先輩のサポートを受けながら協力して、一つの課題に向き合う。電子情報工学科の"アクティブラーニング"

2018年02月02日

課題も、実験も、自分一人ではなく班単位で動くのが基本

『基礎電気回路Ⅰ』は、電子情報工学科の1年生を対象とする必修科目です。この講義では、先輩のアドバイスを受けながら学生がみんなで協力し、自力で解決策を導き出すアクティブ・ラーニングが、様々なシーンで実践されています。

ここでは学生が約10名ずつ11の班に分かれ、各班ごとに電子情報工学科の先輩達がサポーターとしてつきます。いろんな課題を、班単位で考えるのが基本です。

担当の升井先生は講義開始から10分程度、前回の振り返りをした後、学生たちに課題を提示。その後は、あまり指示を出しません。学生自身が課題解決に向け動くように配慮しているのです。

担当の升井先生は講義開始から10分程度、前回の振り返りをした後、学生たちに課題を提示。その後は、あまり指示を出しません。学生自身が課題解決に向け動くように配慮しているのです。

各班に1人ずつついたサポート役の先輩が、ペンの進んでいない学生に積極的に声をかけます。10数人の先輩がボランティアで参加し、後輩の指導を行う講義は、他にあまり例がありません。

各班に1人ずつついたサポート役の先輩が、ペンの進んでいない学生に積極的に声をかけます。10数人の先輩がボランティアで参加し、後輩の指導を行う講義は、他にあまり例がありません。

全員が理解を深められるよう、協力し合う

升井先生は3問の復習問題を示しました。
班のメンバー全員が理解できるまで、みんなで協力し、わからないことは先輩にどんどん尋ねて」
先輩たちは、答えを教えるのではなく、考え方のヒントをアドバイスするよう心がけます。先輩に頼るばかりでなく、理解の進んでいる1年生が班内の他のメンバーをサポートするなど、全員が理解に到達するため自分はどうすべきか、それぞれ考えて行動するのです。

今回の問題は、電気回路の計算を行う際の基本である「複素数表示」や「フェーザー表示」を理解しているかどうか。これはオームの法則を使えばいいんだっけ?...など悩みながら、1年生は計算を進めます。

今回の問題は、電気回路の計算を行う際の基本である「複素数表示」や「フェーザー表示」を理解しているかどうか。これはオームの法則を使えばいいんだっけ?...など悩みながら、1年生は計算を進めます。

先輩は誰がどこに座るかという席順にも心を配っています。後輩の学生それぞれの理解度を考慮し、進んでいる者は他のメンバーのサポートに回るなど、班内の協力が円滑に進むようにしているのです。

先輩は誰がどこに座るかという席順にも心を配っています。後輩の学生それぞれの理解度を考慮し、進んでいる者は他のメンバーのサポートに回るなど、班内の協力が円滑に進むようにしているのです。

3年生の的確なアドバイスで、1年生が積極的に動き出す

いよいよ今日の本題。オシロスコープを使った電圧の測定です。
「起動させたら、まずテスト測定をやろう」
「測定をする人と、モニタの結果を読む人は手分けして」
1年生は、先輩の指示を聞きオシロスコープをセッティングします。手持ちぶさたにしている1年生を見かけると、すかさずアドバイス
「手の空いた人は、測定結果の予測値を計算して。予測値と測定値が合っているか確認する時に必要だから」
各班は徐々にオシロスコープに集中し始めます。そして先生からの「今日はここまで」という合図がある頃には、互いに声を交わし合いながら、測定結果を興味深そうに見つめていました。

電圧の時間変化を測定できるオシロスコープは、電気系エンジニアにとって必須アイテムの一つ。写真のオシロスコープは簡易版で、先輩達が組み立てました。

電圧の時間変化を測定できるオシロスコープは、電気系エンジニアにとって必須アイテムの一つ。写真のオシロスコープは簡易版で、先輩達が組み立てました。

ブレッドボード(電子回路を試作する時に使用する道具)に電子部品を差しこんで、測定用回路を組み立てます。精密機械のため、慎重に扱います。

ブレッドボード(電子回路を試作する時に使用する道具)に電子部品を差しこんで、測定用回路を組み立てます。精密機械のため、慎重に扱います。

話し合いながら、1つずつ手順を進めます。「オレ、回路を組み立てるよ」「じゃあ僕が測定する」「測定値はオレが読み上げるんで、誰かメモして」。測定が進むたび、1年生は自ら役割分担し始めました。

話し合いながら、1つずつ手順を進めます。「オレ、回路を組み立てるよ」「じゃあ僕が測定する」「測定値はオレが読み上げるんで、誰かメモして」。測定が進むたび、1年生は自ら役割分担し始めました。

