2019年度前期 授業公開ウィークの報告

2019年07月26日

広島工業大学では、FD活動の一環として、教員が相互に授業方法・内容の改善を図ることを目的に、前後期にそれぞれ2週間の授業公開ウィークを設け、授業参観、授業研究会、授業コンサルティングの3つに取り組んでいます。2019年度前期は、6月24日(月)~7月6日(土)に授業公開ウィークを実施しました。今回は、初めての試みとして、授業参観に学生も参加し、学生目線からの意見も授業改善に活かしていくことになりました。その中で、6月28日(金)に電気システム工学科の久保川淳司先生の「電気応用」において行われた授業参観と授業研究会の様子を紹介します。

理解をつなぐ小テスト

授業参観は、各教員が関心のある授業を参観するものです。今回、授業参観の対象科目の一つに、6月28日(金)の2コマ目(10:45~12:15)、久保川先生の「電気応用」が選定されました。「電気応用」は、電気システム工学科の3年生を対象とする選択科目です。1年次から学んできた知識や理論を組み合わせて総合的に思考することが求められます。大きく照明、電熱応用、電動力応用、電気化学の4分野の電気に関する産業応用技術を学びます。また、電気システム工学科は特徴として電気主任技術者の資格取得が可能になることが挙げられますが、「電気応用」はそのための所定科目に位置づけられ、エネルギー管理士の資格にも対応した内容となっており、学科の3年生の8割以上が選択しています。
授業開始前には、教室の後方に並べられた椅子が参観に訪れた教職員で埋まっていきました。授業が始まると、まず久保川先生から学生全員に小テストが配付されました。この授業は毎回、前回の授業内容を反映した小テストから始まります。前回の授業は電動力応用の巻上機がテーマでした。小テストの解答時間は15分間。終了と同時に学生同士でテスト用紙を交換するとともに、全員に今回の授業で使うプリントが配付されました。プリントには、プロジェクターでスクリーンに投影されるスライドが全て掲載され、各スライドの横に記入スペースが設けられており、そのまま授業ノートとして活用できます。スライドとプリントを用いて最初に行われたのは、小テストの解説です。学生は解説を聞きながら、用紙を交換した相手のテストを採点。用紙には解答者の学生番号、名前と併せて採点者の学生番号も記入され、回収されました。

小テストに取り組む学生たち

小テストに取り組む学生たち

スライドの内容は手元のプリントでも確認できる

スライドの内容は手元のプリントでも確認できる

参観する教員も真剣な眼差しを注ぐ

参観する教員も真剣な眼差しを注ぐ

スライドとプリント、さらに動画も

12回目となる今回の授業のテーマは、前回と同じ電動力応用の巻上機です。前回は巻上機の基本と、その応用としてクレーンについて学びましたが、今回の題材はエレベータ。最初にロープ式、油圧式という2つのタイプのエレベータの基本的な仕組みや、低速、中速、高速、超高速という速度による区分について、日本や中国にあるエレベータの具体例も挙げながら解説されました。また、ロープ式、油圧式のエレベータの解説では動画も用いられました。動画が流れると学生は一斉にスクリーンに注目し、興味深い表情で視聴していました。
次に、エレベータの機能や性能を考えるうえで基本となる運転曲線と所要動力の求め方についての解説がありました。続いて、運転曲線や所要動力の知識・理論を用いて解く例題の解説がありました。例題は、電気主任技術者やエネルギー管理士の過去の試験で出題されたものです。例題の解説があるのは、資格取得に対応したこの授業ならではの特徴でもあります。解説には、理解を助けるグラフや図が用いられていました。受講している学生のほとんどは、電気主任技術者やエネルギー管理士の資格を取得し、電気の応用分野の仕事に就くことを希望しています。その希望にこの授業は直結しており、解説に真剣な眼差しを向ける学生の様子からは目的意識の高さがうかがえました。

動画への学生の注目度は高い

動画への学生の注目度は高い

グラフを板書しながらポイントを解説

グラフを板書しながらポイントを解説

工夫と熱意に満ちた授業

最後に、基本的な仕組みはエレベータと同様であるエスカレータについて捕捉的に説明があり、残りの10分ほどは各自で課題に取り組む時間にあてられました。課題は、今回の授業内容を反映した問題です。次回の小テストの一部は、ここから問題文中の数値などを変えて出題されます。
小テストに始まり、資格試験の例題の解説があり、課題が出され、その課題が次の小テストにつながるという流れを通して、学生の学習を促し続ける仕組みが工夫されていました。解説は全体を通してスライドとプリントに沿ってスムーズに進められ、要所では動画や図、グラフなどを用いてポイントが強調され、学生はきちんと理解しながらしっかりと授業についていけているようでした。行き届いた準備や配慮が丁寧で分かりやすい指導を可能にし、そこから伝わってくる久保川先生の誠実な熱意が学生の学習意欲を高める要因になっていると感じさせる授業でした。

