人と環境にやさしく、しかもワクワクするクルマとは? ~公開シンポジウム「未来につながるクルマづくり」を開催

2018年01月26日

クルマづくりは、大きな変革期を迎えている

広島工業大学では、「科学技術と日常生活の対話」という視点で毎年、公開シンポジウムを開催しています。31回目を迎える今回は、内燃機関(エンジン)からモーターなどの電気デバイスへ大きな変革期を迎えている自動車産業に焦点を当て、「広島発 未来につながるクルマづくり -環境にやさしい、人にやさしい技術そしてデザイン-」と題して開催しました。

シンポジウムは本学・鶴学長のあいさつでスタートしました。

シンポジウムは本学・鶴学長のあいさつでスタートしました。

シンポジウムには多くの方々が出席。自動車業界関係の方々の姿も見受けられました。

シンポジウムには多くの方々が出席。自動車業界関係の方々の姿も見受けられました。

新素材、新エネルギーをどう利活用するか

第1部では、自動車産業を取り巻く環境の変化、将来を見据えたクルマづくりへの取り組み、それらを支える新しい技術やデザインについて4名の方にご講演いただきました。

特別講演「岐路に立つクルマづくり」
一般社団法人日本自動車研究所顧問(前所長)、東京大学名誉教授、広島工業大学客員教授
小林 敏雄 氏

地球規模でCO2削減が進むなか、今後も自動車産業が成長するには次世代エネルギーへの転換が不可欠です。また自動走行システムの開発や、IoT・AIを始めとしたITの発展に伴う生産方式の変容など、自動車を取り巻く環境は歴史的な転換期を迎えています。小林氏には主に、EV(電気自動車)や燃料電池車などの新エネルギー、自動走行システムや自動車の軽量化などを可能にする新技術・新素材といったテーマでご講演いただきました。

講演1.「注目される自動車の軽量化」
広島工業大学 工学部 知能機械工学科 教授
内田 和博

自動車は、車体が軽ければ軽いほどCO2排出量を抑えられ、加速性能も向上します。EVの登場に伴い、その走行距離の延伸を図るには今まで以上の軽量化が必要です。内田先生は各自動車メーカーの軽量化への取り組みや、さまざまな素材を適材適所で使い分けるマルチマテリアル化の動向と最新の接合技術について講演しました。

「日本のものづくりはITを利活用する方向に進むが、大切なのは本当に価値あるものをつくれるか。また、安全性の礎ともいえるユーザーからの信頼を、日本の自動車メーカーが維持できるかがカギ」と小林氏。

「日本のものづくりはITを利活用する方向に進むが、大切なのは本当に価値あるものをつくれるか。また、安全性の礎ともいえるユーザーからの信頼を、日本の自動車メーカーが維持できるかがカギ」と小林氏。

「マルチマテリアル化を実現するためには、各自動車メーカーと素材・部材メーカー、産業機械メーカーなど、あらゆる分野の企業が一体となって取り組むことが重要」と内田先生。

「マルチマテリアル化を実現するためには、各自動車メーカーと素材・部材メーカー、産業機械メーカーなど、あらゆる分野の企業が一体となって取り組むことが重要」と内田先生。

講演2.「美しい地球とクルマとの永続的な共存を目指して」
マツダ株式会社・商品戦略本部 技術企画部技術戦略グループ 主幹
神八 俊夫 氏

広島の自動車産業を牽引するマツダ株式会社。同社は環境への取り組みとして地球規模でのCO2削減に取組むという方針を打ち出しています。走行時だけでなく、燃料採掘から走行まで(WELL-TO-WHEEL)の広い視点でのCO2削減に取り組むこと、また、2030年においても市場の大多数を占めることが想定されている内燃機関自動車で引き続き、究極の高エネルギー効率を目指すことです。 神八氏には、こうした考え方の背景、またそれらを具現化した新エンジン「SKYACTIV-X」についてご講演いただきました。

講演3.「マツダデザインの歩み」
マツダ株式会社・デザイン本部 プロダクションデザインスタジオ エクステリアデザイングループ 主幹
澤井 要 氏

ロードスターが2016年の「ワールド・カー・デザイン・オブ・ザ・イヤー」を受賞するなど、世界の注目を集める魂動(KODO)デザイン。澤井氏からは「クルマは美しい道具であり、美しい道具は生活を豊かにする」というマツダの思想や、地上最速の野生動物、チーターの美しい動きをベースにした魂動デザインについて解説いただきました。またその実現のため、クルマづくりに携わるすべての人が部門を超えて一丸となる共創についてもご紹介いただきました。

