チーム医療を担う人材を目指して 広島県下の4つの大学が合同で「臨床医工学実習」を実施しました。

2016年10月11日

4つの大学の学生がともに学ぶプログラム
広島大学、広島市立大学、広島国際大学、広島工業大学の4つの大学が連携し、2013年より「臨床情報医工学プログラム」を実施しています。高度に発展した先進医療の現場では、情報分野や工学分野との連携が強く求められています。そこで、プログラムを通じて医療系・情報系・工学系の異分野が融合した教育を行い、「チーム医療」の一員として地域の医療の発展に貢献する人材を育成しています。
今年も9月の夏休み期間中にプログラムの一環として「臨床医工学実習」が開講され、各大学から学生17名が広島工業大学の生体医工学科が普段利用している、模擬手術室、模擬透析室などの実習室に集まりました。

手術前の手洗いの重要性
この日はまず、実際の手術の際の手洗い方法と、ガウンテクニック(※)の実習を行いました。手術用ガウンの着用においては、基礎的な手洗いから、手術用の帽子やマスクのかけ方、シューズカバーの付け方など、一つひとつ丁寧に説明と指導を受けます。特に熱がこもったのは手洗いについてです。「手をしっかり消毒をしておくことで、病原性微生物がいなくなり、感染症を防ぐことができます」と生体医工学科の渡邊先生。ヒジ上約5センチまで、消毒液でしっかりと泡立てて洗い、水滴は不織布で拭き取ります。拭き終わった不織布を体から離すときも、体には水滴が飛び散ることがないように徹底しました。
※ガウンテクニックとは、医療従事者が手術室などに入室する前に行う、手洗いや滅菌ガウンを着用する準備作業のことで、一連の作業はガウンを汚染することなく行わなければいけない。

渡邊先生が、手術前の手洗いの仕方を、身ぶり手ぶりでもって解説。一度手洗いによって清潔になった部分を、不注意により汚染してしまわないよう、細心の注意を払う必要があります。

渡邊先生が、手術前の手洗いの仕方を、身ぶり手ぶりでもって解説。一度手洗いによって清潔になった部分を、不注意により汚染してしまわないよう、細心の注意を払う必要があります。

手や腕に残った水滴は、手先に垂れないように注意しながら不織布で拭いていきます。一度使用した不織布は、必ず廃棄されます。

手や腕に残った水滴は、手先に垂れないように注意しながら不織布で拭いていきます。一度使用した不織布は、必ず廃棄されます。

ガウン着用も慎重に
続いて、裾が床につかないように注意しながらガウンを着用していきます。着用後は、ガウンの表側を直接手で触れないように注意しながら手袋を着け、腕の上までグッとまくり上げれば完了です。「はじめてのことなので、難しいですね」帽子やマスクを着け、ガウンに身を包んだ学生たちは、その徹底した衛生管理に驚いているようでした。

二人一組になって、手術用のガウンを着ていきます。袖を通す際も、両手を上にあげて清潔区域以外の箇所を触らないようにします。

二人一組になって、手術用のガウンを着ていきます。袖を通す際も、両手を上にあげて清潔区域以外の箇所を触らないようにします。

完了です。手袋もしっかりと腕までまくり上げました。

手袋の表面を素手で触らないように注意しつつ、しっかりと腕までまくり上げ、完了です。

人工心肺装置の仕組みを学ぶ
次に、人工心肺装置について、実際の機械を前に、血液の一連の流れを追いかけながら仕組みを学びました。「食品を冷蔵して長期保存するように、手術中の血液の温度を下げることで体温も下がり、生命維持がしやすくなります」と生体医工学科の戸梶先生が説明。手術現場の様子がリアルに感じられる説明に、学生たちは聞き入っていました。
生体医工学科の学生が目指す臨床工学技士は、こうした人工心肺装置などの医療機器の操作や点検を行うスペシャリストです。手術中に、その操作を一手に任されることも多く、大きな責任が伴う仕事です。

人工心肺装置の前で、機器の仕組みから名称、それぞれの働きなどの説明を聞きました。臨床工学技士を目指す本学の学生たちには馴染みのある機器ですが、他大学の学生にとっては、その仕組みを理解するための良い機会になりました。

人工心肺装置の前で、機器の仕組みから各部の名称、それぞれの働きなどの説明を聞きました。臨床工学技士を目指す本学の学生たちには馴染みのある機器ですが、他大学の学生にとっては、その仕組みを理解するための良い機会になりました。

心臓手術の際の血液の流れも、装置の操作画面を見ながら解説を聞くことができるため、理解度も上がります。

心臓手術の際の血液の流れも、装置の操作画面を見ながら解説を聞くことができるため、操作した内容が、どのように血液の流れに影響するのかがよく理解できます。

医療現場に携わることを実感
実習を終えた学生に話を聞きました。
正岡真衣さん(生命学部生体医工学科・2年 広島県立廿日市高校出身)
「人工心肺装置の説明を聞き、一つの手術における臨床工学技士の責任の重さをあらためて感じました。失敗しないために、一つひとつの動作の確認をすることが大切だと分かりました」
曽里優花さん(生命学部生体工学科・2年 広島県立祗園北高校出身)
「手術着を身に着けて、手袋を腕にまくり上げた瞬間、医療現場に立つことの実感が湧いてきました。」

曽里さん(左)「患者さん一人ひとりの病状を把握し、心配りのできる臨床工学技士になりたいです」。正岡さん(右)「他大学の学生さんが積極的に手を上げて質問している姿に刺激を受けました」

曽里さん(左)と正岡さん(右)「患者さん一人ひとりの病状を把握し、心配りのできる臨床工学技士になりたいです」

「生体医工学科の学生は、最新の設備の中で医療機器についての専門知識を身に付けつつ、医療従事者としての心構えから生理学まで、多くのカリキュラムを受講しています。最新の医療機器を使って実習できたことが、他大学の学生さんにもいい経験になってくれたのなら幸いです」と生体医工学科の服部先生。

「生体医工学科の学生は、最新の設備の中で医療機器についての専門知識を身に付けつつ、医療従事者としての心構えから生理学まで、多くのカリキュラムを受講しています。最新の医療機器を使って実習できたことが、他大学の学生さんにとってもいい経験になってくれたのなら幸いです」と生体医工学科の服部先生。

今後は学会発表や地域医療の向上への貢献を目標に
プログラムの一環として、今後は4大学合同で合宿を行い、学生同士のディスカッションやプレゼンテーション、医療に関わるモノづくりを行っていきます。「モノづくりの成果は、大学祭で展示をする予定ですが、さらにその先で学会発表をしてみたいという学生が出てくるといいですね。学生の活動を通じて、広島の地域医療の向上に貢献していきたいですね」と服部先生は熱く語りました。
幅広い体験を積んだ学生から、将来のチーム医療を支える人材が輩出されることが期待されます。

臨床情報医工学に卓越した地域の先進医療をチームで担う人材育成

生体医工学科