中山 隆弘

なかやま たかひろ

中山 隆弘 Takahiro Nakayama

工学部 都市デザイン工学科 教授
出身:広島県
t.nakayama.4d@it-hiroshima.ac.jp

「橋の設計」から「社会基盤構造物の安全性研究」へ

私が卒業後の仕事として一時期、「橋の設計業務」を選んだのは大阪大学3年生の時。「プレートガーター橋」と「トラス橋」という2種類の橋の設計演習がきっかけでした。たとえ小規模でも自分の設計した橋が橋梁エンジニアの手によって目に見える形となり、長きに渡って不特定多数の人々に利便性を提供できる。そこに魅力を感じたからです。
しかし、卒業研究を行うために選んだ研究室は、とてもアカデミックな雰囲気でした。また、日本の構造工学分野をリードしておられた当時の恩師から、栃木県に建設される鋼製タワーの耐風安全性に関する研究をテーマとして与えられ、それについて自分なりに一生懸命勉強している内に、設計よりも研究に興味が移ったのです。それで大学院に進学し、
大阪市に架かる「豊里大橋」という斜張橋(写真)の風洞実験や構造信頼性理論の研究を行いました。現在は、橋や河川堤防などの社会基盤構造物や斜面などの安全性を確率論的に評価する研究や、古くなった構造物の維持・補修計画法や状態監視法に関する研究を行っています。構造信頼性理論や不規則振動論がそれらのベースになっているのですが、対象構造物は多岐に渡ります。テーマによっては企業の方々と共同で進めることもあります。

地震が橋の安全性にどう影響するか、をシミュレーション

1995年におきた阪神・淡路大震災で、従来、安全と考えられていた鉄筋コンクリートの橋脚がもろくも崩壊しました。その光景を目のあたりにし、構造物の安全性をより深く考えるようになりました。
それをきっかけに、私の研究室では、長い時間をかけて開発した手法で震災時の地震データを解析。同時に、同じやり方を活用した新たなシミュレーション手法を使って、鉄筋コンクリート橋脚の安全性に関する検討を行いました。一連の研究によって本大学で初の工学博士が誕生した時は、本当に嬉しかったですね。研究結果がただちに安全性基準につながるわけではありませんが、この考え方が、新たな橋の耐震設計や、既に造られた橋をメンテナンスする際に活かされることを期待しています。
それだけでなく、私たちの研究は、構造物の安全性に対する「説明責任」を果たす際にも有効だと思っています。どんなに頑丈そうな橋でも、100%安全だとは言えません。設計時の想定を超える地震が起きる可能性は、ゼロではないからです。もちろん橋梁エンジニアは、橋が壊れる確率をほぼゼロにするよう努力しているので、いたずらに不安を感じる必要はありません。とは言え、どんなに注意していても交通事故に遭う確率がゼロにはならないのと同じで、「自分の造った構造物は100%安全である」なんて口にする技術者は不遜だとすら思います。阪神・淡路大震災の経験がそう教えてくれています。

港大橋

ゼミ取材 こぼれ話
「機能的にも形態的にもシンプルな構造物ですが、地域にとって確実に役立っているという点で、橋が好きです。完成した橋もですが、架設中の橋を見るのも好きで、学生時代、大阪港に架けられていた『港大橋』という巨大橋梁の架設風景を、1日かけて見ていた思い出があります」という中山先生。
では、先生が一番好きな橋は?「フランスのセーヌ川にかかるポンヌフ。パリに現存する最古の橋で、ごく一般的な石橋ですが、一つひとつのアーチ形状の美しさと、それらの連続性がもたらすリズム感、それに重厚感もあって、非常に印象に残る橋でした」。

ポンヌフ(Pont Neuf、フランス語で「新しい橋」の意味)はフランス、パリの現存最古の橋。橋はシテ島の西端をかすめてセーヌ川の左岸(南側)と右岸(北側)を結んでいる。シテ島の南側にアーチが5つ、北側にアーチが7つあり、全長238m、幅22m。