学部長メッセージ

環境学部長 内藤 望

環境問題には、様々な角度からの多面的視点が不可欠。

広島工業大学が国内で初めて「環境学部」を開設したのは1993年。まだ「環境学」という言葉が認知されていない頃でした。なぜ、その頃に開設したかというと、生産力・経済力を優先したばかりに環境汚染・自然破壊を引き起こした日本社会において、「環境」は重要になるとの思いが根底にあったからです。

21世紀を迎え、環境問題はさらに深刻の度を増しています。「地球温暖化」はその象徴とも言える存在で、問題が指摘されて既に長い年月を経ていながら、いまだに各国間で意見が食い違っています。こうした状況を見るたびに、環境問題とは、科学技術の発展だけで全て解消できるような短絡的な事象ではないことを痛感します。一つの方角だけでなく、さまざまな領域からの視点で本質をとらえる姿勢が、環境問題の解決に不可欠なのです。本学では、そのような視野を広げる場を提供しています。

そのように痛感するからこそ、本学部では「自然環境系、社会環境系および人間環境系の各分野を融合した新しい概念の上に立って、環境問題を総合的視野でとらえられる人材」の育成を目的としているのです。多面的発想のできる人材が社会に増えることで、私たちは環境と調和した社会を築けるようになるのではないでしょうか。

身近な環境から、グローバルな現象まで幅広く網羅。

環境学部には「建築デザイン学科」と「地球環境学科」の2学科を設置しています。

建築デザイン学科では、インテリア・木工、デジタルデザインを柱に、身近な住環境について学びます。住居を対象とするだけではなく、住まいと環境の調和や、地域コミュニティー、安全性や利便性に関する考察、建物の価値を維持する管理手法など、バラエティーに富んでいます。

一方、地球環境学科では、気象や自然災害などの地球科学と、生態系・生物学、そして地球規模の情報取得や活用方法を考えるリモートセンシングを学びます。環境変化の影響は、ミクロな生物や希少な植物にこそ顕著に表れます。また地球規模の変化を見るため、人工衛星の活用は不可欠です。つまり環境問題を的確に捉えるには、生物・地球科学・リモートセンシングの3分野の連携が重要なのです。これら3分野を1学科で網羅し、学べる大学は、全国でもほとんど例がありません。

「住まい」という身近な環境から「地球」というグローバルな問題まで。環境を幅広く学べる本学部には「ここにしかない、ユニークな学問や研究を学べる」と、文理の区別なく日本各地から学生が集まっています。

人間の生き方そのものが問われている。

卒業生の多くは建設業や環境コンサルタント業に就職しています。都市計画においてもインフラ整備においても、「環境」の領域に詳しい専門家の存在は、ますます重要となります。
これらの業界以外でも「環境」を学んだ経験は活かせます。私自身が期待しているのは、教育分野です。数は多くないですが、本学部の卒業生が数人、教師として高校などの教壇に立っています。環境問題は、専門家だけで考えるものではありません。社会を構成する全ての人間が意識を高めることこそ、問題を解決する最善の道なのです。それを考えれば、教育現場で、十代の若者たちに環境問題を論理的に語れる人材がいることは、極めて大事だと思います。

私のかつての恩師は「環境問題は、突き詰めると人間の生き方の問題である」と言っていました。私もその通りだと思います。便利さばかりを欲張ってきた人間の欲望が、地球全体の生態系を脅かしています。そのことに気づいた今、社会はどうあるべきか。私たちはどう生きるべきか。まさに生き方の価値観が問われているのです。
その問いに正面から向き合って行動できる人材を、一人でも多く育成したいと思います。

Think globally, Act locally.

「グローバルに考え、ローカルに行動せよ」。
環境問題こそ、まさにグローバルな問題であり、グローバル(地球規模)に考える思考が不可欠です。一方で、行動面については「グローバルに行動せよ」と言われてもピンときませんよね。グローバルな行動をすぐに起こせる人など、ほとんどいません。どんな行動であれ、たいていは自分の身近なところからスタートする「ローカル」なものです。それが多くの人に波及し、あるいは共感を生み、やがて多くの人が同じ方角に向かって行動するようになると、「グローバルな行動」になっていくのです。つまり「ローカル」の集合体が「グローバル」を生み出す、とも言えます。
「自分1人の行動なんてたかがしれている」と投げ出すのではなく、「自分の行動が周囲を変えるかもしれない」と考えれば、見える景色も変わってくると思います。