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~大空への思いを乗せた白い翼~ 本番間近― 鳥人間コンテスト初出場までの軌跡

2017.07.24

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読売テレビ主催「第40回鳥人間コンテスト2017」滑空機部門に初出場が決まった、広島工業大学人力飛行機同好会「HIT SKY Project」。3月末に書類選考通過の知らせを受けると、すぐに機体の製作に着手しました。全てのパーツがそろい、本番まで残り3週間となった7月8日。同好会メンバーや卒業生たちが本学に集い、機体の組み立てを行いました。興奮や感動に包まれながらも、ひたすら作業に取り組む彼らの、真摯な姿をリポートします。

パーツが組まれ、飛行機は徐々に姿を現す
鳥人間コンテスト出場に挑み続けた同好会には、先輩から受け継がれた機体設計図があります。書類を提出しても落選の連続で、応募すらできない年もありましたが、それでもあきらめず夢を持ち続けた先輩たちによって、設計図は少しずつ改良されていました。
その設計図が、初めて形になるときがきたのです。
あいにくの雨のため、新1号館ピロティ内での作業となりましたが、メンバーの気持ちは最高潮!丁寧に一つ一つ手作りした翼の一部「リブ」が、25メートルという長さの桁に整然と取り付けられると、通りがかった学生や教職員が足を止めるほどの壮大さ。軽量化にこだわり、翼にはスタイロホーム(断熱材の一種)やバルサ材(軽量木材)を使用。総重量を約40キロに抑えることができました。
朝10時から少しずつ、丁寧に組み立てていった機体。午後になってやっと、機体の中央にコックピットをかぶせることができました。

新1号館ピロティの横幅いっぱいまで広がった両翼

新1号館ピロティの横幅いっぱいまで広がった両翼

主翼の接合部分には細心の注意を払います

主翼の接合部分には細心の注意を払います

夢と重圧を翼に乗せて、フライトの一瞬にかける
完成した機体の名前は『雙鶴(そうかく)』。鶴学園の鶴と、遠くへ飛んでいく鶴のようにとの意味を込め、そして広島工業大学の茶室「雙鶴堂」から名付けられました。今回、栄えある「雙鶴」の操縦士に選ばれたのは、城戸基輝さん(知能機械工学科2年)。操縦といっても、コントロールできるのは人間の体重移動のみ。数十秒のフライト、その一瞬に、今まで鳥人間コンテストに関わってきた全ての人の思いを乗せて飛び立つのです。
「姿勢をまっすぐに一定に保ち、できるだけ前へ。もちろん初の体験ですが、自分のイメージでは姿勢が大切だと思っています。体幹を鍛えたい」と緊張気味に話す城戸さん。このあと、初めて機体の中央にあるコックピットに体を滑り込ませました。中腰・前傾の姿勢のまま、両方の腕のみで機体を持ち上げ、合図とともに駆け出すのがパイロットの仕事。城戸さんの両腕には、40キロの重さと責任がのしかかります。
「コックピット内は意外と狭かったです。何といっても40キロは重い。腕も鍛えないと」と城戸さん。パイロットのほか、左右と後ろの3人が、大切なスタートを手助けするための装備を整えることが急務となりました。

入念に翼を組み立てる操縦士の城戸さん

入念に翼を組み立てる操縦士の城戸さん

コックピット内での姿勢で全体のバランスが変わります

コックピット内での姿勢で全体のバランスが変わります

夢の実現まであと一息!彼らの挑戦はクライマックスへ
残された時間はあと少し。手探りながら先輩や顧問の宇都宮准教授の知恵を借り、機体を改善していきます。「大会まで時間は残りわずかですが、修理の方向性が決まり、ちょっと光が見えてきました」と、安堵の表情で語る司令塔の川邊大輝さん(電子情報工学科4年)「まずは現地まで無事に機体が届いてほしい。そして会場で組み立てて、パイロットを送り出したい。そして、琵琶湖を飛んでいる姿をこの目で見たいと思っています」と、責任者の田邉拓也さん(知能機械工学科3年)は語ります。

