キャンパスベンチャーグランプリ中国大会で奨励賞を受賞

2019年03月12日

伝統工芸品の可能性を、ITで最大化する。

キャンパスで生まれたアイデアや技術を、新たなビジネスに活かそう。そんな趣旨のもと毎年開催されている【キャンパスベンチャーグランプリ】。
同グランプリに2018年、知的情報システム学科に在籍する3名の学生がチャレンジ。他大学の学生のアイデアも数多く集まる中国ブロック大会において、「奨励賞」を獲得しました。
彼らが目をつけたのは、全国に眠る"伝統工芸品"。「高い技術を誇る伝統工芸品の可能性を、ITの力で大きく広げよう」というものです。日本古来の文化的作品と最新のITをつなげようという発想の斬新さが、高く評価されました。

伝統工芸品を1週間、無料で貸し出し。

キャンパスベンチャーグランプリに挑んだ村上瑠香さん(知的情報システム学科・4年)、藤山翔太さん(同・3年)、森永笑子さん(大学院 情報システム科学専攻・1年)の3人が取り組んだテーマは、【知ってもらおう伝統工芸】。

(写真左より)村上瑠香さん、森永笑子さん、藤山翔太さん。奨励賞を受賞した時の賞状と目録と共に。

(写真左より)村上瑠香さん、森永笑子さん、藤山翔太さん。奨励賞を受賞した時の賞状と目録と共に。

村上さん「若い世代のSNSの利用率は50%以上。特にTwitterは70%を超える若者に利用されています。伝統工芸品の良さを体験した人に、SNS上で積極的に発信してもらえるような仕組みがあれば、その魅力が広がるはずです。しかし、SNS上で画像を見ているだけでは、なかなか良さは伝わらないかもしれません。そこで"無料でお試ししてもらう"というアイデアを思いつきました」

まずプラットフォームとなるアプリ【伝統便】を構築します。【伝統便】には、伝統工芸品の製作を行う事業者に参加してもらい、木工品や陶器、漆器など「無料で貸し出しても良い」アイテムの提供を募ります。
一方、興味のあるカスタマ(利用者)は【伝統便】に登録することで、提供されている工芸品を1週間、無料でレンタルできます。ただし条件が一つ。お試し品の感想を、SNS上で投稿してもらうのです。

1週間のお試しで気に入ったら、カスタマは商品代金を支払ってそのまま使い続けることもできます。さらに工芸品の試用だけではなく、工場での製作体験などの紹介も視野に入れています。現地を訪問する観光客が増えれば、多様な経済効果が期待できるでしょう。工芸品の魅力アップにつながる全ての活動を、【伝統便】というプラットフォームで支援するのです。

【伝統便】システムへの入口となるPCサイト(左)、スマホサイト(右)の試作版も作成。伝統工芸品の良さを実感できるよう落ち着いた雰囲気のデザインにしました。

【伝統便】システムへの入口となるPCサイト(左)、スマホサイト(右)の試作版も作成。伝統工芸品の良さを実感できるよう落ち着いた雰囲気のデザインにしました。

こちらはスマホサイトの試作版。カスタマが借りてみたいと思ったらすぐアクションを起こせる使いやすさを出すことに注力しました。

こちらはスマホサイトの試作版。カスタマが借りてみたいと思ったらすぐアクションを起こせる使いやすさを出すことに注力しました。

3年の藤山さんは先輩のアドバイスを受けながら、伝統工芸品に関わる情報を収集。競合サイトではどういったサービスを実施しているかなど様々な点を調べ、自分たちのプランを練り上げるのに役立てました。

3年の藤山さんは先輩のアドバイスを受けながら、伝統工芸品に関わる情報を収集。競合サイトではどういったサービスを実施しているかなど様々な点を調べ、自分たちのプランを練り上げるのに役立てました。

SNSを活用し、伝統工芸品の良さをPR。

若い3人が"伝統工芸品"を取り上げたのはなぜでしょうか。

森永さん「私は大学で茶道部に所属しています。茶会では茶器や道具を説明するのが常で、伝統工芸品が身近な存在でした。でも、茶道を知らない友人は、陶器や漆器について全く知りません。優れた工芸品がたくさんあるのに、知られずに埋もれていくのはもったいない、と思ったのです」

藤山さん「僕も小さい頃、茶道をやっていました。時には高価な伝統工芸品を使わせてもらったこともあります。でもその伝統工芸品も、市場縮小とか後継者不足といった厳しい状況に置かれていることを知り、何かできないかと考えました」

森永笑子さん(大学院 情報システム科学専攻・1年)。「"伝統工芸品を購入したい"と考える人は、20代~60代の4割以上に及ぶという調査があります。魅力に触れることのできる場があれば、動く人は多いでしょう」

森永笑子さん(大学院 情報システム科学専攻・1年)。「"伝統工芸品を購入したい"と考える人は、20代~60代の4割以上に及ぶという調査があります。魅力に触れることのできる場があれば、動く人は多いでしょう」

