今岡 務

いまおか つとむ

今岡 務 Tsutomu Imaoka

環境学部 地球環境学科 教授
出身:島根県(島根県立松江南高等学校)
timaoka@cc.it-hiroshima.ac.jp

石膏をそのまま捨てると、環境汚染を引き起こす可能性がある

腕などを骨折した時、骨折箇所を固定するためのギプスとしても利用されている「石膏」を知っていますか? 石膏で作ったボードは、安くて耐熱性が高いため、天井材や壁材として建築物に盛んに用いられてきました。その建築物を建て替える際、石膏ボードも捨てられます。ところが、建材として使い勝手の良い石膏ボードも、ごみとなってしまうととても厄介な存在になるのです。そのまま埋めてしまうと、健康被害や環境汚染を引き起こす硫化水素を発生させることがあるため、きちんと管理された処分場で処理しないといけません。しかし管理型処分場の受け入れ余地は少なく、処分費も高くつきます。
そこでリサイクルできないか?と研究しています。石膏を650℃の高熱で焼くと、硫酸カルシウムの粉になります。こうしてしまえば、例えば道路の舗装などに用いられるアスファルトの混合物として使えそうです。他にも塗料の原材料としての使い道もあるかもしれません。
このように、再利用の難しい様々な廃材を、何とか資源として活用する方法を考えています。

再利用の難しい廃棄物を、どうやって再生するか

ワインのびんなどに使われている「色付きガラス」も再利用の難しい素材の一つ。そこで色付きガラスを細かく砕きガラスカレットにして、塗料の成分として使えないか?と考えています。塗料に混ぜ込むと、キラキラと細かなきらめきを放つ塗料になります。道路表示などに使えば視認性が上がるので、事故防止に役立つのではないでしょうか。
他にも、牡蠣の養殖に使うイカダの再利用、といったテーマもあります。牡蠣イカダには丈夫な竹を使うのですが、5年ほどでごみになってしまいます。その後の処分法に困っているのです。そこでこの廃竹を炭化させてコンクリートに混ぜ、海に設置する藻床ブロック・漁礁ブロックとして利用することを思いつきました。竹炭に多く含まれるケイ素が、海を豊かにする成分として働くのではないか?と検証しているところです。
私は以前、工場や事業所から排出される排気・排水・廃材など環境負荷要因をできるだけ減らす、という「ゼロ・エミッション」の実現を目指す文部科学省の研究プロジェクトのメンバーとして、研究に取り組んでいました。そこから「廃棄物のリサイクル・資源化」という方面の研究に向かい始めたのです。そんな私のもとには、いろんなものの再利用法に取り組んで欲しい、という依頼が舞い込みます。

びんに入った再生無水石膏やガラスカレット 右端は竹炭入りブロック

リサイクルの研究は、環境共生型社会の実現に不可欠

学生たちはいくつかのグループに分かれ、研究を進めています。「廃石膏ボード」や「廃ガラス」などの他、屋外で使用されるポリカーボネートシート(家庭のカーポートの屋根などに使用されている透明なプラスチック板材)から「環境ホルモン」と呼ばれる物質(ビスフェノールA)がどれほど環境に溶け出してくるか?といったテーマを担当する学生もいます。また石膏ボードについても、アスファルトの材料にするだけでなく、海砂を採取したことによって出来た海底くぼ地の環境を改善する修復用土の一部として利用する方法を研究する学生もいます。どの研究も、環境保全・環境改善を目指したものです。
本来は、例えば石膏ボードなら、再び石膏ボードとして利用する方が最も良いのです。処理のための費用や手間がかかりませんから。しかし、古くなった素材やごみになったものには、どんな不純物が混ざっているかわかりません。材質の劣化や不純物の混入が原因で事故になるかもしれないので、そのままは使えないのが現状です。とは言え、ごみとして捨てるには処分場不足の問題などもあるし、そもそももったいない。そこでリサイクルの研究が大切になってくるのです。
適切な再利用法を見い出すのは容易ではありません。しかし環境共生型社会の実現のため、一つでも多くの課題を克服していきたいと思います。

ガスクロマトグラフ質量分析計

ゼミ取材 こぼれ話
『広島循環型社会推進機構』の副理事長も務める今岡先生。この機構は広島県内の様々な分野の研究者が集まって設立されたNPOで、産業廃棄物などの有効なリサイクル法について研究を進めています。そこにはいろんな相談や提案が寄せられるのですが、適当な研究者がいない厄介な廃棄物は、副理事長である今岡先生が引き受けるケースが多いのです。「おかげで、私の研究する対象は、簡単にリサイクル法の思いつかない難物ばかり。解決策を探すのに、苦労しています」と今岡先生は苦笑します。扱いの難しい物ばかりで時間がかかりますが、先生は学生たちと共に、粘り強く解決策を追求しています。