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情報コミュニケーション学科

張 暁華

教員紹介

張 暁華ZHANG Xiaohua

情報学部 情報コミュニケーション学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○画像処理
○コンピュータグラフィックス
○コンピュータビジョン
【担当科目】
プログラミングI/II 、 オブジェクト指向言語 、 情報システムモデリング 、 情報システム実践
【研究テーマ】
1.デジタルコンテンツ制作に関する研究
2.実写画像から手書き風画像の生成に関する研究
3.3Dモデリング及びレンダリングに関する研究
【ひとこと】

温故知新

研究紹介

張 暁華ZHANG Xiaohua

情報学部 情報コミュニケーション学科 教授

手書き風に。油絵風に。画像データを、
思いのままにコントロール!
PROLOGUE

スマートフォンのカメラで写真を撮る。仲間と一緒にデジカメで撮る。最近のカメラは、撮っただけでは終わりません。全体をぼんやりさせてソフトフォーカス風のイメージ写真にしたり、背景と人を区別して、人だけを明るく浮き上がらせたり、思いのままの加工が可能。日々画像処理の技術は進化しています。この「画像処理」をテーマに掲げ、より良い方法はないか、もっと新しい、もっと手軽な方法はないかと日々研究を重ねているのが張先生。画像処理の可能性は、まだまだ無限大です。

文化財の色・模様を、画像処理でリアルに再現する

私は以前、「文化財のCGを作成する」という国のプロジェクトに携わっていました。文化財を見たいという人は大勢います。でも現物は貴重なので、どこでも持って行って開示するわけにはいきません。しかしCGなら、ネット上に公開しておけば、誰でも手軽に鑑賞できます。
しかし、思った以上に大変でした。文化財をカメラで撮影すると、写真には余計な情報まで写り込みます。フラッシュによる光の反射は最たるものです。光の反射した部分は、本来の文化財とは違った、白に近い色になってしまいます。これでは「文化財の再現」とは呼べません。そこで、画像データからフラッシュの写り込みを取り除き、文化財そのものの色を再現することに力を注ぎました。見た目は「ほとんど白」の中から、僅かに残る色や模様の情報を取り出し、再構成するのですから、大変でしたね。さまざまな技術を試し、何とか再現できたときの嬉しさは忘れられません。
この経験が、私の研究者としての出発点になりました。

元画像
彫刻風に変換
潜在的な流れ模様の検出、
ストリーム的な画像を作成

より便利に、よりリアルな画像処理を行うには?

今は学生と一緒に、もっと便利な画像処理はないか、もっと新しい画像処理はないかと研究しています。
画像処理とは簡単に言うと、画像の持つ色や領域の情報に、いくつかの計算式を適用して変化させることです。この計算式をどう組み立て、どんな順番で適用するかによって処理後の画像がどうなるかは変わってきます。つまり、計算式自体や、それを適用する順番に工夫を加えると、より早く、リアルな画像処理ができるようになるわけです。
私は画像処理のやり方に『勾配空間』という視点を加えました。平面な円の図形に白黒のグラデーションを配置すると、円が立体の球に見えますよね。『勾配空間』とは、例えばそういうこと。画像処理に『勾配空間』を付加すると、画像をより立体的に、すなわちリアルにできるのです。
とは言え、いろんな計算式を考える必要があり、実現は簡単ではありません。学生たちは苦労しながら、目的とする処理に近づいています。

ゴッホの名画「糸杉と星の見える道」、
流れはゴッホの特徴。
ちょっとノイズっぽさがあります
ノイズ削減だけではなく、
流れを保ちながら強調

画像が油絵風にも、水彩画風にも生まれ変わる

いくつか成果も上がっています。
一つは、テクスチャ合成です。例えばレンガのような模様をイメージしてください。レンガ模様は一定なので、ごく小さな画像を繰り返し使うことで、どれだけでも大きなレンガ模様が作成できます。しかし、今までのやり方では、繰り返し使ったときの「継ぎ目」が目立つケースがありました。ここにある工夫を施し、ほとんど継ぎ目をなくすのに成功したんです。この技術は万華鏡のような複雑な模様にも対応できるので、CG作成時など活用範囲は広いと思います。
もう一つが、画像の手書き風処理。元画像を、油絵風にも水彩画風にも自動で変換できる処理方法を、学生と協力して作りました。従来の方法にあった「全体がぼけてしまう」などの欠点が解消され、自然な油絵・水彩画に見えます。
画像処理技術は、スマートフォンやノートパソコンで一般的になった、指紋認証システムにも活用されています。もともと立体で見づらい指紋の画像を、処理技術によって白黒の鮮明な画像に変換し、それを認識することで本人かどうかを判断するのが、指紋認証システムの仕組みです。活用の幅が広いので、研究によってまだまだ進化する余地が大きいのです。
求める答えを導き出すため、計算式を組み立て、適用法を工夫する。このやり方は、実は検索エンジンを構築する際など他の分野でも応用が利きます。言わば画像処理を通じ、学生たちはエンジニアの基本を学んでいる、と言っていいでしょう。答えに到達するのは大変ですが、意義のある研究だと思いますよ。

小さなテクスチャ
小さなテクスチャから
大きなテクスチャを作成。
しかも、簡単なレイアウトではない、
きちんとつなぎ目を分からないように
最適化を施しています