藤山翔太さん(知的情報システム学科・3年)。「海外からの観光客が増えている状況なので、日本の伝統工芸品に興味を持つ人はもっと増えるんじゃないかと思います」

藤山翔太さん(知的情報システム学科・3年)。「海外からの観光客が増えている状況なので、日本の伝統工芸品に興味を持つ人はもっと増えるんじゃないかと思います」

匠の技が生み出す、世界に誇れる伝統工芸品。しかし多くの人は伝統工芸品の存在すら知りません。知ってもらう機会があれば、素晴らしさに感銘を覚える人も増えるのではないでしょうか。そして「購入したい」「伝統工芸品の工場を見学し、製造を体験したい」といった声も大きくなるはずです。
知ってもらう機会を提供し、興味を持ってもらう。そのため3人は、SNSに活路を見出したのです。

村上さん「陶器や漆器など日常生活で使える工芸品はもちろんですが、そうじゃないものも取り込めるようにしたいと考えました。例えば宮島のしゃもじとか。そうすればカスタマの選択肢が広がりますから。"伝統品なので使い方が決まっているんじゃないか"と考える人もいるかもしれませんが、あまり"こう使わないといけない"というルールにこだわらないようにしよう、とも思いました。提供する側が想像もしない使い方をしてもらってもいい。むしろその方が、ネット上でバズって(話題になって)、知名度を高めることになるかもしれません」

村上瑠香さん(知的情報システム学科・4年)。「『地域課題解決型実習』という授業で地域の特産品を調べるうちに【宮島細工】という伝統工芸品の存在を知り、もっと多くの人に知らせたいと思いました」

村上瑠香さん(知的情報システム学科・4年)。「『地域課題解決型実習』という授業で地域の特産品を調べるうちに【宮島細工】という伝統工芸品の存在を知り、もっと多くの人に知らせたいと思いました」

3人の研究室には、宮島のお土産の定番であるしゃもじがありました。実はこのしゃもじも、「宮島細工」と呼ばれる伝統工芸品の一つです。

3人の研究室には、宮島のお土産の定番であるしゃもじがありました。実はこのしゃもじも、「宮島細工」と呼ばれる伝統工芸品の一つです。

大きな経験と刺激を生んだチャレンジとなった。

アイデアはすんなり出たものの、ビジネスモデルとして構築するまでにはいろんな苦労がありました。特に、もう少しでプランが形になりそう、という段階で、大手企業がよく似たサイトを運営していることが発覚。大手が既に始めているサービスをベンチャーが追従しても意味がないと、プランを最初から練り直すことになった時は、目が回りそうだったと3人は苦笑します。そうした努力を重ねたおかげで、他のどの会社もやっていない、「工芸品の無料お試し✕SNSで発信」という独自性のある分野にたどり着けたのです。

森永さん「工芸品をお試しする段階では、まだビジネスとしては成立していない。SNSで発信され、宣伝効果が生まれ、工芸品に興味を持つ人が増えて購入、というところまで来てようやく利益が生まれます。そこまで持っていくためにはもっと工夫が必要だな、と感じました。貸し出した工芸品が壊れた場合の補償をどうするか、など未整備の課題を具体的に詰めていきたいですね」

村上さん「プレゼンのため、40秒くらいの動画も作ったんです。動画制作は初めてでしたが、やはりその方が、インパクトがあるので。ところがプレゼン当日、肝心の動画が動かなかったんです。アイデアに自信があっても、プレゼンで伝わらないと意味がありません。事前準備の大事さを痛感しました」

藤山さん「当日は他大学のプレゼンも聞くことができました。グランプリを獲得したチームの発表のレベルの高さにはビックリしましたね。アイデアをそこまで高めていける人が、同じ学生の中にいるということに、刺激を受けましたね。僕らが彼らにどこまで迫れるかわかりませんが、今後もチャレンジしたいです」

プレゼン前に、作成した資料を何度も見返し、ストーリーをチェックしたと語る3人。「ビジネスに向け課題は多いけど、ITによって伝統工芸品の価値はさらに広がる、という手応えを得たのは、大きな収穫です」

プレゼン前に、作成した資料を何度も見返し、ストーリーをチェックしたと語る3人。「ビジネスに向け課題は多いけど、ITによって伝統工芸品の価値はさらに広がる、という手応えを得たのは、大きな収穫です」

広島工業大学は廿日市商工会議所と、地場産業の振興や地域ブランド・特産品の支援について包括的に連携する協定を結んでいます。その一環として、宮島の伝統工芸品である「宮島細工」のPRに【伝統便】が活用できないか、という検討も始まりました。

次年度には彼らか、もしくは彼らの志を継ぐチームのチャレンジが見られるはず。その新たなチャレンジに、今回の3人の経験が大いに活かされるでしょう。