広島工業大学 女子学生キャリアデザインセンター

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田渕 久美子さん
脚本家

田渕 久美子さん

一作毎に私は成長する。成長した私が次に何をしようと思うのかはわからない。(2010年12月取材)

興味があったのは人間。だから、今は脚本家も向いていたのかなと思う。

興味があったのは人間。だから、今は脚本家も向いていたのかなと思う。

―大河ドラマ「篤姫」「江~姫たちの戦国」等の脚本家として大活躍されている田渕先生ですが、学生時代から脚本家になりたいという想いはありましたか。

全くないですね。その頃は、先が何も見えなくて、自分が将来何をするのかもわからず、自分自身に厳しい性格でしたので、もうガチガチで、自由がなくて、すごく生きづらくて、ああ死ぬまで後何十年かなと、そんなことを考えているような夢のない学生でした。

小さい頃から文章を書くととてもほめられたのですが、これを仕事にだけはすまいと思っていました。その頃興味があったのは、人間。人間ってどういう時にどういう風に考えるんだろうかというようなことを、朝から晩まで考えていました。

ひょんなきっかけで脚本家になりましたが、考えてみると、脚本家というのは、人間を書いて、しかも、様々な人に動いてもらってひとつのドラマを作る、そうして人間を表現する仕事。だから、今はすごく向いていたんじゃないかと思います。

―「自分が何に向いているかがわからない」と悩んでいる学生がたくさんいるのですが。

わからないものだと思いますよ。世の中は進化しているので、今までの職業に合わせて、自分は何をやっていこうかという発想をすると、みつけられないと思います。ですから、自分は何が好きか、どんなことに関わりたいかという漠然としたころからスタートした方がいいと思う。そうしないで、「この職業、あの職業、それがみつからない自分はダメだ」と思うのはすごくナンセンスな話。まず、何に興味があるか、何をやってみたいかと、自分との対話をきっちりして欲しい。もしかしたら、これからできる職業もあるかもしれないので、今ある職業だけでは、みなさんにあてはまらないかもしれない。

今は脚本家と称していますが、一作毎に私は成長するので、成長した私が次に何をしようと思うのかはわからない。これまでにも、私はいろんなことをしてきましたし、未だに、将来何をしようかなと考えているくらいですから、みなさんが今、「これで生きていくんだ」なんて決めつけるのは、この21世紀という時代には合わないと思う。それは20世紀的な考え方。

自分の中にスーパーマンを作らない。自分自身と対話して、自分の中にいいものを見つけ出していく。

自分の中にスーパーマンを作らない。自分自身と対話して、自分の中にいいものを見つけ出していく。

―著書の中に、「自分を愛する」「自信をもつ」「自分のあるがままを大切にする」と言う表現が繰り返し出てきます。どうすれば自信がもてるようになるのでしょうか。

自分を認めない人は、他の人の素晴らしいところをあれこれ見て、自分にはないなと考える。更に、別の人のいいところを見ると、これも私にはない、となる。だから、みなさん、いつの間にか自分の中にスーパーマンを作っているんです。それは、ある人の一面をとって、そこに他の人の一面を加えて、作り上げた像なんですね。これになろうとして、人生を生き始めると、すごく自分がつらくなる。まず自分にできないことを知るためにも、自分の中にスーパーマンを作らないことですね。

自分自身と対話して、自分の中のいいものを見つけ出していく。自己肯定というのは、私のモットーです。自分の許せないところまで、肯定するというのは、これは気分がいい。「私はここがだめなんだよね」というところを、「そこがカワイィんだよね」と言えるかどうか。ちょっと恥ずかしいんですが、私がよくやるのは、こうやって(自分の肩を抱きながら)「カワイ~ィ!」って言うんです。こうやると、仕事がすごくはかどります。

自己肯定を続けていると、他人に対する目もすごく優しくなる。つまり、人のことも肯定したくなるんです。「人の気持ちを変えたい」とか、「この人許せない」とか、「もっと何とかしてくれないの、私のこと」とか、そういう想いから解放されて、心がすごくおだやかになって、人との関係がとてもうまくいくようになります。

