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情報工学科

大谷 幸三

教員紹介

大谷 幸三OHTANI Kozo

情報学部 情報工学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○センサ工学
【担当科目】
アルゴリズム基礎 、 プログラミング基礎 、 センシング 、 HIT基礎実践A/B/C/D 、 HIT応用実践A/B/C/D 、 専門ゼミナールA/B
【研究テーマ】
1.日常生活における非侵襲オンライン尿糖センシングシステムの開発
2.半透明物体の光学解析に基づく高精度3次元計測法の開発
3.物体の3次元形状と質感を計測・表示可能な光学的検査装置の開発
4.水位センサネットワークによる水害情報配信システムの開発
【ひとこと】

4年間はあっという間です。なりたい自分を考えながら、常に納得がいくよう今を充実させていく大学生活を積み重ねてください。未来への可能性はどんどん広がり、多くのチャンスが訪れると思います。

研究紹介

大谷 幸三OHTANI Kozo

情報学部 情報工学科 教授

スマートセンシング技術で日々の健康状態を
キャッチし、生活習慣病を予防。
PROLOGUE

スマートウォッチやスマホのアプリを使って、体温や脈拍、血圧といった健康状態を示す基礎情報を測定できるようになってきました。従来なら体温計や血圧計などの機器を用いないと測れなかったこれらのバイタル(生体)情報が取得できるようになったのは、体の状態を測定するセンサがどんどん小型化したり、センサが得た情報を高速に処理するソフトウェアが発達したおかげです。このような「スマートセンシング」技術のさらなる高度化、多機能化について研究を進めているのが大谷先生です。

わざわざ病院に行かなくても、自宅トイレで尿糖が測れる。

生活習慣病にもいろいろありますが、糖尿病(正確には「2型糖尿病」)はその代表でしょう。主な原因は運動不足や食べ過ぎとされ、放っておけば失明・腎疾患・心筋梗塞など重い合併症を併発します。糖尿病が疑われる患者数は国内で2000万人とも言われ、治療には運動や食事など、日々の生活習慣の改善が欠かせません。
糖尿病を判定するには、検尿して検査機関に持ちこむしかありません。しかし、これはいかにも大変です。そこでスマートセンシングを応用し、もっと簡易に尿糖を測定できないかと考えました。それが「光尿糖センシング」です。
トイレの便座内にレーザと2台の光センサを配置します。次に排尿後の液にレーザを照射します。そして1台の光センサで液表面からの反射光を、もう1台で液内を通過して底面から反射する光を観測するのです。
2台で別々の光を測定することで、光の入ってくる角度と位置がわかるため、光の屈折率が解析できるようになります。この屈折率から、液内の糖分濃度が推定できるのです。わざわざ検尿して病院に行かなくても、家にいながら尿糖を測ることが可能、というわけです。

光尿糖センシングシステム。この装置を用いて、システムを期待通り機能させるにはどんな課題があるか、研究しています。

体を傷つけない「非侵襲型」システム。だから毎日気軽に続けられる。

糖分は光を吸収する性質を持っていますが、私たちのシステムでは液内を通過した光がどれくらい減衰したか測定できます。光の屈折率と光の減衰率を同時に観測・解析することで、尿糖の推定精度がさらに高まります。
実験してみると、システムの基本原理に問題はなく、尿糖濃度を三段階で示すくらいのことはできそうです。しかし実用を考えると、さらに精度を高めなければなりません。
最も高い壁が、液面の揺れです。液面が揺れると光の反射に影響し、正確な測定が難しくなります。センサにハイスピードカメラを用いれば揺れの止まった状態で測定できますが、そうするとコストが高くなってしまいます。そのため、カメラは粗い画像しか撮れないローコストのものでいいので、スピードを優先してデータを取得。それをAIを活用したソフトウエア側の処理で正しいデータに補正するなど、ハードウエア・ソフトウエア両面からの工夫が必要になります。
光尿糖センシングシステムの最大の特徴は、体を傷つける必要がないこと。採血だと体を傷つけますが、このシステムは家にいながら、全く意識せずに尿糖が測定できるので、利用者には肉体的負担感が全くありません。「非侵襲計測」なので、気軽に行えるのです。利用者自身が健康状態をデータで見ることができるので、健康管理意識の向上も期待できます。

防災、施設維持管理…様々な分野でスマートセンシングを提供。

他にも私のゼミでは、スマートセンシングを様々な分野で活用しています。その一つが「河川水位測定センサ」です。これは河川に設置し、大雨などで水位が上がるとセンサが感知、警告を発するのです。その段階で避難しておけば、万一、河川が氾濫しても、最悪の事態を避けられます。
また本学の建築デザイン学科と共同で、ロボットが建築物内を自律的に移動できる環境の構築も進めています。これは建物自体にセンサをあらかじめ設置しておき、それをロボットが利用するという仕組み。ロボット自体に高度なセンサや高機能処理を行うコンピューターを搭載しておく必要がないので、安価なロボットでも室内を自在に動けるようになるでしょう。
IoTの時代を迎える中、対象物を測り、情報を数値化して処理・共有するというセンシング技術の重要度は高まっています。スマートセンシングのさらなる高度化を進め、健やかな暮らしや産業の発展に貢献していきたいと思います。

左から液面にレーザを照射。
右のセンサでその反射光を測定。
河川水位測定センサを水辺に持ち込み、
動作を確認。