走行時だけでなく、燃料採掘から走行まで(WELL-TO-WHEEL)の広い視点でのCO2削減に取組むマツダの考え方を紹介する神八氏。

走行時だけでなく、燃料採掘から走行まで(WELL-TO-WHEEL)の広い視点でのCO2削減に取組むマツダの考え方を紹介する神八氏。

魂動デザインの特徴である滑らかな曲線が生み出す陰影。「美しい陰影をつくるため、クレイモデラーはコンマ数ミリの調整を重ねる」という澤井氏の説明に、会場から感嘆の声が漏れました。

魂動デザインの特徴である滑らかな曲線が生み出す陰影。「美しい陰影をつくるため、クレイモデラーはコンマ数ミリの調整を重ねる」という澤井氏の説明に、会場から感嘆の声が漏れました。

日々の努力の積み重ねが、ブレイクスルーを生んでいる

第2部では、第1部の講演者に本学工学部知能機械工学科の八房智顯先生が加わり、内田先生がコーディネーターとなって、パネルディスカッションを実施。マツダの新エンジン「SKYACTIV-X」の最大の特徴であるSPCCI技術自動走行システムの方向性、未来のカーデザインなどについて、さまざまな意見が交わされました。

WELL-TO-WHEELの考え方でCO2排出量を比較したグラフ。最も排出量が少ないのはEV(電気自動車)ですが、マツダは次世代のエンジンでエネルギー効率をさらに向上させ、EV同等の排出量にすることを目指していると目標を明らかにしました。

WELL-TO-WHEELの考え方でCO2排出量を比較したグラフ。最も排出量が少ないのはEV(電気自動車)ですが、マツダは次世代のエンジンでエネルギー効率をさらに向上させ、EV同等の排出量にすることを目指していると目標を明らかにしました。

パネルディスカッションに参加した八房先生(写真中央)は、「自分が学生だった20年前から多くの人が圧縮着火の研究に取り組んでいたが、なかなか製品化できなかった。SKYACTIV-Xに採用されたSPCCIは、この難題に初めて答えた素晴らしい技術。マツダのみなさんの粘り強さに、技術者は誰もが感銘を受けている」と語ってくれました。

パネルディスカッションに参加した八房先生(写真中央)は、「自分が学生だった20年前から多くの人が圧縮着火の研究に取り組んでいたが、なかなか製品化できなかった。SKYACTIV-Xに採用されたSPCCIは、この難題に初めて答えた素晴らしい技術。マツダのみなさんの粘り強さに、技術者は誰もが感銘を受けている」と語ってくれました。

~出席者の声~
来春から広島工業大学に進学する金子さんは、大学からのダイレクトメールで今回のシンポジウムを知り、お父様と一緒に参加されました。
「もともと自動車に興味があったので来場しました。興味深いテーマばかりでしたが、なかでもマツダデザインの話は印象に残りました。春からの大学生活が楽しみです」と金子さん。お父様も「内田先生の講演がとても分かりやすかった。こういった機会はあまりないので、来て良かったです」と笑顔で答えてくださいました。
また、本学の在学生も多く参加していました。
「野生動物の動きをヒントに魂動デザインが誕生したという話はとても面白かったです」(池田さん:2年生)
「講演を通じ、SKYACTIV-Xの技術面を知ることができました」(後藤さん:2年生)

シンポジウムを終えた内田先生に、あらためてクルマづくりへの思いを伺いました。
「広島にはマツダ(株)を中心にさまざまな自動車関連企業が存在します。広島工業大学からも多くの卒業生が就職していて、たまに大学を訪ねてきてくれますが、その成長ぶりにはいつも驚かされます。おそらく、技術的な目標値や法律を含めたいろいろな規制、コスト...、そういったプレッシャーと戦いながら、品質を維持していくために日々努力しているのでしょう。その積み重ねが、彼らを大きく成長させたのだと思います。“ものづくり”は人を大きく育てるんです。私たち広島工業大学も、そこに何らかの支援ができればと考えています」

「クルマのかっこよさの陰には、計り知れないほどの努力があります。シンポジウムを通じて、そのことを地域のみなさんや若い人たちに伝えたかった」と語る内田先生。

「クルマのかっこよさの陰には、計り知れないほどの努力があります。シンポジウムを通じて、そのことを地域のみなさんや若い人たちに伝えたかった」と語る内田先生。

出席された方の中には熱心にメモを取る姿も見られ、終始活気にあふれていました。公開シンポジウムは、みなさんにとって新しい発見の時間になったようです。来年の公開シンポジウムもぜひご期待ください。

公開シンポジウム

知能機械工学科