地球環境の今を、地域の皆様と共に考える 2018年度公開講座

2018年07月24日

広島工業大学では、地域の生涯学習を積極的に推進しています。その取り組みの一つとして、本学の研究や学びを一般の皆様にわかりやすく伝える公開講座を毎年開講しています。今年は「地球環境を探る−環境変化、自然災害を知り、環境共生を考える−」をテーマに5月26日、6月2日、6月9日の3日間、合計6講座を開講。本学の教員が地球環境に関する科学的知見や最新の研究成果を紹介しました。
ここでは6月9日に行われた公開講座の様子をレポートします。

会場となった「サテライトキャンパスひろしま」には、たくさんの受講者が集まりました。中には4講座以上を受講し、修了証を受け取る方も。

会場となった「サテライトキャンパスひろしま」には、たくさんの受講者が集まりました。中には4講座以上を受講し、修了証を受け取る方も。

生殖細胞の維持に大切なものとは?
前半の講座は、地球環境学科 三浦智恵美先生による「生殖細胞と地球環境ストレス」です。生命を次の世代へつなぎ、種を維持していくために大切な生殖細胞。この講座では、環境汚染がもたらす生殖細胞の機能低下問題を取り上げ、ニホンウナギの生殖細胞を使用した実験成果を発表しました。三浦先生は「水質汚染などの環境汚染によって体内に発生する活性酸素が生殖細胞にダメージを与えること」「生殖細胞が発達する段階によってそのダメージの大きさが異なること」を解説。また、生殖細胞の初期段階である精原細胞に活性酸素を除く酵素(SOD:スーパーオキシドジスムターゼ)が多いことに着目し、「生殖細胞の維持には、SODと亜鉛が重要である」と述べました。

比較図を用いて、活性酸素がニホンウナギに及ぼす影響を説明する三浦先生。

比較図を用いて、活性酸素がニホンウナギに及ぼす影響を説明する三浦先生。

精原細胞から精子に向かって、発達していくほどSODが低くなっていることをグラフでわかりやすく示しました。

精原細胞から精子に向かって、発達していくほどSODが低くなっていることをグラフでわかりやすく示しました。

グリーンインフラで、自然を「守る」から「活かす」へ
後半は地球環境学科 岡浩平先生による「大津波から蘇る海岸生態系の今」。2011年の大津波後における海浜植物の現状について解説しました。海浜植物とは、海に近い砂浜に生育する種子植物です。波や飛砂を軽減しマツなどの海岸林を守る役割を持ち、延いては人々の暮らしを守ることにつながっています。しかし、復旧工事や防潮堤の設置のために、生息領域が狭まりつつあり、このままでは絶滅の恐れがあるというのです。それを受けて、岡先生は「グリーンインフラ」を提唱します。これは、自然が持つ多様な機能を上手に活用して、安全・安心な国土形成を目指すという取り組みです。海岸の生態系を守ることで、海浜植物が海岸林を、海岸林が人々の暮らしを守るという自然のインフラができます。岡先生は「『人か?自然か?』という考えでは自然は守るもの。しかし『人も!自然も!』という考えなら自然は活かすものになる」と、環境保全と人々の安全・安心な暮らしを両立させていくことを訴えました。

日本の海岸に生息する植物は約280種類。そのうち海浜植物は約80種類だそう。

日本の海岸に生息する植物は約280種類。そのうち海浜植物は約80種類だそう。

復興・復旧工事により、海浜植物が生息できる領域が狭まっていることを現した図。

復興・復旧工事により、海浜植物が生息できる領域が狭まっていることを現した図。

高い意識を持って講座に臨む受講者たち
印象的だったのは、真剣にメモを取る受講者の姿が多く見受けられたことです。また、質疑応答の時間では、テーマ以外の地球環境に関することを質問する方もいました。一般の方にとっては大学の講座を聴講できる貴重な機会。一つでも多く知識を吸収しようとする熱意が伝わってきます。

2講座とも活発な質疑応答が行われました。三浦先生と岡先生は、どんな質問にも真剣に耳を傾け、返答していました。

2講座とも活発な質疑応答が行われました。三浦先生と岡先生は、どんな質問にも真剣に耳を傾け、返答していました。

講座終了後、直接先生のもとを訪れ質問する熱心な受講者も。

講座終了後、直接先生のもとを訪れ質問する熱心な受講者も。

受講者にお話を伺いました
本学OGの三浦綾菜さん(大学院工学研究科 環境学専攻卒)
「高校で生物を教えています。授業の参考にできればと思い受講しました。お話はとても興味深く、教科書にはない最新の学びがたくさんありました。今回得た知識を生徒に伝え、より楽しい授業を展開していきます」

「次は生徒にも受講を呼びかけます」と三浦さん。

「次は生徒にも受講を呼びかけます」と三浦さん。

その他、受講していた高校生からは「わかりやすい解説で地球環境への興味が湧いた。広工大のオープンキャンパスに参加して、もっといろんな話を聞いてみたい」と、感想をいただきました。

公開講座を終えた三浦先生と岡先生にお話を伺いました。
「専門で勉強されている方だけでなく、初めて地球環境問題に触れるという方も受講されているので『難しいことを、わかりやすく』を心がけて講座に臨みました。初めて学ぶ方には、生殖細胞や地球環境を考えてもらうきっかけに。専門の方にはさらに知識を深める機会になれば幸いです」

「受講者の質問から、興味関心がどこにあるのか。公開講座はニーズの把握にもなります」と三浦先生。

「受講者の質問から、興味関心がどこにあるのか。公開講座はニーズの把握にもなります」と三浦先生。

「今回お伝えしたかったのは、海浜植物のような小さな植物でも、防災・減災に大きく関わっているということです。一般の方にとっては馴染みが少ないと思いますが、講座をきっかけに海浜植物の見方が変わってくれたらうれしいですね」

「人と自然の調和を大切にすることが、よりよい未来につながります」と岡先生。

「人と自然の調和を大切にすることが、よりよい未来につながります」と岡先生。

公開講座には、学生からご年配の方まで幅広い年齢の方が受講されており、地球環境に対する関心の高さを感じました。広島工業大学は、今後も生涯学習の機会を設け、地域の皆様にとって役立つ学びを提供してまいります。