「電圧3Vで抵抗が20オームだから、予測値は?」「電圧のアベレージは?」。先輩の働きかけがタイムリーに行われます。こうしたごく小さな、しかし具体的なアドバイスが、1年生の理解の劇的な向上を生むのです。

「電圧3Vで抵抗が20オームだから、予測値は?」「電圧のアベレージは?」。先輩の働きかけがタイムリーに行われます。こうしたごく小さな、しかし具体的なアドバイスが、1年生の理解の劇的な向上を生むのです。

メンバーで協調し、役割分担するという経験が、社会で役に立つ

講義に参加した1年生の坂田さんは「予測値を出して、測定値と比べてみましたが、ちゃんと合っていてホッとしました」と、測定がうまく行ったことで自信を感じていました。
また3年生の住吉さんは「サポート役が間違ったことを言うと1年生を戸惑わせてしまうので、自分が理解を深めておかないといけない。そういう意味では、1年生以上に勉強になっています」と語ってくれました。

升井先生は、「学生主体で課題を解決しようとすると、予定通りに事が運ばないこともあります。しかし、それがいいんです。課題にしても実験にしても、自分たちの班が他より遅れていると、やり方に問題はないか、もっと効率的な方法があるんじゃないかと考え始める。そうした気づきを得ることが大事です」
こうした取り組みは、学生が自ら問題を発見し、解決法を構築するPBL(Problem Based Learning)にもつながる、と先生は強調します。
「社会に出たら、同僚とチームを組んで一つのプロジェクトを遂行するケースが大半。メンバーとの協調や役割分担の重要性を1年生のうちから学んでおけば、意義は大きいと思います」

アクティブ・ラーニングなどの手法を取り入れた様々な経験によって、学生たちは着実に、社会で役立つ力を身につけています。

電子情報工学科・1年生の坂田実結さん(広島井口高校)。「オシロスコープは他の実験でも使ったことがあります。今回は先輩が自作したものだったので、細かなアドバイスをいただけました。その一つひとつが具体的で興味深かったし、自分も3年生になった時には、先輩のように装置を自作できるぐらいのスキルが身につけられるんだろうな、という期待も持てました。実際の装置を使った講義なので、操作の要領や計測時の注意ポイントが分かりやすかったです」

電子情報工学科・1年生の坂田実結さん(広島井口高校)。「オシロスコープは他の実験でも使ったことがあります。今回は先輩が自作したものだったので、細かなアドバイスをいただけました。その一つひとつが具体的で興味深かったし、自分も3年生になった時には、先輩のように装置を自作できるぐらいのスキルが身につけられるんだろうな、という期待も持てました。実際の装置を使った講義なので、操作の要領や計測時の注意ポイントが分かりやすかったです」

電子情報工学科・3年生の住吉佑太さん(呉市立呉高校)。「測定を開始した時、1年生だけでは、なかなか作業が進みませんでした。実は僕も1年の時は彼らと同様で、どう動けばいいのかわからなかったのです。その経験を参考にしながら、1年生が自発的に動き出せるようアドバイスしました。この講義を通じ、自分が1年生の時に得た経験や気づきを基に後輩を指導したことで、自分自身も新たな気づきを得ることができ、また、その場を動かすファシリテーターとしての能力も身につくと思いました」

電子情報工学科・3年生の住吉佑太さん(呉市立呉高校)。「測定を開始した時、1年生だけでは、なかなか作業が進みませんでした。実は僕も1年の時は彼らと同様で、どう動けばいいのかわからなかったのです。その経験を参考にしながら、1年生が自発的に動き出せるようアドバイスしました。この講義を通じ、自分が1年生の時に得た経験や気づきを基に後輩を指導したことで、自分自身も新たな気づきを得ることができ、また、その場を動かすファシリテーターとしての能力も身につくと思いました」

電子情報工学科・升井先生。「この『基礎電気回路Ⅰ』は、電子情報工学科で開設する全科目のベースとなるもの。そのためにも、アクティブ・ラーニングを取り入れ、学生に理解を深めさせたいと考えています。3年生が、自分の1年時の経験を基に後輩を指導する。それによって気づきを得た1年生が、自発的に実験を動かすようになる。その1年生が成長した時、再び後輩のアドバイザーとなる。単に知識を提供するだけではなく、学生が自ら取り組み、自らの能力を磨くといった、学生の力を引き出す教育を心がけています」

電子情報工学科・升井先生。「この『基礎電気回路Ⅰ』は、電子情報工学科で開設する全科目のベースとなるもの。そのためにも、アクティブ・ラーニングを取り入れ、学生に理解を深めさせたいと考えています。3年生が、自分の1年時の経験を基に後輩を指導する。それによって気づきを得た1年生が、自発的に実験を動かすようになる。その1年生が成長した時、再び後輩のアドバイザーとなる。単に知識を提供するだけではなく、学生が自ら取り組み、自らの能力を磨くといった、学生の力を引き出す教育を心がけています」