三好 孝治

みよし たかはる

三好 孝治 Takaharu Miyoshi

工学部 都市デザイン工学科 准教授
出身:広島県

江戸時代に栄えた廿日市の宿場町を、3次元CGで作成

広島県廿日市市は、江戸時代に宿場町として栄えました。しかし幕末の火災により、建物の多くが焼失し、今はその面影は残っていません。三好研究室では、正徳年間(1711~1715年)の絵図を基に、この宿場町の町並みの想像図をCGで作成しました。絵図に書かれてあった町屋の間口や奥行きを参考にして大きさを推定し、現存する江戸期の町屋をモデルにしています。
参勤交代の際に大名が宿泊する本陣の再現には、特に多くの研究を重ねました。現存する間取り図を細かく読み取るだけでなく、岡山県の旧矢掛本陣を参考にし、郷土史家の方々にも助言を得て、3次元想像図を完成させました。古い町並みを再現させるには、地域の歴史、文化、伝統を理解しなければなりません。CG化を通じて当時の人々の暮らしがイメージできます。

PDAを使ったフィールドワーク

“歴史を学んで、町づくりに活かす”ために、三好研究室は歴史探訪、古家探訪、聞き取り調査など、様々なフィールドワークをおこないます。特徴的なフィールドワークとして、PDA(携帯情報端末)とGPS(全地球測位システム)機能を利用したものがあります。PDAに古い絵図を取り込み、絵図中の道をたどって歩いて、江戸時代の廿日市の町を体感しようとするものです。例えば、天満宮前の本陣があった場所でPDAを操作すると、3Dの本陣の画像が表示できること,音声で本陣建物の情報を聞くことができること, 魚棚町のうおやをクリックすると、当時の魚屋を描いた絵が表示できるなどの機能を持っています.ですから,歴史学習をしてもらうためのシステムと言えます.
PDAを持って廿日市宿を歩くと,静かな住宅地が、かつては魚問屋が立ち並ぶ賑やかな町だったことに驚かされます。それは、実際に現地に行かなければ、感じることができません。PDAの絵図と現在地図を切り替えながら歩いて町の変化を知る時、どのような町づくりをしていったら良いのか、多くのヒントが得られます。現在、PDAに江戸に加えて、更に明治、大正、昭和、現代の地図を格納し、町の賑わいの変遷をたどるフィールドワークを計画中です。それを実施すれば、町の活性化に焦点をあてた新たな提案ができると考えています。

屋号の分布から、江戸時代の町を把握する

正徳年間町屋絵図などの資料を基に屋号に関する研究をおこなっています。屋号から商売や家業を特定するのは大変に難しいことです。有力な商人は時代によって、次々と儲かる商売に手を広げたからです。しかし、屋号の分布を調べてみると、町の特徴が明らかになります。魚屋が集中する地域、材木屋が集中する地域、鍛冶屋が集中する地域など大まかな町の形がわかってきます。三好研究室では、廿日市市郷土文化研究会の協力を得て、これまでに何度も聞き取り調査を行い、研究を進めてきました。奈良屋と宮屋という町の有力商人については、奈良屋は宿屋、宮屋は米屋が主な家業であったと推定していますが、まだまだ不明な点が多く、今後も研究を続けて行きます。

学生たちが自治体に町づくりを提案

町には、長い歴史があります。それらを無視しては、良い町づくりはできません。地域の文化や歴史を知り、それを活かす町づくりを考えていくことが必要です。毎年、ゼミの4年生には、卒業研究で町づくりの提案をさせ、自治体関係者にプレゼンテーションを行っています。地域の歴史を学び、埋もれた歴史を少しずつ明らかにして、それを基に町づくりの提案を行うのです。卒業した先輩の提案を4年生が卒業研究で取り組む場合もあります。篠尾山の隅にある常夜灯に灯りをともし、スポットをあてるという提案を卒業した先輩がしました。その提案を基に、町の夜景のCGを後輩が作成し、常夜灯に灯りをともしました。
私はもともと地図画像処理が専門です。大学生の頃に、旧東海道を歩きました。その中で、古い町並みや街道に残る史跡などを見て、思いを過去と現在に馳せました。この時の経験が現在の研究に通じていると考えています。また、廿日市に残る江戸期の絵図は研究にとって重要なものですが、絵図も古地図ですから、私の専門分野の1つといえます.学生たちには、古い町並みが残る地域や街道を歩き、その良さをわかって欲しいと思います。幸い今のゼミの学生たちは、「宮島の町並みをCGで復元したい」「歴史のある他の地域の町並みを調べたい」と意欲旺盛です。そこから、新しい町づくりの提案がうかぶことを期待しています。

ゼミ取材 こぼれ話
「学生は、日本の良さ、美しさを忘れずに、建築、町つくりを行ってほしい」、と三好先生。 また美しいものを美しいと感じる美的感覚を養うのは、まず「心が豊かでなければだめだ」、とも。 三好先生自身、大学生だったころ、夏休みを利用し、二度も東海道を歩いてあらゆるものを見て回った 経験があるそうです。とにかく、地図を見るのが好きだという先生に、好きな言葉をお聞きしたところ、 「心はタイムマシーン」「思いを馳せれば世界中どこでも行ける」。 三好ゼミは、先生の夢の研究でもあったわけです。