おおくら ひろし
大倉 博 Hiroshi Ookura
環境学部 地球環境学科
教授
出身:新潟県新発田市(新潟県立新発田高等学校)
h.ohkura.x3@it-hiroshima.ac.jp
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地球観測衛星は、地表から高度500~1000kmという上空を周回しています。遠く離れると、それだけ広範囲を一度に観ることができます。「大気」や「海洋」といった広い範囲の変化を観測しようと考えた時、衛星による観測システムはうってつけです。
しかし地表を観測する際、「カメラを使って撮影」という具合にはいきません。地表が雲に覆われていると、雲に隠れた部分はよく見えません。問題を解決する唯一の方法は、私の取り組む「合成開口レーダ(SAR=Synthetic Aperture Radar)」の活用です。
合成開口レーダはマイクロ波と呼ばれる波長1cmから1mの電波を利用するので、カメラのような可視光線や赤外線を利用する光学センサと違って、雲などに影響されません。雲で覆われている部分も観測することができるのです。また光がなくとも大丈夫ですから、夜でも昼と同じように利用できます。もちろん、天候が雨でも問題ありません。
1年の半分は暗闇に包まれている北極・南極や、いつも雲に覆われている熱帯地方、雨の日が多い稲作地域などの観測には、特に役立つ方法だと思います。
合成開口レーダから取得できる画像は、通常の写真とは異なります。衛星から地表へ斜めに照射したマイクロ波は、対象物にあたると反射します。その反射の仕方でそこに何があるかを測定し、人間が認識できる画像に変換するのです。簡単な例で言うと、地表に何も生えていない平坦な場所は、マイクロ波が鏡での反射のように衛星の反対方向に反射されて衛星に戻らないので、データ上は暗く見えます。逆に森林のように草木が生い茂っているとマイクロ波の一部が幹や枝で反射して戻ってくるため、灰色に見えます。実際には高さ情報などもっと多くの情報が取得できるので、これらを総合的に利用するのです。
合成開口レーダの画像は白黒でしたが、最近カラー化ができるようになりました。このカラー化を施すと、地図のような地表データが作成できるのです。ただしこのカラー化は、いろんなやり方があります。レーダの情報をどのように活用すれば、より正確で、人間の目で見ても分かりやすい画像になるか、という点には工夫が必要。私のゼミには、データを自動でカラー画像にするプログラムを自分で組んでみよう、と研究する学生もいます。
最新のSARを搭載した衛星「だいち(ALOS)」による広島市の画像 (c)JAXA (c)MIT
私が主に観測しているのは、地表面の断層や地殻変動です。断層とは地下で起こるひび割れのようなもので、断層の急激な動きによって地震が発生します。地震による地殻変動を観測すると、地震を起こした断層運動がわかるため、その後の地震活動もある程度推測できます。
地殻変動の観測は、衛星がある位置である場所を観測したとします。周回する衛星が次に同じ位置に来た時、また同じ場所を観測するのです。何もなければデータは同じはず。しかしデータにずれが生じていると、地殻変動が起こったと判定できるのです。
観測だけでなく、私はレーダの情報を基にどんな地殻変動があったかを解析し、自動でカラー化するプログラムを作成しています。
断層や地殻変動の様子を知ることは、地震後の災害復旧や二次災害防止に欠かせません。地球上の様々なことを知るため、合成開口レーダを有効に活用したいですね。
ゼミ取材 こぼれ話
マイクロ波の反射によって、地表面の状況を観るのが合成開口レーダを使った観測の基本。するとこのやり方では、地下は観測できない、ということですよね? 「実は2010年から、地上のレーダを使って地下の様子も探ろうという研究を始めています。地下に埋まった水道管などは今までもわかっていますが、活断層などの存在を示せば、より災害予防に役立つのではないか、と」と語る大倉先生。レーダがどういう条件なら活断層を観測でき、うまくいかないケースではどんな解決策があるか、を調べるため、先生は学生たちと積極的にフィールドワークも行っています。「レーダが活断層ととらえたかどうか検証するには、現地調査が一番ですから」と先生は笑います。