それに、女性の男性といちばん違うところは直感ですが、その直感がするどくなる。そうすると、頭で考えすぎなくても、自分の行くべき道を、自分の直感が教えてくれる。私は頭で考えたことと直感だと、100%直感を選びます。女性の直感を活かして、そしてそれを男性が助けている企業が、実は今伸びているという話を聞きますし、私たちの仕事も、直感を駆使してモノを創るということが欠かせない。

女に生まれることのおもしろみは、年々わかってくる。だから、先のことを悩まないで。

女に生まれることのおもしろみは、年々わかってくる。だから、先のことを悩まないで。

-仕事をする上で女性であることをどのようにとらえていらっしゃいますか。

私はよく自分の中に、男と女が棲んでいると思います。これは皆さん全部そうだと思いますが。例えば、料理をする時に、家族のことを想いながら「何にしようかな?」と考えて、「あれにしよう!」と決める瞬間までは、私の中の女性性が働いているんですが、実際に料理をする段になると、自分の中の男が働き始める。

仕事をする時も、男性と女性をうまく使い分けている。ドラマの構成を立てる時は、男性性がやっている気がするんですが、セリフを書く段になると、女性性が働く。明らかに違うのが自分でわかります。

―女子学生へのメッセージを。

女に生まれることのおもしろみは、年々わかってくることだと思うので、先のことを悩まないでほしいですね。

人生は、本当に苦しいことやつらいことの方が多いものですが、それを一度覚悟して受け入れてしまえば、それほど苦痛ではなくなります。この言葉を忘れないでいただきたい。それに、毎日10回は、自分をほめてみてください。いいところをほめるのは簡単ですが、自分で好きになれないところもほめてみてください。できるだけ。そうすることによって、自分自身が自分自身に心を開いてくれる。そうすると、初めて自分の行くべき道が見えてくる。

自分の気持ちをブレないようにしている限り、必ず道は開けます。ただ、「何をしたいか」と「どのあたりまで行きたいか」を明確にしないと、なかなかそこには行きつけないと思います。

私は、脚本家である以上、本当に人を感動させるものを書きたいというのが自分の最高点でした。でも自分の身にはハードなことがたくさん起きて、どうしてこんなハードなことが起きるのかなと考えた時、ハタと気がつきました。要するに、人様の気持ちを打てるぐらいの作品を創るために、私自身がそういう体験をして、それを表現するしかないのだと覚悟できたのです。「自分はどういう生き方をしたいか」「どのあたりまで行きたいか」によって、それに応じた苦しみも来ますけど、そこがブレない限り、それは手にできるものだと思いますので、あきらめないでほしいなと思います。

男性は、ぜひ女性の直感を認めて欲しいし、女性は女性でそういうことを支えてくれる男性を大切にしてほしい。男女あってのことなので。「男性たちよ、一度発想を変えて、女性を助ける側に立ってください」と、今日いらしてる若い男性に向けて言いたいですね。



JCDシンポジウム「社会で活躍する女性の育成と支援」
基調講演:田渕久美子氏「輝く女性の生き方」より抜粋

脚本家
田渕 久美子さん
Kumiko Tabuchi

59年島根県生まれ。出版社勤務、塾講師、プロ グラマーなどを経てシナリオスクールへ通い、85年デビュー。主なテレビドラマ作品に『勝利の女神』『ニュースの女』『殴る女』『彼女たちの結婚』『定年 ゴジラ』『女神の恋』など。NHK連続テレビ小説『さくら』では橋田壽賀子賞受賞。映画、舞台、ミュージカル、落語、狂言の脚本も手がけ、08年のNHK 大河ドラマ『篤姫』は空前の大ヒット。篤姫的生き方指南『女の道は一本道』(小学館)も話題に。

2011年放送の、NHK大河ドラマ第50作目にあたる『江~姫たちの戦国~』の執筆も手がける。同タイトルでの原作が上下巻で好評発売中。
(2010年12月インタビュー)

田渕 久美子さん
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