"新たな価値を創造"する理工系人材とは?―「第1回工大サミット」で5工大が議論し、連携を深めました。

2017年09月15日

社会の未来に貢献するため、5工大が結束。

愛知工業大学、大阪工業大学、芝浦工業大学、福岡工業大学、そして広島工業大学と、全国5つの工科系大学が一堂に会する「工大サミット」。その第1回となるキックオフイベントを6月24日に大阪工業大学梅田キャンパスで開催。少子化、グローバル化など情勢の変化が激しい時代において、社会の未来創造に貢献できる理工系人材とは何か、そうした理工系人材をどう育成すべきか、互いに意見を交わしました。

会場のエントランスには5工大それぞれの教育を紹介するブースが設けられ、多くの人が足を止めて内容に見入っていました。

会場のエントランスには5工大それぞれの教育を紹介するブースが設けられ、多くの人が足を止めて内容に見入っていました。

イベントには教育関係者や企業の方々が多数集まり、5工大のメッセージに耳を傾けていました。

イベントには教育関係者や企業の方々が多数集まり、5工大のメッセージに耳を傾けていました。

工大サミット開幕にあたり、三菱電機(株)先端技術研究所・所長の水落隆司氏によるスタートアップ基調講演が行われました。

水落氏は、"雪道でも転ばない自立二足歩行ロボット"や、"人間2人が同時に話しても、それぞれの会話内容を完全に聞き分ける解読システム"といった事例を紹介しながら、工科系大学の今後を展望されました。
「約30年後の2045年に人工知能(AI)は人間を超え、人間はAIに仕事を奪われるとも言われますが、そうではありません。むしろ、AI、ビッグデータ、IoT、ロボットといった新たな技術が起爆剤となって、第4次産業革命が起ころうとしています。新技術による変革と新たな価値創造を牽引する理工系人材が重要になる。そうした人材の輩出を担う工科系大学の役割は大きくなるでしょう」

「インターンシップやロボカップなど、学外でさまざまなプロジェクトを体験する機会に積極的に参加することで、社会を知ってほしい。視野を広げてほしい」と水落氏

「インターンシップやロボカップなど、学外でさまざまなプロジェクトを体験する機会に積極的に参加することで、社会を知ってほしい。視野を広げてほしい」と水落氏

"ものづくり"と"ひとづくり"の融合が、未来の"夢づくり"につながる。

続いて、参加5工大の学長自ら、自大学の取り組みについてプレゼンテーションを行いました。

5工大のトップがそれぞれの課題意識を語り、力を入れている自大学のカリキュラムやプロジェクトについてプレゼンしました。

5工大のトップがそれぞれの課題意識を語り、力を入れている自大学のカリキュラムやプロジェクトについてプレゼンしました。

広島工業大学の鶴学長が力点を置いたのは、工科系大学には"ものづくり"に加え、"ひとづくり"というビジョンが今後必要になる、ということです。

「専門性・技術力の修得は言うまでもないが、それだけで十分ではありません。前に踏み出す力、考え抜く力、チームで協調する力、あるいは相手を思いやる・社会に奉仕するといった人間力を備えた技術者を育成するのが、工科系大学の使命です。"ものづくり"と"ひとづくり"が合わさることで、社会の"夢づくり"が可能になります」

また地方にある大学として、地域との連携を通じた人材育成の重要性を強調しました。

「さまざまな分野で質の高いものづくりを担う中核技術者が、地方の活性化に欠かせません。地域を支える中核技術者こそ、日本産業の成長の原動力です。地域というアイデンティを持ちながら、世界に目を向け、グローバリゼーションの中でものづくりを展開できる人材の育成に力を入れます」

最後に、5工大連携による「テクノチャレンジ」を提案。5工大それぞれの技術シーズの交流によって、新たな価値創出につながる。工大サミットをそうした場として活用してはどうかと働きかけ、プレゼンテーションを締めくくりました。

「建学の精神"教育は愛なり"、教育方針"常に神と共に歩み社会に奉仕する"という本学の根幹の理念から"社会・環境・倫理"というキーワードを導き出し、若者の指導にあたっています。これを土台に、5工大の連携も十分に活用しながら、"技術立国・日本を牽引する倫理観ある技術者"を育成したい」と鶴学長。

「建学の精神"教育は愛なり"、教育方針"常に神と共に歩み社会に奉仕する"という本学の根幹の理念から"社会・環境・倫理"というキーワードを導き出し、若者の指導にあたっています。これを土台に、5工大の連携も十分に活用しながら、"技術立国・日本を牽引する倫理観ある技術者"を育成したい」と鶴学長。

イノベーション人材とは?社会の要請にどう応えるか?

