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電気システム工学科

小西 善彦

教員紹介

小西 善彦KONISHI Yoshihiko

工学部 電気システム工学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○アンテナ工学
○電波工学
○電波応用工学(電波センサ,小型無線機器 など)
【担当科目】
基礎電磁気学Ⅱ 、 基礎電磁気学演習B 、 電気数学演習 、 電磁波工学 、 高周波工学 、 電気ものづくり基礎実習 、 電気基礎実験A(PBL) 、 電気システム実験D
【研究テーマ】
1.誘電体導波路アンテナの研究開発
2.広周波数帯域小形アンテナの研究開発
【ひとこと】

⼤学時代は、⾼校時代までとは⽐べものにならないくらい多くのいろいろな⼈と出会い、⾃分の存在を⼤きく広げることができる時代です。授業、クラブ活動などの課外活動、そして、アルバイトなど、⾃分の可能性を⼤いに試してください。大学生は「自己努力」です。

研究紹介

小西 善彦KONISHI Yoshihiko

工学部 電気システム工学科 教授

誘電体アンテナの進歩で、あらゆる機器が
ネットワークへつながるようになる。
PROLOGUE

今や誰もが当たり前のように、無線LANを使って、スマホからネットへアクセスしています。でも一部の新幹線内や地下鉄など、まだまだ無線LANがつながらない場所はあります。またスペースが限られていて無線LAN用アンテナの置き場所に苦労したり、アンテナをむき出しのまま設置してしまって空間のイメージに合わなかったり…など、課題は少なくありません。
こうした悩みを解決する、より使い勝手が良く、しかも低コストなアンテナについての研究を進めているのが小西先生です。

形状によって電波の強度や発する方角を変化させられるアンテナ。

右の写真をご覧ください。銀色の金属の上に乗った白くて平べったいプラスチック。これは、無線LANのアクセスポイントに用いられるアンテナなのです。プラスチック部分は、私のゼミの学生が電磁界シミュレータで設計し、3Dプリンタを用いて製作しました。こんなシンプルな仕組みですが、もちろん電波が出ます。
私のゼミでは、こうしたプラスチックなどのごく⼀般的に入手可能な誘電体を⽤いた「誘電体導波路アンテナ」の研究を⾏っています。ポイントは、左右に細長い直方体や、Y字を2つくっつけたようなプラスチック部分です。ここの形状を変えると、それに応じて電波の出る角度や、強さが変わるんです。左右に細長いアンテナは、左右方向に強い電波を飛ばせます。Y字形はちょっと変わり者で、Y字の中心からプラスマイナス20度の、扇型の範囲に向かって電波を飛ばします。
この特徴を利用すれば、トンネルだろうが地下だろうが、どこでも無駄なく効率的に無線LAN用アンテナで網羅できるわけです。特殊な材料は使っていないので、コストも抑えられます。

金属板に貼り付けた白い直方体はプラスチック。シンプルな仕組みですが、
誘電体アンテナとして機能します。

プラスチックなのでコストが安く使い勝手がとてもいい。

例えば、トンネルに無線LANアンテナを設置する場合。トンネルは基本的に⼀直線で、周囲は壁に囲まれています。壁に向かって電波を発信しても無駄なので、トンネルに平⾏して強い電波を出せばいい。こんな場合、細長い直方体タイプのアンテナが有効に機能します。一方向に強い電波が出るので、長いトンネルでも最小限の数でカバーできるわけです。
アンテナを商業施設内に設置する場合、空間の雰囲気を邪魔しないことも大事です。でも私たちの開発するアンテナはどれも厚さ10mm程度。スマホに搭載できるほど小型化するのは難しいですが、施設の壁に取り付けても目立つことはないでしょう。Y字形状のアンテナなら、むしろちょっとしたインテリアとして利用することも考えられます。白のプラスチックに色を塗れば、おしゃれな壁や天井になるかもしれません。
形状を変えることで、電波を無駄遣いせず適切に利用できるようになる。コストが安いので数を増やすのも容易だし、プラスチックですから感電の心配もなし。使い勝手がとてもいいんです。

IoT時代のベース技術として貢献できる可能性が高い。

最近はあらゆるものが無線LANのアクセスポイントにつながり、ネットワークへアクセスしています。スマホなどは言うに及ばず、エアコンなど家電でも無線LANが利用されています。こういった、モノがネットワークにつながることにより利便性や効率性を向上させるIoTの流れは、ますます加速するでしょう。
アンテナは、IoTを成立させる重要なベース技術の一つです。あらゆるモノを無線でつなげるには、それぞれにアンテナが必要となります。そのアンテナは、できるだけ目立たない形の方がいい。目立つとモノの機能性を損ねてしまう場合があるし、工場内だと作業者の邪魔になってもいけません。そういう意味でも、平べったく、邪魔にならず、形状を自在に変化させられる私たちのアンテナは役に立つのではないかと思います。
ゼミの中には「LED電灯と誘電体導波路アンテナを一体化させてはどうか?」というアイデアで研究する学生もいます。電灯の中のアンテナが一般的になれば、わざわざ別にアンテナを用意する必要はなくなるかもしれません。
本学科には、無線機器実験用の電波暗室を所有しています。こうした設備を大学で持っているのは、県内は本学だけ。全国でも10ヶ所程度でしょう。充実した研究環境を利用し、ユニークなアンテナを開発していきたいですね。

こちらはY字型のアンテナ。Y字の中心からプラスマイナス20°の、角度をつけた範囲に電波を飛ばすことが可能。プラスチックなので、
3Dプリンタで製作できます。
無線機器の実験に使用する電波暗室。このような設備を持つ大学は、全国でもわずかです。