「ひろしま建築学生チャレンジコンペ2014」で最優秀賞を受賞した学生デザインの交番が、完成しました。

2016年05月17日

学生のデザインが本物の建物になる
2014年に開催された広島県が主催する「ひろしま建築学生チャレンジコンペ2014」。このチャレンジコンペは、魅力ある建築物を創造するクリエイティブな人材育成の一環として、県内で建築を学ぶ学生を対象にチャレンジの場を提供するものです。小規模な公共建築物の設計デザインを募集し、コンペ形式(※)で競うコンテストで、最優秀作品に選ばれたデザインは、実際の公共施設として事業化されるという学生にとって夢のようなチャンスです。しかも、実施設計や工事監理の段階で提案者として関わることができ、建築の現場の雰囲気を実際に体感することもできます。
※コンペとは、ある課題について複数の参加者が案を出し合い最もよいものを決めるものです。

工大生が最優秀賞を受賞
「まちの交番」というテーマで、応募総数47の作品の中から、川口祥茄さん(大学院工学系研究科環境学専攻2年 ※2014年当時)、横山翔平君(大学院工学系研究科環境学専攻2年 ※2014年当時)、山本秀人君(環境学部環境デザイン学科・4年 ※2014年当時 現在、大学院工学系研究科環境学専攻2年)の3人が考案したデザインが、最優秀賞に選ばれました。
このデザインは、福山市の「福山東警察署野上交番」の建て替えプランとして採用され、昨年8月に着工。2月5日に工事が完了し、完成見学会が行われました。

福山市千代田町。再開発が進む旧福山競馬場の跡地の一角に、その建物はあります。

福山市千代田町。再開発が進む旧福山競馬場の跡地の一角に、その建物はあります。

三角の屋根が目に留まるこの建物が新しい交番です。鉄骨平屋建て約130㎡、敷地面積300㎡で、1.3km北にある野上町交番が老朽化したため、この地に移転されました。

三角の屋根が目に留まるこの建物が新しい交番です。鉄骨平屋建て約130㎡、敷地面積300㎡で、1.3km北にある野上町交番が老朽化したため、この地に移転されました。

屋根はアルミ製、パイプが800本格子状に組み合わされた印象的なデザイン。実は、この格子に大きな意味があります。

屋根はアルミ製、パイプが800本格子状に組み合わされた印象的なデザイン。実は、この格子に大きな意味があります。

見学会には、設計業者、施工業者、行政担当者、報道陣など多くの関係者が集まりました。

見学会には、設計業者、施工業者、行政担当者、報道陣など多くの関係者が集まりました。

「まち」と人をつなげる新しい交番
今回は、「まちの交番」がコンセプト。川口さんたちは、気軽に訪れにくい印象がある交番を「まち」とつなげるために、いくつかの工夫を取り入れました。
1 ギャラリーウォール
正面にガラス張りの展示設備をつくり、防犯情報の掲示はもちろん、地域の住民や子どもたちの作品を展示することで交番と「まち」とのつながりを生み出します。
2 フェンスと屋根
今はまだ何も植えられていませんが、周囲にハンショウヅルなどの植物を植えることで、将来は建物が植物のグリーンカーテンで覆われる予定です。
3 前面のひさし
地域の人々が気軽に立ち寄ることができるように、前面に柱のない大きなひさしを取り付けました。

人を迎え入れやすいように、交番の前には大きなひさしが伸びています。

人を迎え入れやすいように、交番の前には大きなひさしが伸びています。

設計に当たった3人の思い
3人にお話を伺いました。
「コンペの前に、それぞれの思いやアイデアを正直にぶつけあいました。受賞後、社会人になってからも電話などで進捗状況を確認し、可能な限り施工現場に足を運び詳細を詰めていきました。大学で培ったチャレンジする気持ちや自らの意見をしっかり持つことは、今の仕事にも活きています」(川口さん)
「外皮(フェンスや屋根)の部分は、設計を形にするのに一番苦労しましたね。部材の選定から設置の方法など、メーカーや施工業者と何度も協議を重ね今の形に落ち着きました」(横山君)
「先輩方に囲まれていましたが、僕自身も強い思いを持ってコンペに参加しました。再開発地域の象徴となるような交番になってくれたらうれしいですね」(山本君)

「今の状態はまだ完成ではありません。緑が周囲を覆って初めて完成したと言えます。何年後になるかわかりませんが楽しみですね」設計を行った山本君(左)、河口さん(中)、横山君(右)。

「今の状態はまだ完成ではありません。緑が周囲を覆って初めて完成したと言えます。何年後になるかわかりませんが楽しみですね」設計を行った山本君(左)、河口さん(中)、横山君(右)。

大きなギャラリースペースを見つめる三人。「先輩のお二人からは、たくさんのことを学ばせてもらいました。社会人として、また一緒に仕事ができたらうれしいですね」(山本君)

大きなギャラリースペースを見つめる三人。「先輩のお二人からは、たくさんのことを学ばせてもらいました。社会人として、また一緒に仕事ができたらうれしいですね」(山本君)

オープン後の様子。ギャラリーウォールにはポスターや、子どもたちの絵が飾られています。

オープン後の様子。ギャラリーウォールにはポスターや、子どもたちの絵が飾られています。

質の高い設計を学べる建築デザイン学科
4月に誕生した新学科「建築デザイン学科」では、快適で暮らしやすい住宅や建築、街づくりを学ぶことができます。特に建築物の「設計」は、学科の重要な学びのテーマの一つ。日本建築学会賞作品賞や芸術選奨文部科学大臣新人賞などを受賞した講師陣のもと、質の高い設計教育を受けることができます。こうしたコンペへの参加も頻繁に行われています。

指導に当たった建築デザイン学科の村上先生。「敷居の低い、ヒューマンスケールのいい建築が完成したと思います」

指導に当たった建築デザイン学科の村上先生。「敷居の低い、ヒューマンスケールのいい建築が完成したと思います」

最優秀作品を基に実施設計(※)を行った第一工房の村上様(本学OB)。「後輩のアイデアを形にするために、母校へ何度も足を運び打ち合わせを重ねました。今しか学ぶことができないことをしっかり勉強し、社会へ飛び出してほしいと思います」※実施設計とは、施工するために必要な図面を作成すること。

最優秀作品を基に実施設計(※)を行った第一工房の村上様(本学OB)。「後輩のアイデアを形にするために、母校へ何度も足を運び打ち合わせを重ねました。今しか学ぶことができないことをしっかり勉強し、社会へ飛び出してほしいと思います」※実施設計とは、施工するために必要な図面を作成すること。

地域に根差した交番に向けて
まだ、新しい交番の周囲は建物が何もなく再開発がこれから進んでいく段階でしたが、交番の外壁を緑が覆っていくに従い、周囲にも賑わいや人の動きが生まれることでしょう。その時にはじめて、地域に根差し開かれた交番を目指した意図が意味を持ってくるはずです。
また、翌年に行われた「ひろしま建築学生チャレンジコンペ2015」においても、村上ゼミの学生が最優秀賞を受賞し、現在、設計が完了し、着工に向けた準備が進んでいます。次はどんなデザインの公共施設が建つのか、期待して待ちましょう。

建築デザイン学科(2016年4月開設)
※環境デザイン学科は、2016年度から「建築デザイン学科」に改編しました。

工学系研究科 環境学専攻(博士前期課程)