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情報工学科

秦 淑彦

教員紹介

秦 淑彦HATA Toshihiko

情報学部 情報工学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○マルチメディア
○画像情報処理
○ユビキタスコンピューティング
○ユーザインタフェース
【担当科目】
デジタル通信 、 画像情報処理 、 情報セキュリティ 、 セキュリティ 、 情報学入門 、 画像情報処理 、 情報処理入門 、 コンピュータ入門
【研究テーマ】
1.ビジュアルセンサネットワークシステム
2.人動態情報を利用したスマートビルシステム
【ひとこと】

もの(ハードウェア/ソフトウェア)を作ること、コンセプトを創ることの面白さを早く体験してください。また、スポーツや音楽など勉強以外に打ち込めることを見つけてください。

研究紹介

秦 淑彦HATA Toshihiko

情報学部 情報工学科 教授

人の流れを、歩行者の位置を、スポーツ選手の動きを、
低コストかつ高精度な仕組みで捕捉する
PROLOGUE

廊下を歩くと天井のライトが自動点灯したり、人間が近づくと自動でゲートが開いたりエスカレータが動き出したり、といったことがありますよね。これは壁や天井などに組み込まれたセンサが人間の動きを感知し、照明やエスカレータなどの機器を動かすように制御されているからです。このように、人間の行動や環境の様子をモニタリングする手法について研究を続けているのが秦先生。先生は、安価で設置・運用が容易なシステムを開発し、必要な情報を収集・処理しようと工夫しています。

デプスカメラやLiDARで、プライバシーを守りながら人流を高精度に計測

私が取り組むテーマの一つに「人流計測」があります。これは対象とする場所の歩行者数や歩く方向などを計測するもので、大勢の人が利用する施設の空間利用やセキュリティーを考える上での重要な情報となります。
防犯カメラで記録しても良いのですが、やたらと使うとプライバシーの問題があります。赤外線やサーモパイルアレイといった人感センサも頻繁に使われますが、精度がそれほど高くありません。昨今ではデプスカメラと呼ばれる、奥行き(3次元距離)の取得できるカメラや、レーザを使って対象物までの距離を測定するLiDAR(Light Detection And Ranging)が、比較的安価で入手できるようになってきました。私はこれらのデバイスを利用し計測を行っています。
出入口や廊下は通行方向がある程度決まっているので、2次元距離が取得できれば十分です。そこで2次元LiDARを天井に取り付け、レーザを歩行者に斜めに照射して、人流の方向と速度を計測します。一方、交差点などでは人流が複雑なのでデプスカメラを使いますが、取得するのは3次元「画像」ではなく「点の集まり」です。この擬似的な3次元画像を処理する際に、できるだけ計算負荷が少なくなるよう工夫します。いずれも高精度のデバイスを用いながら、使い方の工夫により、小さなマイコン基板だけで計測可能になります。

ゼミ室の廊下天井に設置した
LiDARから斜めにレーザを照射し、
歩行者の流れを測定するシステム

屋内を動く歩行者の位置を特定するため、UWBとSLAMを連携させる

歩行者が自分の位置を特定する「歩行者測位」にも取り組んでいます。屋外であればGPS(Global Positioning System)が使えますが、施設内や地下街では別のシステムが必要になります。そこでUWB(Ultra Wide Band)を利用します。
UWBは広い周波数帯域を使用する無線通信で、最近は主要スマホにも搭載されています。高精度で位置を測定できる技術ですが、そのためには屋内に多くの基地局を設置しなければなりません。この点をSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)という技術と組み合わせることにより、この問題を解決しようと考えました。SLAMとは、移動しながら特徴的な目印を発見することで自己位置を推定する、お掃除ロボットなどに使われている技術で、スマートグラスへの搭載も始まっています。精度は高いのですが、SLAMでは常に計測を開始した地点が原点であり、実際の環境と対応しません。
そこで、UWBで基準点を測定し、基準点に対応するSLAMの測定点を見つけて、SLAMの測定データを地図に置き換えます。これにより、設置するUWB基地局の数は最小限で済み、基地局のないところはSLAMで計測する、という連携プレーによる歩行者測位を実現します。実際に学部棟の廊下で実験し、位置把握ができることが確認できました。まだまだ工夫は必要ですが、可能性は大きいと感じます。

UWBを使うと、
屋内でも歩行者の位置が捕捉できます

スポーツセンシングやスマートグラス応用など、多彩なテーマに取り組む

「スポーツセンシング」も進めています。スポーツにおいて、選手の移動軌跡は、戦術を決定したり選手の能力向上を図るのに重要な情報となります。
そこでLiDARとPTZカメラを使います。PTZカメラは、遠隔操作で首振り(パン・チルト・ズーム)が制御できます。LiDARの測位情報に基づいてPTZカメラの首振りを制御し、両デバイスの組み合わせで選手の移動軌跡を捕捉するのです。車の自動運転用のLiDARは数百m先の物体も計測できるので、サッカー等の競技にも応用できると思います。
スマートグラスの応用に関する研究も進めたいと思っています。メタバースの本格化もあり、スマートグラスに寄せられる期待は大きいのですが、スマートグラスの情報に熱中するあまり、周囲への注意が疎かになるという懸念があります。そこで使用者の周囲をモニタリングし、使用者にフィードバックする仕組みが必要になるとにらんでいます。
今は実験的に使用しているデバイスも、数年後はスマートフォンやスマートグラスに搭載され、当たり前のようになっているでしょう。学生には、技術的に実現できるというだけでなく、将来普及するであろうデバイスを想定し、皆に使ってもらえる技術を開発するという視点で、研究に取り組んでほしいと思っています。

スマートグラスを見ながら、
周辺環境への注意を促す研究も行っています
スマートグラス、SLAM、デプスカメラなど
さまざまなデバイスを活用