学部長メッセージ

時代の流れに先んじる形で誕生した「環境学部」

広島工業大学に全国の大学に先駆けて環境学部が創設されたのは、1993年(平成5年)です。この年には、わが国の環境行政・環境施策にも大きな変化がありました。それは、同年9月の「環境基本法」の制定です。

環境基本法は、それまでの「公害対策基本法(1967年制定)」と「自然環境保全法(1972年制定)」を全面的に見直し、日本という国の「環境」に関わる政策・施策の基本的な方向性を示すことを主な内容とした法律です。水俣病などの大変不幸な公害問題を経験したわが国ですが、その後の「酸性雨」や「オゾン層の破壊」、そして「地球規模の温暖化」などの新たな問題に直面するに至って、公害対策基本法ではそれらに対応することが出来ない状況になっていました(注1)。「環境基本法」は、国として環境に関わるこれらの全ての課題に取り組めるようにと制定された法律なのです。

その環境基本法に先んじて、環境学部を創設したことは、本学の先進性を示唆するものであり、大学としての進取の気概を表したものと言えます。

(注1)公害対策基本法では、「公害」を「大気汚染」、「水質汚濁」、「土壌汚染」、「騒音」、「振動」、「地盤沈下」および「悪臭」に関わる被害(典型7公害と呼ばれます)と定義しており、新たな環境問題に積極的に取り組む法的根拠としては不十分だったからです。

環境学部長 今岡 務

「地球科学」から「建築技術」まで、多様な分野を学ぶ

「環境」および複雑化した「環境問題」を理解し、取り組むためには、幅広い知識が要求されます。環境学部では、それらを身に着けるために「地球科学」から「建築技術」まで、多様なメニュー(専門教育分野)を用意しています。また、環境に関わる各種の課題を取り扱うためには、「観察する目」「確認するための手と足」そして「思考・デザインする頭」が必要になってきます。本学部では、それらを養うための多くの技術的な授業科目が配置されています。

公害対策基本法では「公害」という用語が定義されていますが、環境基本法では「環境」という用語の定義は行われていません。これは、「環境が包括的な概念であって、また、環境施策の範囲もその社会的ニーズ、国民的認識の変化に伴い変遷していく」という法の基本的な考え(注2)に基づいたものです。したがって、環境学の領域も変化していく可能性があります。法そのものも、昨年の東日本大震災での原発災害による放射能汚染の現実化によって、変わろうとしています。

(注2)中央公害対策審議会・自然環境保全審議会「環境保全の基本的法制のあり方について」答申(平成4年9月)

研究に取り組むことで「PDCAサイクル」と「倫理観」を習得

本学部の教育では、基本的なコンセプトとして、「社会」「環境」「倫理」を掲げています。また、個人的には、計画・設計し(Plan)、実行し(Do)、その結果を点検し(Check)、行動する(Action)という「PDCAサイクル」を自ら実行できる人材・技術者に育ってほしいと考えています。

環境に関わる分野では、このPDCAサイクルに関しても、一層の「倫理」観が求められます。環境にとって何が最適なのかを見出すには、短絡的な効率性のみで判断するのではなく、長い時間軸と幅広い視野に立った倫理観が欠かせません。研究対象が人間環境である時、社会環境である時はもちろん、地球規模の環境問題を考えるにあたっても、この倫理観に基づく「想像力」と「他を思いやる心」という、極めて人間的な発想・思考が必要です。

大学では多くのことを経験し、学ぶことで、知識や技術とともに「倫理観」・「価値観」そして「人間力」を培ってほしいと思います。