学生の間を歩いて講義する久保川先生

学生の間を歩いて講義する久保川先生

活発な意見交換でノウハウを共有

授業参観後、久保川先生と参観した教員が意見を交換する授業研究会が行われました。まず、授業の最初に行われた小テストについて、前回の授業の復習になること、学生同士での採点によって間違った箇所をすぐに確認できることが良いとの意見が参観した教員から出されました。その意見を受けて、久保川先生は小テストの結果を成績評価に3割反映させることで学生の取り組み姿勢や学習を促していることを教えてくださいました。そして、授業終了時に出される課題から次回の小テストの問題が出題され、さらに小テストに類似した問題を定期テストに出題することも付け加えられました。これに対し、授業→課題→小テスト→定期テストという仕組みにより学習がつながり、学生の理解が深まる点が良いという感想も出ました。
学生の学習意欲を引き出し、学習を促すことは、すべての教員にとっての課題と言えます。それだけに久保川先生が授業で実践している仕組みについての関心は高く、活発なやりとりを通してノウハウが共有されていました。

場所をリーフガーデンゲストルームに移して研究会を開始

場所をリーフガーデンゲストルームに移して研究会を開始

授業改善への意欲が細部にまで

授業の進行については、動画を使用したことが非常に良かったという意見が多く出ました。久保川先生は、学生の興味を惹き、理解を助ける工夫の一つとして、資料に画像や図を多く用いているとのことでした。特に動画は、授業に変化をつけるためのツールとしても参観した教員の注目を集めたようです。
「私語がなかった」「学生が前を向いて集中していた」という授業に対する学生の真剣な姿勢についての感想も多く聞かれました。これらの感想に対して久保川先生は、教壇の上からだけでなく教室の中を歩いたり後方に立ったりして、気になる学生がいれば声をかけるなど、常に学生の様子を見ながら授業を進行することが要因の一つではないかと述べられました。
意見交換は、この他、講義の話し方や抑揚のつけ方、分かりやすい板書の書き方、資料の作成法など、授業の細部にわたってさまざまなテーマが語り合われました。教員の授業に対する思い入れの強さ、改善への意欲の高さがひしひしと伝わってくる研究会でした。

深まる議論から新たな気づきが生まれる

深まる議論から新たな気づきが生まれる

<参加した教員の声>

電気システム工学科 久保川 淳司 教授

電気システム工学科
久保川 淳司 教授

これまで授業公開ウィークには参観する側で参加してきました。私の授業では最初に小テストを行っていますが、それを始めたのも授業参観で見たのがきっかけです。学習を促す工夫として、学生同士で採点することを付加して始めました。私たち教員の願いは、学生が社会で役立つ知識や能力を身につけること。そのためには、授業でとりあげられるテーマを一つひとつしっかり理解して、自分のものにしていくことが必要です。小テストや課題の目的もそこにあります。学びを授業時間だけに終わらせず、自主学習の機会をあたえるために行っています。資格取得に対応した「電気応用」では、例題の解説にも力を入れています。過去に資格試験で出題された問題の中でも特に重要で、解き方のポイントをおさえておく必要があるものを中心にとりあげています。解説では、関心を高め理解を促すために画像や動画もできるだけ用いています。授業をする側で参加したのは今回が初めてでしたが、授業参観と授業研究会を通して、自分では気づかなかった貴重な意見をいただくことができました。今後に活かし、よりよい授業を目指していきます。

<参加した学生の声>
食品生命科学科
窪田 悠伽

ゼミの先生に勧められて、「電気応用」の授業参観に参加しました。他学科の授業ですが、生活に身近なエレベータが題材だったので興味が湧きました。スライドとプリントは説明を理解するのにとても役立ちました。エレベータの仕組みを動画で見ることで具体的にイメージでき、理解も深まりました。同じ工業系でも学科によってさまざまな異なる視点から学んでいることを知り、物事を多角的に考えることの重要性に改めて気づく機会にもなりました。今回の大学の取組みは、授業改善に学生目線の意見を活かすことが目的とのこと。分かりやすい授業はこのような努力に支えられていることを実感し、残された学生生活の中で授業という貴重な時間を大切にしていきたいという思いが強まりました。

全体のまとめ

今回の授業参観、授業研究会、そして参加した教員と学生の声からは、授業改善が授業を提供する側だけでなく、受ける側の視点も取り入れた双方向なかたちへとシフトし、より全学的な取組みへと発展している様子がうかがえました。来年度の新カリキュラムのスタートに向け、そこで実際に行われる授業の質をより高めるための準備も必要です。授業公開ウィークによる教員相互の、そして学生も含めた取組みは、その準備の有効な機会として活用されているようです。