逃せません。小学校は、地域で暮らす人々の憩いの場、情報発信の場でもあります。中には、かつてその学校に通った人もいるでしょう。学校には、いろんな人々の思い出がつまっています。いらないからと簡単に壊してよいのでしょうか?
また少子化により、学校には使わなくなった余分なスペースが生まれています。放置するのはもったいないし、子供たちも寂しく感じるでしょう。ある学校では、余分スペースを児童一人ひとりが自由に使って良い空間として提供しています。そこに子供たちが自分の描いた絵を飾ったりするのです。絵画を見た先生や児童が「よく描けているね」なんてコメントを残すことも可能。先生や児童、それに保護者のコミュニケーションは、以前より活発になりました。こういう工夫を考える必要もあるでしょう。
新たに学校を建てる場合などの研究も欠かせません。人数が減っても対処できるよう、可変スペースを多く配置しておくなど、少子化を前提とした設計とはどんなものかについての研究も進めています。
方法は一つではありません。子供たちや地域の人々のため、より良い小学校のあり方を追究したいと考えています。
ゼミ取材 こぼれ話
『今後の学校のあり方』を考えるため、地域の学校との交流にも積極的な栗崎先生。2008年の夏休みには、ゼミの学生が中心になって、近くの中学校で『図書室の改造計画』を行いました。コンクリートの床は冷たいし本を利用しづらい、何とかしたいという学校側からの相談を受け、床を木張りにすることを提案。主旨に賛同した木材業者から床材を提供してもらい、さらに本職の作業員もお手伝いとして参加。栗崎ゼミの院生が工事の計画と段取りを行い、ゼミの学生と中学生が力を合わせ、室内のレイアウトの変更や床の張替えを実施したのです。その結果、木の香りがする、温かな床の図書室が完成しました。工事に参加した学生は「機会があれば、どんどん地域の学校に出ていきたい」と意欲も盛んです。