「2011(平成23)年度広島工業大学公開講座」が開催されました。

2011年06月24日

広島市中区袋町の広島市まちづくり市民交流プラザにて、2011(平成23)年度広島工業大学公開講座「21世紀を実感できるあたらしい社会の構築に向けて―都市デザイン工学が果たす役割―」が開催されました。
公開講座は、毎年、高校生を含む一般市民の皆さんに広く開放された講義シリーズで、広島工業大学の教員が、ひとつのテーマに関する最先端の研究やポイントを、わかりやすく噛み砕いて解説する講座です。今年度は工学部都市デザイン工学科の教員が講座を担当、安全で安心な社会の創出を目指して行われているさまざまな研究の一端を紹介しました。中でも6月4日(土)に行われた第3回・第4回講座の模様をお届けします。

会場となった広島市まちづくり市民交流プラザ。

会場となった広島市まちづくり市民交流プラザ。

公開講座は、教育ネットワーク中国主催の「高大連携講座」の一環でもあります。

公開講座は、教育ネットワーク中国主催の「高大連携講座」の一環でもあります。

まず伊藤雅准教授による「人と環境にやさしい街路空間の創出」の講演が行われました。伊藤准教授の専門は都市地域計画・交通計画で、ドイツ留学時にはヨーロッパの都市交通についても学び、日本各地での街づくりへの取り組みもサポートしています。今回は「街路空間デザインの考え方」「交通セル、トランジット・モール、そしてLRT」「広島における未来の街路空間」の3点に分けて話が進められました。
近年都市内の道路(街路)はクルマであふれ、渋滞などによる都市環境への悪影響が懸念されているという課題を提示。従来、道路はクルマをスムーズに流すために設計されていましたが、街中の貴重な空間は本当に有効利用されているのかという問題が見えてきます。例えば、3m幅の道路で1時間あたりに輸送できるのは車だと620人、バスだと約1万人というデータがあり、道路空間の利用効率は乗用車が一番低いことがわかります。この考え方をもとに海外では交通システムが整理され、例えばドイツのニュルンベルクでは、「交通セル」という脱クルマ社会型の新たな道路網が導入され、歩行者専用空間が段階を踏んで拡大されました。その結果、予想された混乱は発生せず、自動車交通量も減り、商業施設も賑わいを取り戻しました。
フランスのストラスブールで実施されたのは、自動車を締め出した公共交通と歩行者だけの「トランジット・モール」。都心を貫通する道路を遮断し、LRTという路面電車を開通させました。その結果、道路景観が劇的に変化し、車道を軌道や歩道にする再配分が行われました。中心市街地への買い物目的の交通移動が33%増加するなどの効果が報告されています。
欧州のさまざまな実例の紹介に続いて、日本の富山でのLRTの導入事例を紹介。そこからさらに「広島における未来の街路空間」というテーマで、広島駅南口の整備案3案が示されました。広島駅南口へ電車をどんなルートで乗り入れするのか、現状の利用状態などが示されました。皆さんの関心も高く、講演後には活発な質疑応答が行われました。

講演を行う伊藤雅准教授。

講演を行う伊藤雅准教授。

広島駅南口整備案には、参加者の方の関心の高さがうかがえました。

広島駅南口整備案には、参加者の方の関心の高さがうかがえました。

続いて今川朱美助教による「復興をかけた都市計画」というテーマの講演が、「都市災害復興事業とは?」「復興都市計画の事例」「未来に向かう復興計画」の3つの内容に分けて進められました。
最近よく耳にする災害救助法や災害対策基本法についての説明からスタート。過去を例に取りながら、復興計画の在り方について問題が提示されていきます。例えば、1923(大正12)年に起こった関東大震災では、それを機会に東京の都市化、近代化が進められていきました。復興計画には大規模な予算が示され、欧米の最新の都市計画を見本にした街づくりが当時の内務大臣であった後藤新平をリーダーに進行。その結果、生活道路、上下水道・ガスの設備、街路の整備、公園や公営住宅の建設が積極的に行われ、現在の東京の基礎が完成しました。
さらには、戦災復興計画、広島平和都市建設計画、阪神大震災の復興などが、どのように進められてきたかが写真を交えて紹介されました。特に関心を持って聞かれたのが、広島の復興計画。平和記念公園や平和大通りなどが、広島平和都市建設計画に基づいて造られたこと、戦後日本の十大建築に挙げられる世界平和記念聖堂などが紹介され、聴講者も資料を熱心に見入っていました。さらに阪神大震災の復興計画など、日本がたびたび受けた災害や戦争からの立ち上がり方について、実例と課題が示されました。最後に東日本大震災の復興計画についてのお話があり、皆さん熱心に聞き入っていました。

講演を行う今川助教。

講演を行う今川助教。

安心して暮らせる社会をどう作っていくか、もう一度考え直すべき課題です。

安心して暮らせる社会をどう作っていくか、もう一度考え直すべき課題です。

講演終了後に参加者と講師の先生にお話を伺いました。
大学の進路の参考に聞きに来ました。街路空間については興味深い内容でとてもためになりました
(小川真敬さん、高3)
災害の多い日本でどのように再生していくのかこれからもテーマになると思います。地域がよみがえる復興計画の重要さを改めて考えました
(小田雄司さん、広島工業大学大学院工学系研究科建設工学専攻)
一般の方を対象に話す貴重な機会をいただき、感謝しています。都市交通にも関心を持っていただけた意義ある講座でした
(伊藤准教授)
復興の在り方、東日本大震災が今進めるべきことなど関心が高い話題でもあったのか、熱心に聴いてくださって嬉しかったです。
(今川助教)
今回の聴講者は、約110名。毎回来られている方も多く、メモを取りながらの熱心な聴講ぶりが非常に印象的でした。

公開講座