工学系研究科長メッセージ

工学系研究科長 小黒 剛成

「正解」を自分で見つけ出す力を養う。

大学の学部生と大学院とでは、何が違うのか。最も大きな違いは「正解を自分の力で見つけ出さなければならない」点だと思います。学部生の場合、教科書や先行論文などをあたれば、たいてい答えが見つかります。4年生で取り組む卒業研究のテーマも、ゼミの先生のアドバイスを受けながら決定するのが一般的です。
しかし大学院の場合、研究テーマは自分で設定しなければなりません。関連論文を参考にすることはあっても、そこに求める答えはありません。過去のものとは違った発想や切り口で進め、過去になかった結論を導き出す。そうした「新規性」が、大学院の研究には求められるのです。

「正解」の発見は容易ではなく、いろんな壁にぶつかります。それらを乗り越えるには「これは違う」「この方法ではない」と壁に直面する度に新たなルート・手法を試す「創造性」が欠かせません。
「新規性」と「創造性」こそ、大学院で得られる最大の財産ではないでしょうか。大学院に進むことで、修士なら丸々2年、博士なら5年、研究に没頭する時間が生まれます。学びを深化させ、また発想の多様性を育てることのできるこの期間は、貴重な体験に溢れたものとなるはずです。

視野を広げ、思考の幅を広げるための環境整備。

五里霧中で正しい道を見極める原動力となるのは、自分自身が蓄えてきた知識やスキルしかありません。より多彩な知識やスキルを持ち、思考の幅を広げておけば、解決策に到達しやすくなります。思考の多様性に磨きをかけるため、いくつかの制度を整えたいと思っています。例えば「先行履修」です。

先行履修とは、本学の学部生限定の話しになりますが、大学院の科目単位を学部生の段階で取得すること。現在も、大学院進学が決まった4年生後期から先行履修が可能ですが、それでは取得できる単位が限られます。2019年度から大学院の入試時期が早まることをうまく利用し、前期から取得できる体制を整えていきたいですね。早期の先行履修が可能になれば、研究に費やせる時間が増える。学生のモチベーションも向上するでしょう。

専攻外の科目も受講しやすくしたいと考えています。一例を挙げると、環境学専攻の学生がより詳細な建築構造の知識を身につけたいと思えば、建築工学専攻の科目も選択できるようにするとか。異なる分野を学べば、それだけ視野は広がります。また、分野は異なるものの、抱える課題は同じというケースもあります。お互いの知識を共有することで、課題解決の新たな道が見えてくるかもしません。

長期的視野で、地域のものづくりを支える。

思考の多様性を育てるには、学外への「武者修行」も大事。その一つが学会参加です。大学院に進むと、学会発表の機会が増えます。本学では学会出席時の費用を一部助成し、学会に参加しやすくしています。他の大学や研究機関で活動する研究者と意見を交わすことで「そういった見方もあるのか」という気づきが得られます。

地域の産業界との協働もあります。広島工業大学は、産学官の共同研究や人的交流を推進する「HITスクエア(広島工業大学地域連携技術研究協力会)」を発足させました。地元企業の技術的な困りごとを解決するため協力する体制が整っているわけです。蓄積してきた技術や研究を地域に発信することで、学生の意欲も大いに刺激されるはずです。

ただし大学院が重視すべきは、10年先、50年先を見据えた基礎研究である、という点を疎かにしてはいけないと思います。利益創出を目的とする企業に、長期的視野を持ち得る余裕はない、というのが今日の実情でしょう。だからこそ、地域のものづくりを長年支えてきた本学の大学院が取り組むべきなのです。

様々な試みを通じて学生の研究意欲に弾みをつけ、地域に貢献できる人材を輩出していきたいと思います。

百聞は一見にしかず。

今はインターネットさえあれば、あらゆる情報が入手できる時代です。でもやはり、自分の手を動かしてものをつくりあげた実体験から得られる知識には到底かないません。もちろん失敗もするでしょうが、むしろ失敗を通じて得たもののほうが、次につながるケースが多い。学生には、失敗を恐れず、学外へ飛び出していろいろな経験を積んで欲しいと思います。