その後は、5工大学長によるパネルディスカッションです。

5工大のトップが、共通のテーマをもとに互いの考えを語り合いました。

5工大のトップが、共通のテーマをもとに互いの考えを語り合いました。

一番目のテーマは【イノベーション人材に必要な力とは何か】

「基礎学力」に加え、「いろいろな価値観を理解できる多様性」「時代背景・タイミング」といった意見が出されました。

鶴学長は、瀬戸内海の潮流を発電に利用しようという広島工業大学の石垣准教授(環境土木工学科)の研究を例に引き、
「この研究は、土木という"基礎"の上に、クリーンエネルギーの実現という"問題意識"があり、瀬戸内の潮流が利用できないかという"発想"が融合したからこそ生まれた取り組みです。このように、基礎学力・専門知識を基盤に、柔軟な発想力や価値を見出す力、そして何より新しいことに挑戦するチャレンジ力が加わった時、イノベーションが生まれます」
と語りました。

愛知工業大学・曽我部副学長「本質を見抜く力、いろんな要素技術を見分け、組み合わせる力が重要です。加えてタイミング、時代の背景も大事だと思います」

愛知工業大学・曽我部副学長「本質を見抜く力、いろんな要素技術を見分け、組み合わせる力が重要です。加えてタイミング、時代の背景も大事だと思います」

福岡工業大学・下村学長「エンジニアリングの基礎はサイエンスであり、サイエンスの根幹は哲学がある。基礎学力を持つ技術者の組織がどういう哲学で人々の知的好奇心を刺激しようとするか。イノベーションはそのプロセスから起こります」

福岡工業大学・下村学長「エンジニアリングの基礎はサイエンスであり、サイエンスの根幹は哲学がある。基礎学力を持つ技術者の組織がどういう哲学で人々の知的好奇心を刺激しようとするか。イノベーションはそのプロセスから起こります」

二番目のテーマは【社会からの要請・産業界のニーズにどう応えるか】

「海外での異文化交流を促進し、学生の多様性を養う」「学生が主体となってプロジェクトに取り組み、成功・失敗、あるいはチームでの協調といった多彩な体験を積ませる」など、各大学で実践しているプログラムが紹介されました。

鶴学長は、2016年4月からスタートしたHIT教育2016に言及しました。
「将来を考えた時、どんな学びが必要か、学生が体系立てて理解できるようなカリキュラムツリーを提示。それを指針として、学生自ら計画を立てさせています。インターンシップやクラブ活動など、カリキュラム以外の体験・活動をHITポイントとして評価し、総合的な人間力の向上を図っています」

芝浦工業大学・村上学長「学生を2週間程度、海外に送り、海外の学生とチームを作って課題解決にあたらせる、というグローバルPBL(Project Based Learning)を導入しています。多様性の経験が、学生の成長を促進しています」

芝浦工業大学・村上学長「学生を2週間程度、海外に送り、海外の学生とチームを作って課題解決にあたらせる、というグローバルPBL(Project Based Learning)を導入しています。多様性の経験が、学生の成長を促進しています」

大阪工業大学・西村学長「自分で考え、解決策を見出すための様々なプロジェクト活動を実施。人力飛行機、いわゆる"鳥人間コンテスト"などのイベントにも学生が主体的に参加しています」

大阪工業大学・西村学長「自分で考え、解決策を見出すための様々なプロジェクト活動を実施。人力飛行機、いわゆる"鳥人間コンテスト"などのイベントにも学生が主体的に参加しています」

最後のテーマは【工大サミットをどういう方向で取り組んでいくか】

「グローバル人材の育成やイノベーションには、何よりバックボーンの異なる人々の交流が重要。5工大の連携は、学生・研究者同士が交流を深めるきっかけになる」
「中学・高校で、ものづくりの良さを知る機会が減っている。ものづくりの感激を伝える場になればいい」
「女子学生が依然として少ない。リケジョを増やす機会づくりにもなるのではないか」
など多彩な角度から意見が出されました。

各大学のトップが理工系人材の育成について活発に議論し、盛会のうちに終了した第1回工大サミット。工大サミットの今後の展開にご期待ください。