医療の進化・充実に役立つ、画期的な医療機器を学生が開発

2018年01月16日

生体医工学科の4年生がそれぞれの卒業研究を学会で発表

広島工業大学各学科の4年生は、卒業研究の完成に向けラストスパートの真っ最中。そうした中、生体医工学科・渡邊ゼミの5人は、多くの臨床工学技士が参加する学会で、それぞれの研究テーマについて発表を行いました。卒業研究や学会発表を通じ、学生たちはどんな気付きを得たのでしょうか。

血管を押さえて止血する際の、適正な圧力をシミュレーションする

発表者:結城健太郎さん、浦重亮太さん
テーマ:「止血バンドに対応した適正止血圧シミュレータの研究・開発」

臨床工学技士は、透析治療を終えた患者さんの血管を押さえて止血します。しかしどの程度の圧力で押さえればいいか、という微妙な感覚を身につけるのは簡単ではありません。そこで止血の訓練を簡単に行えるよう、渡邊ゼミの先輩らは適正止血圧シミュレータの研究に取り組みました。この装置の改良を目指したのが結城さんと浦重さん。指ではなく、専用バンドを使用した止血も想定したシミュレータを開発しました。
「プログラミングが上手くいかなかったり、断線が起きたり、思い通りにいかないことばかり。それだけに研究をやり遂げた時は達成感で一杯でした」と浦重さん。
また結城さんは「血液透析は臨床工学技士の代表的な業務です。それを少しでもサポートできる装置の開発に携わったことで、血液透析への関心がさらに深まりました」と語ってくれました。

これが適正止血圧シミュレータ。丸い部分を指で押さえ、適正な圧力でなかったらアラームが鳴る仕組みです。

これが適正止血圧シミュレータ。丸い部分を指で押さえ、適正な圧力でなかったらアラームが鳴る仕組みです。

シミュレータを腕に装着し、止血バンドを締めた状態でも使用できるように改良。バンドでの適正な止血圧がシミュレーションできるようになりました。

シミュレータを腕に装着し、止血バンドを締めた状態でも使用できるように改良。バンドでの適正な止血圧がシミュレーションできるようになりました。

結城さん(岡山県立勝山高校)「医師や看護師と対等に議論しながら医療を進めるため、臨床工学技士は普段から勉強やトレーニングを積んでいます。私たちの装置がそういった臨床工学技士の訓練の役に立てば嬉しいですね」

結城さん(岡山県立勝山高校)「医師や看護師と対等に議論しながら医療を進めるため、臨床工学技士は普段から勉強やトレーニングを積んでいます。私たちの装置がそういった臨床工学技士の訓練の役に立てば嬉しいですね」

浦重さん(広島工業大学高校)「医療現場で医学と工学の両方の知識を持ち、こうした装置について詳しく扱えるのは、臨床工学技士だけ。その重要性を、研究の中で改めて実感しました」

浦重さん(広島工業大学高校)「医療現場で医学と工学の両方の知識を持ち、こうした装置について詳しく扱えるのは、臨床工学技士だけ。その重要性を、研究の中で改めて実感しました」

人工呼吸器の加温加湿器が正常に動いているかどうかチェックする

発表者:鎌倉花純さん、前田賢吾さん
テーマ:「加温加湿器の駆動状況を判別するシステムの研究・開発」

人工呼吸器には通常、加温加湿器が必要です。患者さんの体内に送り込む空気に適当な温度・湿度を加えないと、肺や気管支などを傷める恐れがあるからです。この加温加湿器が確実に動いているかどうかチェックする仕組みを作るのが、鎌倉さんと前田さんの取り組んだテーマです。
鎌倉さんは主に、測定数値の分析を担当しました。「想定外の数値が出る原因は、プログラム上のエラーだったり、パソコンと装置の通信の問題だったりと様々。それを一つひとつ解決することで、知識が深まりました」
前田さんが手掛けたのは、システムを機能させるためのプログラムです。「プログラムは3年生の授業で経験していましたが、悪戦苦闘の連続。完成したのは研究発表の締め切りの1週間前でした」
2人の言葉から、一生懸命研究に取り組んだ様子が伝わってきました。

加温加湿器監視システム。加温加湿器のスイッチの入れ忘れが発生したら、アラームが鳴って知らせます。同時にLEDランプも点灯するので、機器から離れた場所でも確認できます。

