工学系研究科長メッセージ

工学系研究科長 永田 武

わずか2年の「投資」で、大きなスキルと感動が得られる。

学校を卒業し、社会人として働くのは約40年でしょう。そのうちのわずか2年、率にするとほんの5%を、大学院で活動する期間にあてませんか。知の探求に赴くことで得られる経験、そして感動の大きさを考えると、決してリターンの低い投資ではないと思います。

大学院でどんな経験・視点が得られるのか?その一つが「新規性」を生み出す力です。今までになかったテーマを求めて、あるいは研究の過程でぶつかった壁を乗り越える手段を探索するため、先達たちの残した研究成果の論文や文献を読み、国内外の研究者が歩んできた道について洞察する時間が格段に増えます。それにより、新たな切り口などを見出せるようになるのです。

次に挙げられるのが「創造性」。研究は、常にスムーズに進むものではなく、むしろいくつもの課題が立ちふさがるものです。それらを解決しようと朝から晩まで考えている...そんな時、例えば朝の起き抜けや夜に布団をかぶったほんの一瞬、ふとキッカケがひらめくことがあるんです。この「ひらめき」体験は、実に楽しいですよ。まさに自分の中の「創造性」が開眼する瞬間、という気がします。

新規性・創造性・実用性、そしてプレゼンテーション能力。

ひらめきによって得られたアイデアに従い、研究を進める。すると新たな次元が広がってくる。それが確かなものかどうか、評価・検証を繰り返す。いわゆるPDCAサイクルを実行することで、「ひらめき」が「成果」として定着します。こうした一連の活動の中で、「実用性」とは何か、理解できるようになるのです。

「新規性」「創造性」「実用性」は、研究のためのポイントでもあるとともに、大学院を卒業した後、社会で活躍するためにも必要な視点。2年間でこれらを修得できるわけです。加えて、研究成果を他者に伝えるためには「プレゼンテーション能力」も重要です。本研究科では、プレゼンテーションの指導にも力を入れています。

問題の本質を見逃さず、独自の手法によって解決することにより、社会に対して新たな価値を提示できる技術者は、様々な場所で求められるでしょう。

地元の広島には、ユニークな技術を武器にグローバル市場へ打って出る会社もたくさんあります。こうした地元企業との連携を進めていきたいですね。さらに、本研究科が蓄積するシーズ(今後の研究に役立つ可能性のある技術や研究)を積極的に発信し、共同研究・開発をすることは、学生にとっても最高の学びとなるはずです。

「武者修行」しやすい環境を利用し、「得意ワザ」を手に入れてほしい。

いつも学生に言っているのは「『得意ワザ』を手に入れろ」ということです。「これについては彼に聞けばいい」と周りに認められる、自分ならではの専門分野をもて、と。

社会に出て仕事をする際、得意ワザをもっていると、仕事の質が格段に高まります。質の高い成果を出していると、仕事自体が楽しくなります。そうすると、「もう一つ得意ワザを身につけよう」と前向きになり、成長が早まるんです。

得意ワザを手に入れるためには「武者修行」が必要でしょう。そのためには、国内外の学会に出向き、研究発表を行うのが一番。広島工業大学では、学会出席時の費用を一部助成しています。それだけ「武者修行」の機会に恵まれているわけです。

また私は、本学大学院で学ぶ社会人の数を増やしたい、とも考えています。すでに「得意ワザ」をもっている社会人が、その技に磨きをかけるため、あるいは新たな技を手に入れるため学びに来るわけです。そうした人々との触れ合いから得られる刺激も大きいでしょう。これも良い「修行」になると思います。

工学系研究科の役目は、社会の発展に貢献できる研究成果を提供することです。常に実用化を意識しながら、研究を進めたいですね。

I、T、πの精神で技術者生活を送れ

「I」の形は縦に一直線。その形どおり「自分の専門を持ち、徹底的に深める」ということです。「T」は「I」に横棒が加わります。つまり「専門を一つ極めたら、次に横にも広がっていく」ということ。最後の「π」は、「T」にもう一つ縦棒が加わった形をしています。すなわち「横の広がりの中で、もう一つの専門性をもつ」ということ。それが研究者・技術者として、あるべき姿なのです。一つの分野に安住せず、常にチャレンジしていきたいと思います。