菅 雄三

すが ゆうぞう

菅 雄三 Yuzo Suga

環境学部 地球環境学科 教授
出身:広島市(基町高等学校)
y.suga.mi@it-hiroshima.ac.jp
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宇宙を巡る衛星の情報を活用し、環境破壊や災害の姿を浮かび上がらせる

スリー、ツー、ワン、ゼロ、行けーー!。...大空の彼方に舞い上がり、地球の軌道を巡る人工衛星。現在、地球を巡る人工衛星は、数千機もあると言われます。宇宙から見ると、地球はどんな風に見えるのだろう?なんて、ワクワクしてしまいますが、それを解明しようというのが菅先生。先生は、衛星から送られるデータを取得・解析し、地球のリアルタイムな姿を浮かび上がらせるシステムを開発。衛星情報を利用して災害や環境を時間的・空間的に監視・分析し、災害復旧や環境保全に役立てる、という先生の研究は、平成22年4月、文部科学省の支援事業に採択されています。

「ランドサット」や「だいち」の情報を受信

広島工業大学には、日本の大学ではここだけという可動式の受信アンテナがあります。これまでNASA(アメリカ航空宇宙局)/USGS(アメリカ地質調査所)およびESA(ヨーロッパ宇宙機構)とライセンス契約を結び、「ランドサット」や「エンビサット」の観測情報を直接受信してきました。これも日本の大学では、広島工業大学だけ。近年では、日本が開発し打ち上げた「だいち」からの情報を受信しています。
準リアルタイムに取得できるこれらの衛星データをもとに、私たちはできるだけ素早く、正確にビジュアル化された衛星画像地図を作ろうとしています。
この地図によって、災害の状況などがすぐ分かるようになります。そうすれば、緊急にどのような対策をとれば良いか、復旧支援活動を適切に行うにはどうすれば良いのか、正しい判断が下せるでしょう。
1998年の中国・長江での大洪水や1999年の広島での土砂災害、2004年の新潟中越地震やスマトラ沖地震、2008年の中国・四川地震では、これらを活用し、いち早く被災地の状況を把握・分析できました。

環境破壊がどう進んでいるか、を明らかに

突発的な災害だけでなく、長い年月の中で地球環境がどう変わっていっているか、ということも観測できます。衛星からの情報で作った地図を、時系列的に解析すると、森林の伐採状況や砂漠化の進行、海岸線の浸食など、自然破壊の進み具合が分かるのです。気が付かないうちに進んでいる環境破壊に対し、科学的な裏付けを持って警鐘を鳴らせるわけです。
環境や災害の地図を作るのは、自然を守る上での基本。私のゼミでは、学生たちが衛星データから3Dのデジタル地図を作成するなど、高度な解析処理に取り組んでいます。
環境・災害監視システムは、正確さとスピード感が重要。学生たちも、衛星の情報で浮かび上がる地球の姿にワクワクしながらも、この研究が、安心で快適な社会を作り上げていくため大切だと理解してくれています。

国内外の機関と積極交流。イタリアの共同研究にも参加

私は、国内外の研究機関とも積極的に交流しています。最近では、イタリア宇宙機関が提唱する共同研究に、日本から選ばれて参加することになりました。イタリアは、人工衛星による地球環境観測システムの先進国。すでに観測衛星を3機も打ち上げており、今年10月に4機目の打ち上げが予定されています。そうなれば、地上の決まった地点を1mの地上分解能で毎日観測できるようになり、より高品質な地球環境や災害情報の抽出・解析が可能になるはずです。
この共同研究のなかで、私が開発してきた時間的・空間的な特性を生かした衛星画像生成・解析技術に基づき、さらに実用性の高い研究開発につなげたいと考えています。

ゼミ取材 こぼれ話
すべては感動から始まる
菅先生は、学生時代、もともと地上で測量をされていました。大学時代、ある講演会で、 その後の恩師となられる先生から、「飛行機を飛ばし、上空から写真を撮れば地図ができる」 という言葉にショックを受け、その先生に師事することになったそうです。 研究室に入ったところ、今度は飛行機ではなくて、何と宇宙衛星から写真を撮る技術がアメリカから 入ってきていました。その時に見たのが広島の衛星写真。
強烈なカルチャーショック、感動を覚えた菅先生は、それよりこの研究に入っていったわけです。
菅先生はゼミ生に「技術者としてのロマンを持ってほしい。そしてまずは感動するところから始めてほしい」と自らの経験を振り返り語られます。すべては感動から始まり、新鮮な感覚で自分自身で情報を集めるという気持ちを持つことが、この研究室にとって不可欠なことだと取材を通じ感じた次第です。

「ランドサット」って何?
国際的利用目的ランドサット、この言葉は"Land Observation Satellite"つまり土地(地球) を観測する衛星という単語から出来ています。 もともと地球観測衛星「ランドサット」は、アメリカが国際的利用目的で開発したものでしたが、 1972年、国連決議を経て世界でオープン化、しかも民間にまでその情報は開示されるようになりました。 いわゆる「オープン・ザ・スカイポリシー」の始まりで、 宇宙からのデータを平和利用のために使えるようになった年でもありました。
この宇宙から送られてくるデータが日本に初めて入ってきたのは1975年ごろ。 当時、菅先生は大学院生で、その時、初めて衛星から撮られた広島の写真を観た時の強烈な感動が 今も脈々と生き続け、研究は続いています。