2019年度 第1回全学FDを開催

2019年09月26日

2019年8月5日、「三宅の森Nexus21」603教室にて第1回全学FDを開催しました。第1部では「アセスメント・ポリシーの検証項目」についての説明が行われ、引き続いて第2部では広島大学高等教育研究開発センターの村澤昌崇准教授をお招きして「アセスメントポリシー その背景・現状・課題と展望」をテーマに講演を行っていただきました。

開会挨拶

本学では教職員の皆さんの協力を得ながら、ディプロマ・ポリシーに始まりアドミッション・ポリシー、カリキュラム・ポリシーと3つのポリシーをまとめ、公表してきました。そして今、4つ目のポリシーと言われるアセスメント・ポリシーが課題として取り上げられるようになりました。現在、まだ他大学でも目立った先行事例を聞くことはありませんが、いずれは必須となると考えます。本学としては、先行して取り組みを進めたいところです。アセスメント・ポリシーと言いましても、まだまだ大学によって、人によって捉え方に差がある状況です。そこで、本日の全学FDで、本学全体での意識統一を図り、一致団結して取組んでいけるよう、知識を共有していきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

長坂康史 学長

第1部

総論
前原俊信 副学長

第1部の冒頭で、まずは前原副学長から本学のアセスメント・ポリシーの総論について説明が行われました。広島工業大学では、「ディプロマ」「カリキュラム」「アドミッション」の3つのポリシーに基づいて、「機関レベル」「教育課程レベル」「科目レベル」の3段階で学修成果達成状況を検証すること。その検証結果によって、ディプロマ・ポリシーで定める能力を有する学生を輩出できるように、教育の改善を組織的・継続的に行うこと。以上が総論として定められています。前原副学長からは、この総論について改めて概要説明があり、続いて行われる検証項目の説明への導入となりました。

総論を説明する前原副学長

アセスメント・ポリシーの検証項目
大学運営会議、HIT教育推進部会
アセスメント検討・運用WG リーダー
宗澤良臣 教授

次に、アセスメント検討・運用WGリーダーを務める宗澤教授が登壇し、プロジェクターを使いながらより詳細な説明が行われました。まずは一般的なPDCAサイクルに倣ってアセスメント・ポリシーの位置付けがなされました。それによると「Plan」はアドミッション・カリキュラム・ディプロマの3ポリシー、「Do」は講義や学生指導、そしてアセスメント・ポリシーは「Check」に必要なものであり、その検証結果によって「Act」=改善の程度を検討する、というのが1サイクル。これを積み重ねることでスパイラルアップを図り、より高い目標に到達する、という分かりやすい説明でした。次に3ポリシーと「機関」「教育課程」「科目」の3レベルの相対表を用いて具体的な検証項目の紹介があり、それぞれの現況について実際のデータを一例として示しながら問題点や要検討点についても説明が行われました。そしてこれら検証項目のデータを必要な時に一覧できるシステムを、今後アセスメント検討・運用WGが中心になって整備していく旨が発表されました。

プロジェクターを使用して説明する宗澤教授

タブレットでスライドを見る教職員

第2部

アセスメント・ポリシー その背景・現状・課題と展望
広島大学高等教育研究開発センター
村澤昌崇 准教授

第2部では広島大学高等教育研究開発センターの村澤先生による講演が行われました。村澤先生は高等教育論や教育社会学がご専門で、数量データを使った計量分析を手がけておられます。今回は、その専門的観点からアセスメント・ポリシー全般についての深い知見を披露していただき、興味深い講演となりました。

熱弁をふるう講師の村澤先生

アセスメント・ポリシーとは/その背景

まずアセスメント・ポリシーの最大の意味は、大学がやっていることを内外に明確に説明することであると定義されました。入学から卒業まで責任を持って学生を管理し、測定し、評価を行う。ここまでは従来通りであるが、それを可視化し説明責任を果たすことが今後は重要だということです。その理由は、「学生の質の低下」「企業内教育の縮小・廃止」「学生確保の困難化」「大学教員の研究志向性の高さ」などの社会的背景が複雑に絡み合い、大学として各方面に明確に示すものが必要とされるようになってきたからだと指摘されました。

ほぼ席の埋まった会場

大学に求められる対応

村澤先生によると、アセスメント・ポリシーを作成する上で大学に求められる対応は大きく3つに分けて整理されます。1つ目は学修成果の測定における評価基準の明確化。これは大学が学生を評価した根拠になるわけですから、適切に明示する必要があります。2つ目はその明確化を「大学レベル」「カリキュラムレベル」「授業レベル」のそれぞれで行うこと。3つめは評価に関して、一教員の裁量のみが大きくなり過ぎないように大学が一定の管理をすること。さらに、アセスメント・ポリシーを作り上げる上で大学が注意するべきは対外的な部分である、ということが特に強調されていました。この対外的、というのは学生であり、保護者であり、企業であり、社会全般であるわけですが、それぞれの関心や要望を意識しながらポリシーを作ることは、可視化や説明責任という意味を考えると必要不可欠な要素であることを関連付けて説明されていました。

熱心に耳を傾ける教職員

アセスメント・ポリシーにまつわる課題

アセスメント・ポリシーにまつわる課題として最大のものは、成績評価に対する学生からの疑問であるというのが村澤先生の考えです。その理由は、成績評価は教員の裁量であり、しかもその方法が多様であるから、というもの。実際、他大学を見ても、この疑問に明確な回答を用意している例はほとんどないそうです。必要なのは、評価の根拠を可能な限り客観的に明確化・可視化することですが、これには多くのハードルがあり、簡単に答えの出るものではありません。この点に関して村澤副センター長から出された一つのヒントが大学版の通信簿とホームルーム制です。日頃から教員と学生が密に接触し、教員はしっかりと学生を観察して学生ごとに詳述書を作成することで評価根拠の一つとする。学生との距離を縮めることで評価に対する疑念を減らし、同時に教員を研究志向から教育志向にも促すという意味でも、示唆に富んだアイデアの提示でした。他にも管理職による教員への定期的なヒアリング、GPA活用の可能性なども提案されましたが、目指すのはいずれも合意形成を目的とした説得性のある根拠を常に用意しておくことの必要性に帰着するものでした。

講師に質問をする教職員

その後、質疑応答に移り、参加した教職員からの質問に対して村澤先生から丁寧な返答をいただきました。アセスメント・ポリシー、中でも評価や検証というテーマになるとデータ的な話題が中心になりがちですが、今回の講演ではデータのみならず教員と学生、あるいは大学と教員といった相互の関係性に踏み込んだ話題もあり、教職員にとっては別の側面からもアセスメント・ポリシーについて考える有意義な機会となったのではないでしょうか。