卒業設計が優秀作品に選ばれた環境デザイン学科の3人の学生が語る「無から有を想像する楽しさ」

2017年04月25日

4年間の学びを凝縮した卒業設計
4年生が最後に取り組む大学での学びの集大成、それが「卒業研究」です。それまで学んできたことを深め、実験や調査を行い、論文を執筆しますが、建築設計を学ぶ学生にとっては、「卒業設計」が学びの集大成に当たります。4年次の1年間は、卒業設計の完成に向け、アイデアを練り、調査を行い、図面を何度も描き、思いを伝えるための表現を磨き、あらゆる人にコンセプトを理解してもらえるような「わかりやすい」模型制作に取り組んでいます。
今年度の環境デザイン学科(※)でも、力作が勢ぞろいしました。その中でも上位に選ばれた作品と制作を行った学生、作品に込めた意味を紹介します。
※ 2016年4月、「環境デザイン学科」は「建築デザイン学科」に改組しました。

買物が好きで、複数の店舗が入る複合型商業施設をよく訪れる中で、「建築から若者の消費意欲を掻き立てることはできないか」と考えたのが、テーマを考えるきっかけとなったと語る田中奈生都君(広島市立広島工業高校出身)。画一的な空間を見つめ直し、過去にないものをつくることを意識し、唯一無二の建物をつくり出しました。「建物に角度を付けてずらすことで、隙間を意識的につくり出し奥の空間が見えるようにしました」
田中君は、2年生の時に先輩が自分の図面を評価してくれたことで、設計への興味が次第に増していったそうです。「設計は時間もかかるし、手間もかかる。大変なこともありましたが、設計が好きだという思いに気づくことができ、続けてきてよかったなと思っています」作品について厳しい意見をいただいた時も、自分の設計やコンセプトに自信を持っていたから乗り越えることができました。

建物の圧迫感をなくすために、ガラス張りにして中を見せたり、6つの棟の高さに変化を付けたり、フロアに勾配を付けたりと、既存のビルとは大きく異なるインパクトを与えることに成功しています。

建物の圧迫感をなくすために、ガラス張りにして中を見せたり、6つの棟の高さに変化を付けたり、フロアに勾配を付けたりと、既存のビルとは大きく異なるインパクトを与えることに成功しています。

「海外の建築物などを参考にして、自分なりのイメージを固めていきました」ライブハウスとCDショップがつながっていることや、内部のお客さんをあえて見せることでにぎわいを演出するなど、さまざまな仕掛けがあふれています。

「海外の建築物などを参考にして、自分なりのイメージを固めていきました」ライブハウスとCDショップがつながっていることや、内部のお客さんをあえて見せることでにぎわいを演出するなど、さまざまな仕掛けがあふれています。

計画にあたり、自分自身で周辺の商業施設も綿密に調査。それぞれの特性や弱点などを研究して、自身の設計する商業施設に生かしました。「地域のにぎわいの核となるような施設を目指しました」

計画にあたり、自分自身で周辺の商業施設も綿密に調査。それぞれの特性や弱点などを研究して、自身の設計する商業施設に生かしました。「地域のにぎわいの核となるような施設を目指しました」

審査の結果、田中君の作品が全体で1位に選ばれました。「発表に際しては、さまざまな資料を参考にして、入念な準備を行いました。ゼミの仲間という良きライバルに恵まれたことも励みになりました。1位と聞いたときは、本当にうれしかったですね」

審査の結果、田中君の作品が全体で1位に選ばれました。「発表に際しては、さまざまな資料を参考にして、入念な準備を行いました。ゼミの仲間という良きライバルに恵まれたことも励みになりました。1位と聞いたときは、本当にうれしかったですね」

人と自然と建築の関係性」をテーマに、自然を身近に感じられるシェアハウスを提案した岡田直果さん(岡山県立津山工業高校出身)。暮らしの中に緑を取り込むために、1世帯に1本の樹木を配置して、その隙間に住まうという構成の建物を考えました。「建築を工夫することで、人の暮らしを守りつつ、緑も残すことができる。そこが建築の素晴らしいところだと4年間学ぶ中で感じたので、卒業設計にまとめました。人間は環境を破壊するだけではなく、もともとあったものよりも素晴らしい空間を作り出すことができると信じています」
提出期限ギリギリまで、アイデアを練り納得のいくものを作ったという岡田さん。細かい修正を重ねたこだわりが高い評価につながりました。「設計の魅力は、正解がないところにあるのだと思います。突き詰めてもなかなか完成が見えないし、新しいものを生み出すエネルギーも必要なのですが、そこがやりがいにも感じています」。共に建築を学んできた仲間の存在が、課題に挑戦するモチベーションとなったそうです。

