2011年07月15日
「トイレの歴史を変えた大ヒット商品ウォシュレット」
6月28日(火)今年で6年目を迎えた「広工大が選んだプロジェクトX」講演会「革命トイレ市場を制す」が、講義棟三宅の森Nexus21 デネブホールで、TOTOウォシュレットテクノ株式会社 代表取締役社長の林良祐さんを講師に迎えて開かれ、たくさんの学部生・大学院生が聴講しました。
「プロジェクトX」は、2000(平成12)年から2005(平成17)年までNHKで放映された伝説的な人気番組です。まず本学の鶴衛学長が「プロジェクトXは企業が困難に立ち向かう姿を描いて、日本中の人が勇気をもらっていた番組です。今回の大震災で、東日本のもの作りが壊滅的な打撃を受けました。その一方、東日本の小さな部品工場が被害を受けたため、日本やアメリカの自動車会社が操業停止に陥るという事態が生じ、改めてこつこつとした努力の積み重ねが、もの作りの原点であることを再認識させられました。これから日本再生へ向けて、皆さんも先人の姿勢や努力を知り、それを受け継いでいってください」と挨拶しました。
企業のトップの方のお話が聞けるということで、会場のデネブホールには多くの学部生・大学院生が集まりました。
プロジェクトX「革命トイレ市場を制す」は、2002年9月17日に放映されました。
続いて、TOTO株式会社が開発した大ヒット商品、温水洗浄便座「ウォシュレット」が開発されるまでの道のりを描いた、プロジェクトX「革命トイレ市場を制す」が上映されました。
トイレが「ご不浄」と呼ばれ不潔なものの代名詞だった頃、東洋陶器(現TOTO)は「トイレは人々の暮らしを豊かにする商品だ。ひとつひとつの商品に魂を打ち込め」というポリシーのもと、より快適なトイレの開発に取り組んでいました。
そして、1970年代の二度に及ぶオイルショックにより経営危機が訪れた時、社運をかけた新商品として、若い技術者たちが開発に取り組んだのが「洗浄便座」です。当時、洗浄便座はアメリカ製の医療用のものが輸入されていましたが、性能が悪く不評で、これを一般家庭向けの快適なものにすることが、開発チームに与えられたミッションでした。
しかし、開発は困難を極めました。心地よいお湯の温度は何度か、どの角度でお湯がおしりに当たればいいのか、300人以上のデータを取りました。1日16時間、おしりにお湯を浴び続けた開発スタッフもいました。また、微妙な温度制御を行うには電子回路技術が必要でしたが、水に当たると感電の危険がある電子回路をトイレに使うことは大変な難題でした。幾多の困難を乗り越え、1980年6月にウォシュレットは市場に送り出されたのです。
ウォシュレットが画期的だったのは技術だけではありません。マスメディアでトイレを取り上げるのはタブーだった常識を破って、「おしりだって、洗ってほしい」というキャッチコピーであえて夕飯時に大々的にテレビCMを展開。当初は視聴者から苦情が殺到しましたが、この衝撃的なCMはウォシュレットの名を瞬く間に有名にしました。
ウォシュレットは、従来のトイレのイメージを打ち破り「快適」で「清潔」な空間へと変えた革命的な製品であり、そのCMもマーケティングの歴史を変えた傑作として、高い評価を得ています。2011年3月の累積販売台数は3000万台、海外へも1年約10万台が販売され、ハリウッドスターを始め、世界中の人たちから愛されるトップブランドへと成長しました。
初めて、「プロジェクトX」を見る学生も多く、自分たちがいつも使っている製品の意外な開発秘話に興味津々の様子でした。
「僕も皆さんと同じ年齢の息子がいますので、普段僕の話を聞いてくれない息子に話すつもりでお話しします」と林さん。
「よりパワフルで、よりエコに進化を続けるウォシュレット」
番組の上映後、林良祐さんによる講演「トイレの革新進化とグル―バル展開」が行われました。林さんは1963年、福岡県北九州市生まれ。初代ウォシュレットの開発メンバーではありませんが、東京理科大学を卒業して1987年TOTOに入社してから、ウォシュレットの給湯器の開発に携わり、滋賀県発明賞などを受賞。ネオレストEX等のレストルーム商品の開発により、「ものづくり日本大賞」も受賞しているトップ開発者です。
林さんは「生活価値を創造し続ける企業」として、TOTOの百年に及ぶ歴史と開発への情熱を簡単に振り返った後、ウォシュレットを水と電気の技術が融合した「アクアエレクトロニクス」と位置付け、80年代以降の進化の道のりを話されました。
便器の表面を100万分の1mm単位でつるつるにし、表層に純粋ガラスのイオンバリアを作り上げて防汚効果を長期間持続させるセフィオンテクト、強い水の玉と弱い水の玉を連射することにより、従来の半分という少ない水量でかつてないパワフルな洗浄を実現したワンダーウェーブ洗浄、電解除菌水による洗浄で、ノズルをペットボトルの飲み口よりきれいな状態にしたことなど、興味深い開発エピソードがたくさん紹介されました。
こうしたTOTOの技術開発の柱となっているのが「エコ」です。水は現代社会において、非常に重要な資源だと考えられています。「必ず使われるトイレだから、使うことそのものが環境への思いやりでありたい」というポリシーから、TOTOは節水技術の開発につとめ、水洗トイレ1回の水使用量を20リットルから4.8リットルへ削減することに成功。「節水トイレといえばTOTO」という評価を世界から得ることができました。
また、ウォシュレット一体型タンクレストイレ「ネオレストシリーズ」は、開発、企画、デザインのスタッフが1泊2日で熱く議論を交わした「夢を見る会」の"一筆書きのトイレを作る"というデザイン主導のアイデアから生まれたこと、中国や韓国の台頭が著しい中、今後の開発には世界情勢の分析が不可欠であることなども話されました。
最後は質疑応答が行われ、TOTOはどんな学生を求めているのかという質問に、「自分はこんな風になりたい、こんなことがやりたいという技術者像をしっかりと持った人材です。入社の面接は5分程度なので、その中で的を外さない、技術的な会話がきちんと出来ることが大切。皆さんもぜひ、会話力を身につけてください」と学生にエールを送られました。
「今後の海外展開には、日本らしさにこだわった静かな存在感を持った製品が必要ではないかと考え、ネオレストのアイデアが生まれました」
「座った時のフィット感の求め方は」という質問に「まず行為できるかどうかが大切。必ず数百人にテストしてもらい、一番いいポジションを考えています」
講演後、林さんに国際化への対応について質問していた森大輔君(工学部建築工学科・3年)と岡田健史君(環境学部環境デザイン学科・3年)に感想を伺いました。
「活躍する開発者や企業のトップの方に話を聞く機会はめったにないので、これから就職を考える上でとても参考になりました。林さんの言われるように国際化に目を向け、海外で仕事ができるよう頑張りたいです」と森君。「環境デザインと関係のある分野なので、林さんが話された上海の発展の話はとても興味深かったです。これから学生時代に世界を旅して、いろんな都市文化の現状を知りたいです」と岡田君。
学生の未来へ向けてチャレンジする心、職業に対する意識が大いに刺激された2時間15分でした。
最後に感謝の意味を込め、林さんに拍手を送りました。
森君と岡田君。