角川 幸治

かくがわ こうじ

角川 幸治 Koji Kakugawa

生命学部 食品生命科学科 准教授
出身:広島県 (広島県立安古市高等学校卒業)
k.kakugawa.db@it-hiroshima.ac.jp

今までにない画期的な機能を持った食品は、微生物が作る

私のもとには、いろんな企業からの依頼が来ます。例えば「パンの付加価値をもっと上げられないだろうか?」とか。パンの製造には微生物が欠かせません。しかしどの微生物がどういう環境で、どのように働いているのかは科学的に明らかにされていません。ここが分かると、パンの品質を安定させることが期待できます。それを基盤に、微生物以外の分野にも研究を広げれば「健康にいい」などの付加価値を持たせられるかもしれません。
そこで我々は、企業や研究機関と連携し、様々な研究に着手。パンの原料や製造方法を改善することで、「抗酸化能を強化」できることを見いだしました。抗酸化能とは、人間の体内組織を傷つけたり、老化を早めたりといったあまりありがたくない働きをする活性酸素を抑制する機能のこと。食べるとおいしいだけでなく、健康にもいいパンが作られたらいいですよね。
そして2010年、待望の新食品が完成しそうです。ある食品メーカーと私の研究室が協力し、開発にあたったもの。他の研究機関の力は借りていませんので、まさに「広島工業大の全面開発協力による、初の新食品」となるでしょう。どういう商品かというと...ゴメンなさい。まだ発売前なので、これ以上詳しくはお知らせできません。楽しみに待っていて下さい。

食品だけじゃない。環境保全などにも微生物が活躍

微生物の力が発揮されるのは、食品分野だけではありません。これも企業の依頼で研究を進めているのですが、漢方薬などに含まれるサポニンという成分は、廃水処理にも効果を発揮することが知られています。油の混じった廃水の溜まった処理槽に添加すると、油の分解を促進してくれるんです。なぜ、ほんのわずかな量のサポニンを加えただけで、油の処理効率がアップするのかそのメカニズムが分からないんです。そこでこれを明らかにしようと研究中。
他にも、ある浄水装置を使うと、硬度の高い水でもカルシウム分でパイプをつまらせてしまう問題が起こらない、と分かっています。しかし理由がはっきりしない。そこで理由を分析したり、あるいは農作物と微生物の関係を調べたり...。食品分野に限らず、様々な研究に取り組んでいます。

限られた時間で、数万の微生物から求める種を特定する

微生物は何万種とあります。その中で、特定の機能を持たせるのに役立つ微生物は、ホンのわずかです。それをまず特定しないといけません。次にどういう条件で、微生物が最も活発に働くのかを明らかにする。食べ物の場合、人体に害を及ぼしてはいけないので、余計に慎重さが必要。しかも、企業の依頼には常に期限があります。期限が守れないと、商品化はできない。
研究には学生と一緒になって取り組むのですが、彼らにはいつも「責任を持ってやりなさい」と言っています。いい加減にやっていたんじゃ期限に間に合わない、それは多くの人に迷惑をかけるんだよ、と。だから学生たちも真剣。学生のうちから研究の厳しさを身につけておくことは、就職して以降、必ず役立つと思います。
何千何万とある微生物を研究していると、分からない点が次々に出てきます。それが楽しいんですよ。未知のものにチャレンジする、というダイゴ味が実感できますから。

ゼミ取材 こぼれ話
日本酒や醤油など、微生物の力を借りて作る『発酵食品』の分野は、ノウハウ化が難しいんです、と語る角川先生。「ベテランの専門家が、気候や湿度なども考慮して、どの程度発酵させれば良い食品になるか、を決める。まさに職人芸の世界です」。しかし、おいしく、機能性の高い食品をいつでも安定して作るには、ベテランの経験とカンに頼ってもいられません。均質の食品を作るためどういう微生物を、どういうプロセスで使えば良いか、というノウハウ確立の面にも先生 は力を尽くしています。「良い食品を、いつでも確実に作り出す仕組み。それが、特に中小の食品メーカーには不可欠。そういう面でも研究成果を役立てていきたいと思っています」。