さかい ひさかず
酒井 久和 Hisakazu Sakai
工学部 建築工学科
准教授
出身:大阪市 (大阪府立天王寺高等学校)
h-sakai@cc.it-hiroshima.ac.jp
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日本は平野部が少ないため、丘陵地を切り開くのに「石垣」を多用してきました。現在でも石垣は町の至る所にあり、昔ながらの風情ある景色を形づくっています。しかし、頑丈そうに見える石垣も、地震のように大きな力が加わると、崩壊する可能性があります。
建物そのものに関する耐震性の研究は、いろんな研究者が様々な角度から行っています。一方、石垣や土塀といった構造物の耐震性は、今まであまり研究されておらず、耐震性に対する評価の精度が高くありません。しかしいざ地震が来て石垣が崩壊すると、そばを通行する人が下敷きになってしまうかもしれません。また石垣が崩れて道が通行できなくなると、その後の復旧作業の妨げにもなります。こうしたきっかけで、石垣の耐震性評価を確立しようと考えたのです。
石垣を構成する石は均一の大きさでないので、初めの頃はどのような手法を用いればよいか、と四苦八苦でした。しかし研究を重ねるごとにデータが蓄積されたため、最近はかなり評価精度が上がってきています。
石垣を出発点に、今は研究を多方面に広げています。その一つが、京都・清水寺の耐震性評価。清水寺の参道も、石垣で構成されています。参拝者や観光客の多く集まる場所ですから、もし地震が襲ったら、被害は大きなものになるかもしれません。何より、清水寺は世界に誇る日本の文化遺産です。清水寺では参道に加え、本堂が建つ地盤そのものの耐震性評価も行っています。特別な許可を頂き、本堂の下にもぐって地質や地形の影響を調べるんです。ただ、清水寺のような歴史建造物は、耐震性に問題があるとなっても、すぐ補修というわけにはいきません。文化遺産としての価値を守りつつ、地震にも耐えられるようにするには、まだまだ調査と研究が必要です。
清水寺へのフィールドワークは毎年行っているのですが、その際には学生も連れて行きます。最近も7名のゼミ生を連れ、一緒に本堂に潜ったり、参道を調査して回りました。清水寺の近くにも断層があり、マグニチュード7クラスの地震が起こる可能性があるのですが、そうなれば参道の崩落により、道幅の半分が埋まってしまう箇所も出てくると予測されます。実際に現地を見た学生たちは、事の重大さがより深く実感できるようです。
地震が起こった場合、都市の地下部にどのような被害が起こるか、というテーマにも取り組んでいます。具体的に言うと、大阪に焦点をあて、地震によって川の堤防が決壊し、街が水浸しになったら、地下がどんな状態になるか調べているのです。
同じ大都市でも、東京は地震への備えが進んでいます。しかし大阪ではこれから。堤防が壊れたら、海に近く、平均海水面より低い位置に出入口のある地下鉄の駅には大量の水が侵入します。その水は地下鉄を通じ、梅田駅にまで達すると想定されるのです。浸水しないように堤防の補強もやっていかないといけませんが、堤防は長く、また堤防の耐震性評価の精度も低いため、どこをどれだけ補強すれば良いか、ハッキリ分かりません。そこで浸水しても被害が最小限ですむよう、今から対策を立てておこうというわけです。
研究成果を実際の対策に活かすには、評価精度の高さが重要。そのためには地道な調査と分析を繰り返す以外にありません。大変ですが、人々の安全のためだと思えば、とてもやりがいがありますよ。
ゼミ取材 こぼれ話
いろいろな対象の耐震性評価手法を確立しようとする酒井先生のもとには、様々な案件が舞い込んできます。上で挙げたものの他にも、高速道路などの大規模構造物を支える柱の耐震性をアップさせるには?といったテーマにも取り組み中。「大きな部材は耐震性は高いが、変形させようとする力には弱い。そこで変形力をアップさせるため、同じ部材を何本も束ね、拘束して使ったらどうだろう?とか」。『集合柱』と呼ぶこのやり方なら、費用をさほどかけずに、耐震性と変形力の両方を向上させることができます。地震に対する備えを万全に整えるため、酒井先生は多彩なアイデアを駆使しています。