加温加湿器監視システム。加温加湿器のスイッチの入れ忘れが発生したら、アラームが鳴って知らせます。同時にLEDランプも点灯するので、機器から離れた場所でも確認できます。

前田さん(広島市立舟入高校)「以前は"センシング機能なんて理解できない"と思い込んでいましたが、研究を通じて苦手意識がなくなりました。"どうせムリ"と投げ出すのではなく、やってみれば理解できることがたくさんあると気づきました」

前田さん(広島市立舟入高校)「以前は"センシング機能なんて理解できない"と思い込んでいましたが、研究を通じて苦手意識がなくなりました。"どうせムリ"と投げ出すのではなく、やってみれば理解できることがたくさんあると気づきました」

鎌倉さん(呉市立呉高校)「学会に参加し、たくさんの人を前に発表できたことは貴重な経験でした。実習先の臨床工学技士のみなさんも"簡易な仕組みなので、臨床工学技士に余分な負担をかけない。それでいて装置の稼働を確実にチェックしてくれる点が優れている"と私たちの研究内容に興味を持ってくれました」

鎌倉さん(呉市立呉高校)「学会に参加し、たくさんの人を前に発表できたことは貴重な経験でした。実習先の臨床工学技士のみなさんも"簡易な仕組みなので、臨床工学技士に余分な負担をかけない。それでいて装置の稼働を確実にチェックしてくれる点が優れている"と私たちの研究内容に興味を持ってくれました」

治療用エプロンに組み込んだセンサで、歯科治療中も生体情報をモニタリング。

発表者:村戸優太さん
テーマ:「歯科領域における心拍数検出システムの研究・開発」

高血圧などの疾患を抱える人にとっては、出血や痛みをともなう虫歯治療にも注意が必要です。本来は虫歯治療中に心電計などを使って生体情報をモニタリングすればいいのですが、コストも手間もかかります。
そこで村戸さんは治療用エプロンの襟元に電極を組み込み、患者さんの首から心拍数を検出しようと考えました。通常の虫歯治療の妨げにならないよう、使用するパーツを最低限に抑えるなど、小型化を念頭に開発にあたったそうです。
「一番苦労したのはノイズの除去です。照明やエアコンはもちろん、ちょっとした首の動きでも発生するノイズを、専用の機械を使わずにどう抑えるか。プログラムで解消するのが大変でした」と村戸さん。学会での発表を終えた後、実習先で知り合った先輩の臨床工学技士から「歯科治療中の心拍測定にエプロンを利用するなんて、発想がユニーク」「あのシステムを自作できるなんて、すごいね」などと声をかけられ、大きな自信になった、とのことです。

簡易型の心拍数検出システム。2つの電極を首の左右にあて、その間に生じる電位差から心拍数を測定します。不整脈が発生するとアラームで警告する仕組みです。

簡易型の心拍数検出システム。2つの電極を首の左右にあて、その間に生じる電位差から心拍数を測定します。不整脈が発生するとアラームで警告する仕組みです。

治療用エプロンに3種類のセンサを組み込んで使用します。センサが3つ増えるだけで、後は通常の歯科治療が行えるため、歯科医にも患者さんにも負担感がありません。

治療用エプロンに3種類のセンサを組み込んで使用します。センサが3つ増えるだけで、後は通常の歯科治療が行えるため、歯科医にも患者さんにも負担感がありません。

村戸さん(広島県立広島工業高校)「ものづくりの経験がある臨床工学技士は、実はほとんどいません。そんな中、ものづくりにも携わる、という工業系大学ならではの経験が積めるのは、大きな強みだと感じます」

村戸さん(広島県立広島工業高校)「ものづくりの経験がある臨床工学技士は、実はほとんどいません。そんな中、ものづくりにも携わる、という工業系大学ならではの経験が積めるのは、大きな強みだと感じます」

研究成果を、学会という場で発表できたのは、自信になった

自分たちの力で研究を成し遂げ、その成果を学外に向けて発信した経験は大きな自信になったと5人は声をそろえます。彼らは今回の経験を糧に、臨床工学技士を目指す仲間と励ましあい、刺激しあいながら、次の目標である国家試験合格に向けてチャレンジを続けています。

卒業研究で数々の壁を乗り越えた経験が、彼らを大きく成長させています。

卒業研究で数々の壁を乗り越えた経験が、彼らを大きく成長させています。