全てが初めてのことばかり。うまくいくことばかりではありません。それは人生や社会も同じこと。この一連の共同作業を通じ、メンバーの心の中に得るものが、きっとあることでしょう。疲れを見せず手を動かし続けるメンバーのはつらつとした表情が、それを物語っていました。

「組み立てのノウハウがない中、メンバーが協力しあって完成しました」と川邊さん

「組み立てのノウハウがない中、メンバーが協力しあって完成しました」と川邊さん

乗り込む操縦士の姿勢を全員でチェック

乗り込む操縦士の姿勢を全員でチェック

より遠くへ飛ぶための機体調整はミリ単位

より遠くへ飛ぶための機体調整はミリ単位

機体「雙鶴」とともに健闘を誓うメンバー

機体「雙鶴」とともに健闘を誓うメンバー

OBたちのサポートを追い風に、琵琶湖で飛翔
同好会メンバーとともに、機体組み立てに汗を流すOBの姿がありました。2017年3月に卒業した藤田充さんです。おもに、操縦者が入るコックピット部分の製作に関わりながら、メンバーをサポート。「設計図があると完成した気持ちになりますが、設計図に機体の作り方は描いてない。そこからが大変なんです」という藤田さんの言葉が、完成までの苦労を物語っていました。
実は、一度完成したコックピットを、全て分解して再設計したとのこと。「強度を高め、かさ増しして高さを出しました。視界が広くなり、操縦性もアップしたと思います」と藤田さん。

「鳥人間コンテストの出場を機に、もっと同好会のメンバーが増えたらと願っています」と藤田さん

「鳥人間コンテストの出場を機に、もっと同好会のメンバーが増えたらと願っています」と藤田さん

藤田さんが改良を加えたコックピット

藤田さんが改良を加えたコックピット

出場がかなった知らせは、すぐさま全国のOBのもとにも届けられました。途中経過を見守ったり、差し入れを持ってきたり、製作の手助けをしたり。当日、現地には何人ものOBが集まる予定です。技術的なアドバイスはもちろん、自分たちの夢を重ね心から応援してくれるOBの気持ちを乗せて、きっと素晴らしいフライトを見せてくれることでしょう。

「申請書の志望理由をみんなで考えて書いたり、設計図を改良したりした、ねばり強い取り組みを思い出します。落選しても応募し続けたことも評価されての出場かなと思います」とOBの椿卓也さん(地球環境学科卒)
「出場が決まったと聞いたときは、本音を言うと『自分たちも出たかった』との思いがありましたが、とてもうれしかったです。当日も見に行きますよ。機体の名前「雙鶴」は、人力飛行機同好会の先輩方から、受け継がれてきた名前。その名のように、とにかく無事に遠くまで飛んでほしいです」当時休眠状態だった同好会を再生させた中心人物の村上正尚さん(知能機械工学科卒)
「同好会が発足する前ですが、知能機械工学科の「自由デザイン」(当時は「自主デザイン工学」)の授業で宇都宮准教授に学んでいました。それがきっかけで、鳥人間コンテストを目指し、設計図を作成したのが今から10数年前。今でも部室に飾ってくれているそうです。その設計図を基に寺岡優治さんがカスタマイズし、形になったのがこの機体だと思うと感無量。これからも後輩にはエールを送り続けたいです」と懐かしむ、相原健史さん(知能機械工学科卒)

左から藤田さん、村上さん、宇都宮准教授、椿さん、相原さん

左から藤田さん、村上さん、宇都宮准教授、椿さん、相原さん

滑空機部門の本番は7月29日。滋賀県彦根市(松原水泳場)で開催されます。広島工業大学人力飛行機同好会「HIT SKY Project」の皆さん、本学の学生、教職員、そしてOB一同、心から応援しています!

【人力飛行機同好会】

【過去記事:人力飛行機同好会発足以来の悲願達成!初の「鳥人間コンテスト」出場に向けて準備は着々と進んでいます。(5/19)】

【過去記事:「鳥人間コンテスト」の書類選考を通過!琵琶湖での初フライトを目指して頑張っています。(4/5)】