テーマ「くらしと災害を考える」-第25回広島工業大学公開シンポジウムを開催しました。

2012年01月13日

広島工業大学では、最新の科学技術や研究成果を知っていただくための「公開シンポジウム」を、一般の方々を対象に毎年開催しています。今年度は、12/3(土)広島市中区のJAビルで「くらしと災害を考える」と題して行われました。2011年は、東日本大震災をはじめ多くの災害に見舞われ、国民の防災への関心が大きく高まった年です。ご来場いただいた多数の方々が、災害対策に関する最新の情報や広島工業大学の研究成果報告に、熱心に耳を傾けていました。

会場となったJAビル。開会に先立ち、参加者全員により災害被害者の方々へ黙祷が献げられました。

会場となったJAビル。開会に先立ち、参加者全員により災害被害者の方々へ黙祷が献げられました。

広島工業大学では文部科学省の採択を受け、地球観測衛星情報を自然災害への防災対策に実用化する研究を進めています。

広島工業大学では文部科学省の採択を受け、地球観測衛星情報を自然災害への防災対策に実用化する研究を進めています。

はじめに4人の専門家による基調講演を行い、次いでパネルディスカッションが行われました。

第一部基調講演
国土交通省 国土技術政策総合研究所 危機管理技術研究センター 砂防研究室 主任研究官
水野正樹さん
衛星リモートセンシング技術の土砂災害への応用
近年、地球観測衛星の技術がいよいよ土砂災害対策に使える段階に発展してきました。福島第一原発では30km以内は立ち入り禁止区域で飛行機も入れないため、災害危険箇所の判定に衛星が大いに頼りになりました。9月の台風12号では悪天候のためヘリコプターが飛ばせず、衛星のレーダー(SAR)で決壊危険箇所の判定を行ったそうです。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)衛星利用推進センター 防災利用システム室長
滝口太さん
防災分野における衛星利用―東日本大震災におけるJAXAの対応
滝口さんの所属する防災利用システム室は、陸域観測技術衛星「だいち」で宇宙から観測したデータを、各種機関や自治体などに提供し、連携して活動を行っています。中国地方では、広島工業大学と連携しています。「だいち」は東日本大震災での活躍後、2011年5月に老朽化のため運用を停止しましたが、2013(平成25)年度に「だいち2号」、2015(平成27)年度に「だいち3号」の運用開始が予定されています。

「荒天や噴煙、夜間でも衛星なら大丈夫。地球観測衛星技術は、これからの災害対策に必須です」と水野さん。

「荒天や噴煙、夜間でも衛星なら大丈夫。地球観測衛星技術は、これからの災害対策に必須です」と水野さん。

「東日本大震災では、行方不明者の捜索にも衛星情報が役立ちました」と滝口さん。

「東日本大震災では、行方不明者の捜索にも衛星情報が役立ちました」と滝口さん。

国土交通省 中国地方整備局 企画部防災課長
元山勉さん
中国地方における防災への取り組み
国土交通省では、大規模自然災害発生の際に地方公共団体に技術的支援を提供する「TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)」を2008年に創設しました。元山さんはTEC-FORCEの一員としても活動しておられます。被災状況の確認や現地調査の結果は各自治体に提供され、避難勧告の判断材料となっているそうです。元山さんのお話からも、さまざまな機関が連携して災害対策に常に全力を尽くしている様子がうかがえました。

広島工業大学 環境学部 地球環境学科
菅雄三 教授
時空間衛星画像情報の生成と災害分析への応用
世界各国の機関によって運用されている地球観測衛星。菅先生は各衛星データの特性に基づく画像処理などの構築を行い、災害監視や分析に活用するシステムを開発しています。広島工業大学はJAXAの「だいち」をはじめ、イタリアのCOSMO-SkyMed、イスラエルのEROSなど各国の宇宙機関とライセンス契約を結んでいます。菅先生の開発したシステムは、現在は自治体や海外の政府機関にサービスを提供していますが、企業の危機管理部門での利用にも適しているそうです。

2009年の防府の豪雨災害、2010年の庄原の土砂災害などの事例を示し、災害対策用ヘリコプター「愛らんど号」での現地調査の様子を紹介。

2009年の防府の豪雨災害、2010年の庄原の土砂災害などの事例を示し、災害対策用ヘリコプター「愛らんど号」での現地調査の様子を紹介。

「インフォメーションからインテリジェンスへ。危機管理において情報をよりわかりやすく、使いやすくするための高度な情報加工技術処理を開発しています」と菅先生。

「インフォメーションからインテリジェンスへ。危機管理において情報をよりわかりやすく、使いやすくするための高度な情報加工技術処理を開発しています」と菅先生。

菅先生らは東日本大震災における津波の被害状況を3D化して情報提供を行っています。

菅先生らは東日本大震災における津波の被害状況を3D化して情報提供を行っています。

第二部のパネルディスカッションでは、各機関の取り組みや今後の課題について活発な意見が交わされました。国土交通省中国地方整備局の元山さんは「TEC-FORCEではこの度の震災を受け、津波対策の訓練を全職員を対象に開始しました」同じく国土交通省の水野さんは「災害時の緊急対応では事前準備が大切。今後JAXAさんとさらに連携を深めていきます」JAXAの滝口さんは「広島工業大学は地域の自治体が使いやすいように、情報を変換する技術をお持ちです。ぜひ中国地方の災害対策ブレーンの拠点になっていただきたい」この要望に菅先生は「では新しい衛星が運用されるようになったら、無料か格安で情報提供をお願いします(笑)」と返答し、会場は和やかな雰囲気に包まれました。

第二部は、菅先生がコーディネーターとなり、パネルディスカッションが行われました。

第二部は、菅先生がコーディネーターとなり、パネルディスカッションが行われました。

質疑応答では、国保有の衛星の理想的な運用数や、衛星画像データの提供スピード高速化など、活発な質問が出ていました。

質疑応答では、国保有の衛星の理想的な運用数や、衛星画像データの提供スピード高速化など、活発な質問が出ていました。

シンポジウムを聴講した環境学部地球環境学科・3年の中川翔太君は「ゼミでの研究はまだ始めたばかりなのですが、今日の講演を聞いて、自分の研究の方向性が具体的に見えてきました
広島市から来られた野口美保さんは建築業のお仕事をなさっているそうです。「広島工業大学で開発された素晴らしいシステムが、国などの防災機関だけではなく身近な地域でも活用され、災害に強い町づくりに生かせるようにしていただきたいですね
ともに環境学部地球環境学科・4年の森脇優君と松村隆一君は「とても勉強になりました。卒業研究に向け、奈良県の十津川村や中国地方の災害救援現場でのお話が参考になりました。先生と共にこの研究に携わってきて良かったと、あらためてやりがいを実感しました」(森脇君)「JAXAさんの縦横方向のデータを一回でつなげる処理が魅力的でした。ぜひ解析してみたいですね!」(松村君)

防災についてのシンポジウムということで関心も高く、シンポジウムは大いに盛り上がりました。今後も、最新の研究成果を分かりやすく皆さまに提供していく予定です。ぜひ、ご参加ください。

中川君は菅先生のゼミに所属しています。

中川君は菅先生のゼミに所属しています。

「今後のさらなる研究に期待しています」と野口さん。

「今後のさらなる研究に期待しています」と野口さん。

こちらも菅先生のゼミ所属の森脇君(左)と松村君(右)

こちらも菅先生のゼミ所属の森脇君(左)と松村君(右)

公開シンポジウム

「環境学部 地球環境学科」ページ

「菅 雄三ゼミ・研究室」ページ