島 重章

しま しげのり

島 重章 Shigenori Shima

工学部 都市デザイン工学科 教授
出身:長崎県
s.shima.y7@it-hiroshima.ac.jp
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長い年月の日射や風雨にさらされることで、土はボロボロになる

火山爆発によって噴き上げられた岩石が、長い年月の間に日射や風雨にさらされもろくなり、ボロボロに風化したもの、これが「土」です。広島県内の地質の6割は花崗岩で形成されていますが、花崗岩が風化すると真砂土(まさつち)と呼ばれる状態になります。真砂土には隙間が多く、水が浸透しやすいのが特徴。大雨になると大量の水が入り込み、山の土を削っていきます。そうやって谷にたまった土が限界を超えると、土石流や土砂崩れとなって人の居住地まで押し寄せるのです。
土の成分・状態や、山や谷がどれほどの雨に耐えられるか、そして災害となった場合、どれくらいの土砂が流れるか。これらをしっかり調査し、分析しておくことが、土砂災害の予防・回避につながります。
土に関する調査・分析は、人工衛星による観測データを利用して行います。人工衛星が送信する電磁波で地表面の状態を調べ、過去に起こった土砂災害の統計情報を重ね合わせるのです。航空機レーザの観測データを使うと、より詳細な地形データも得られます。このように、様々なデータを活用し、対象の地点における土の風化具合を検討するのです。

土の強度を調べるための圧縮試験。
水を含むとまさ土の強度がどれくらい低下するかを実験している。

同じ「庄原地域の山」でも、土質は異なる場合もある

とは言え、これらの観測データや統計だけで全て把握できるわけではありません。そもそも土質が各地域で異なります。身近な例を挙げると、2010年、豪雨による土砂災害が発生した広島県の庄原地域。私が調査したところ、ある山では土がいくつもの筋状に削られていました。しかし削られ方は地表から50cmほどで、それほど深くない。一方、対面にある別の山は、土の削られた筋が一直線にあるだけ。ところが削られ方は深く、周囲の大木が根こそぎ倒されていました。同じ「庄原の山」なのに違う現象となったのは、山体同士の土質が異なることを示しています。
こうした違いは火山の噴き上げ方や噴出成分、また時代によっても出てきます。ちなみに広島市の場合、市の北西部では古生代(約5億4400万年~ 約2億5000万年前)にできた土が多いのですが、市の沿岸部では中生代(約2億5000万年~約6500万年前)に成立しています。つまり北西部の土の方がより『老化』している、ということです。
土質の違いや地形の特性まで加味して土砂災害の危険度を判断するのは、容易ではありません。私は必要に応じ、現地調査で採取した土の試験なども実施しながら、危険度予測の精度を高めています。

人工衛星データなどを活用して作成した宮島の「土砂災害危険度MAP」。赤い点で土砂災害の危険度が高い地域を示している。
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「環境を守る」ことが、土砂災害を防ぎ、生活を守るための最良の策

土砂災害を予防する対策についても研究を進めています。方法は多様ですが、今、注目しているものの一つは、土の中にあらかじめ水の通路を埋め込んでおき、水を出来る限り土に浸み込ませない、という方法。通路に使うのは自然由来のものなので、環境に余計な負荷をかけません。もう一つ、ボロボロになった土を固め、水に強くするため、産業廃棄物が利用できないか...という方法にも目を向けています。うまくいけば産業廃棄物の処理問題も解決でき、一石二鳥なのですが、こちらは環境負荷要因をどう取り除くか、という点でまだ課題が多そうです。
結局、土の風化を防ぎ、災害の危険性を減らすには「環境保全」が何よりの良策なのです。今、「里山」の大事さが様々な方面で見直されていますが、里山、すなわち身近な自然環境を無駄に荒らすことなくしっかり守れば、自然が一定の保水力を発揮してくれるため、土に必要以上の水が浸み込む可能性も減ります。その「里山」を守るためにも、里山を形成する土の性質を知らなければなりません。
「環境を守れば、私たちの暮らしも守られる」。私のゼミでは、そういった発想のできる技術者を育てていきたいと思います。

ゼミ取材 こぼれ話
2005年、白糸川沿いに発生した土石流が町まで流れ込み、被害をもたらした宮島の土砂災害。島先生は2010年にゼミの学生らと連れ立って、この地域がどのように復旧しているか見学してきました。「今、土砂災害のあった地域には土砂を防ぐための砂防ダムが完成しています。このダムを見ると、学生らはビックリしますね。見た目はダムと言うより、自然の石が積まれているだけですから」。国立公園であり、観光地でもある宮島では、環境に配慮し、極力その土地にある石などを使って復旧が行われました。これは、環境と調和した災害復旧のあり方を示す事例の一つです。「データ分析も大切ですが、学生にとってはこうした現場を見せるのが一番」と先生は語ります。