長坂 康史

ながさか やすし

長坂 康史 Yasushi Nagasaka

情報学部 情報工学科 教授
出身:山梨県甲府市
nagasaka@cc.it-hiroshima.ac.jp
研究室・ゼミのホームページ

送ったメールが届かない!ネットワークの『交通渋滞』を解消するには?

今やコミュニケーションツールとして欠かせなくなったメール。みなさんも、家族や友人と度々メールを交換しているはずです。このように気軽にメールでメッセージや画像データが送れるのも、動画投稿サイトにアクセスして好みの動画を探せるのも、情報のやり取りが簡単にできるネットワークが整備されたから。ところが、利用する人が増えすぎてしまい、ネットワーク上で情報が『渋滞』してしまう...ということが起こりつつあるのです。長坂先生はその問題を解決しようと奮闘しています。

ユビキタス社会には快適なネットワークが欠かせない

「いつでも、どこでも、誰もがネットワークにつながることで、様々な情報やサービスを受けることができる」。そんなユビキタス社会の到来が間近に迫っています。
ユビキタス社会を支える根本はネットワークです。ネットワーク上を情報が円滑に流れることで、この「いつでも、どこでも、誰でも」が実現します。
しかし今のまま情報が増え続ければ、ネットワークはどんどん混雑し、情報の大渋滞が生じるでしょう。道路が細いとたくさんの車は走れませんよね。また広い道路であっても、ルールを守らない車が多いと、交差点で立ち往生してしまうでしょう。それと同じことがネットワーク上でも起こりかねません。
そういった問題を防ぐには、ネットワークに新しいシステムを導入して、情報が渋滞しないようにしなければなりません。私たちの研究室では、この新しいシステムの開発を行っています。

「情報のやり取り」が、どこでもできるようになる?

ユビキタス社会を実現するためには、無線通信ネットワークが必須です。通常の無線通信の場合、情報は「端末」から情報をまとめる「基地局」に送られ、そこから他の「端末」に届けられます。つまり、「端末」と「端末」を「基地局」が中継しているわけです。一般的に、たとえ端末同士が近くにあっても、基地局がないと情報のやり取りはできません。
これを解決するのがアドホックネットワーク。この技術の大きな特徴は、それぞれの端末が情報の受発信をする以外に、「中継点」にもなってくれる、という点です。基地局がない場所などでも、端末自らが他の端末からの情報を中継するので、さまざまな情報を効率よくやり取りできるようになるわけです。
ただし問題があります。基地局と違って、あなたの端末はあなたが自由に電源をオフにできますよね? もしその時、あなたの端末に中継してもらおうと、誰かの端末から情報が送られている途中だったら? 情報は行き場を失ってしまいます。
そうした場合の代わりのルートをどう準備しておくか? また、「中継点」となる端末への負荷をどう小さくするか? こんな課題を克服するシステムの開発が、私の研究テーマの一つです。

家電ネットワークや非接触型ICカードにも取り組む

他にも「家電のネットワーク」や「非接触型ICカード」などといったテーマを抱えています。いずれもユビキタス社会の実現には欠かせないものです。
ゼミでは学生と話し合い、本人の興味を引き出す形でテーマを決めます。ポイントは指導しますが、後は「自主的にやってみなさい」という感じ。
そして1週間に1回は、進捗状況を、みんなの前で発表してもらいます。これによって、ゼミの学生たちは「説明すること」「聞くこと」「質問すること」を学びます。卒業生の主な就職先は、システム構築を手掛ける情報業界やネットワーク関連企業ですが、どの業界に行った卒業生も「ゼミでの発表会が社会に出てから役に立った」と言っています。
ちなみに、私の本来の専門分野は、素粒子物理学です。素粒子物理学の実験では、膨大なデータ処理が必要となります。それを行っているうちに、ネットワークシステムについても研究するようになりました。
物理学の分野では、CERN(WWW開発で知られる欧州の合同研究所)のLHC計画(理論上存在が認められている基本粒子ヒッグス粒子を実際に見つけようというもの)に参加。周長27kmという巨大な実験リングから得られる膨大なデータの収集・処理を行っています。

ゼミ取材 こぼれ話
マルチパワー「二つの専門家」
長坂先生の専門は、実は素粒子物理学。この分野では膨大なデータ解析が必要なため、その情報処理を手掛けるうちに、二つの専門家になってしまったそうです。 また物理学の分野では世界的に権威のあるCERN(1954年に設立された欧州の合同研究所)のLHC計画にも参画されています。LHC計画とは、物質を構成する基本粒子の中で、理論上はその存在が認められているものの、いまだ未発見のヒッグス粒子を見つけようというビッグプロジェクト。現在、先生はこのプロジェクトの情報収集システム部門で、各国の研究者と協力しながらシステムの開発を進めておられます。 また取材当日、「明日から東京なんですよ」と長坂先生。「学会か何かですか」と尋ねると、東京ビックサイトで行われる「IC CARD WORLD」にてFeliCaで構築する新たな認証基盤というテーマで講演をするとのこと。 趣味は合唱、他、宮沢賢治がお好きだそうで、その読み解き、そして身体で表現することなど、表現活動もされています。 長坂先生のマルチパワーに驚かされた取材でした。