建築場所としてJR廿日市駅北側の斜面を想定。もともと、この土地にあった緑を復活させるという思いが設計の根底にありました。勾配に合わせて屋根をかけることで、元の斜面地のイメージも残しています。

建築場所としてJR廿日市駅北側の斜面を想定。もともと、この土地にあった緑を復活させるという思いが設計の根底にありました。勾配に合わせて屋根をかけることで、元の斜面地のイメージも残しています。

斜面地での建築という特性を生かし、1階からは低い木が、2階からは葉を通して外が見えるようにし、さらに屋上のテラスからは、各世帯のプライバシーを確保しつつ広範囲の緑を眺めることができるようになっています。採光は斜めに取り、光が緑を通して部屋の中に入ってきます。

斜面地での建築という特性を生かし、1階からは低い木が、2階からは葉を通して外が見えるようにし、さらに屋上のテラスからは、各世帯のプライバシーを確保しつつ広範囲の緑を眺めることができるようになっています。採光は斜めに取り、光が緑を通して部屋の中に入ってきます。

「集合住宅と自然や緑を、どのように融合させるのかに気を配りました」と岡田さん。ゼミ室にある建築関係の雑誌を参考に、自分なりのアイデアを練り上げていきました。

「集合住宅と自然や緑を、どのように融合させるのかに気を配りました」と岡田さん。ゼミ室にある建築関係の雑誌を参考に、自分なりのアイデアを練り上げていきました。

「最終的な案が生まれたのが締め切りの1週間前。そこから設計、模型製作などを行ったので、間に合ってホッとしています」と岡田さん。

「最終的な案が生まれたのが締め切りの1週間前。そこから設計、模型製作などを行ったので、間に合ってホッとしています」と岡田さん。

佐藤宏美さん(広島県 山陽女学園高等部出身)は、原爆ドームに近い広島市中区大手町に、留学生や外国人観光客と気軽に交流できる施設を提案しました。その形は、まるで金属の結晶のように各部屋が組み合わさっていて、複雑でありながらも印象に残る外観です。「中心となるホールをまず立方体で作り、その大きな立方体を囲むように、小さな立方体を組み合わせていきました。そこにテラスを作ったり、新しい部屋を作ったりずらしたりしながら、ブロックを組み合わせるようにして、今の形ができあがりました」
一番難しかったのはテーマを決めるところだったと佐藤さん。「建築場所として想定した大手町に足を運んだところ、たくさんの外国人観光客を目撃しました。私自身が、もっと外国の方と交流したいという思いがあったことに気づき、そのための交流の場の設計に思い至りました。こういうところがあったらいいと思ったらそれがすぐに反映できるところに、設計の面白さを感じています」
卒業後は、大学で培った技術を生かして、店舗の設計やディスプレイを行っている企業に就職する予定です。「自分が関わったものを世の中に発信できることが、今から楽しみです」

スムーズに異文化交流ができるように、廊下と活動室が一体化しています。各部屋の壁も無くすなど、随所に工夫の跡が見られます。

スムーズに異文化交流ができるように、廊下と活動室が一体化しています。各部屋の壁も無くすなど、随所に工夫の跡が見られます。

模型では、さまざまな国籍の人が交流する様子が表現されています。既存の遊覧船乗り場へつなぐ通路を設置し、観光拠点としての役割も担っています。

模型では、さまざまな国籍の人が交流する様子が表現されています。既存の遊覧船乗り場へつなぐ通路を設置し、観光拠点としての役割も担っています。

ゼミの村上先生から「蜂の巣みたいにしたら」とアドバイスを受け、現在の形に。「自分でかっこいいと思ったものを積極的に見つけていくと設計が楽しくなります。先生も、そんな私の姿勢を見て、親身になって指導してくださいました」

ゼミの村上先生から「蜂の巣みたいにしたら」とアドバイスを受け、現在の形に。「自分でかっこいいと思ったものを積極的に見つけていくと設計が楽しくなります。先生も、そんな私の姿勢を見て、親身になって指導してくださいました」

「高校は普通科だったのですが、大学で基本から建築を教えていただき成長することができました」と佐藤さん。学科には女子学生も多く、いっしょに切磋琢磨できたそうです。

「高校は普通科だったのですが、大学で基本から建築を教えていただき成長することができました」と佐藤さん。学科には女子学生も多く、いっしょに切磋琢磨できたそうです。

自らの手でモノをつくる面白さ
3人に共通するのは、自らの手で建築物の設計を行うことに魅力を感じているという点です。自分なりの目的意識を持って、今までにない空間を設計することは困難を伴うこともありますが、無から有を創り出す面白さを体験できたことは、他の何にも替え難い経験だったと思います。この経験を糧に、次なるフィールドでも頑張ってください。

建築デザイン学科