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電気システム工学科

丸野 茂光

教員紹介

丸野 茂光MARUNO Shigemitsu

工学部 電気システム工学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○表面電子物性
【担当科目】
基礎電磁気学 、 電子物性
【研究テーマ】
1.有機半導体デバイスの開発
【ひとこと】

学生の間に専門分野だけでなく、社会科学や文学などに 対しても知識を広めてください。

研究紹介

丸野 茂光MARUNO Shigemitsu

工学部 電気システム工学科 教授

将来、ボディー全体に太陽電池を「印刷」した
クルマが誕生するかも?
PROLOGUE

自然エネルギー活用の重要性が再認識されて以降、猛烈な勢いで普及が進む太陽電池。しかし、太陽電池にはまだまだ発展の余地があります。丸野先生が取り組む『有機薄膜太陽電池』もその一つ。軽くて薄いこの太陽電池は、紙やプラスチックに印刷して使えるのが大きな特徴。それどころか、電気自動車のボディー全てにこの電池を張り巡らせ、電池でクルマを動かす…なんてことができるようになるかも。多くの可能性を持つ有機薄膜太陽電池をもっとレベルアップさせようと、丸野先生は研究を続けています。

折り曲げ自由。厚さが1000万分の1mmしかない、軽量の太陽電池

最近、住宅の屋根に設置された太陽光パネルを目にする機会も増えましたね。あれらの大半は、シリコンを利用した太陽電池です。シリコン系が選ばれるのは、光エネルギーを電気に変換する効率が良いからで、住宅用太陽光パネルの変換効率は15~20%と言われます。
これに対し、私が研究しているのは「有機薄膜太陽電池」。その名の通り炭素(C)・水素(H)・酸素(O)で構成される有機材料の薄い膜を用いるのです。最大の特徴は、わずか0.1μm(=1000万分の1m)と薄いことです。シリコン系にも厚み1μmの薄膜シリコンと呼ばれるものがありますが、有機薄膜太陽電池はその10分の1しかありません。おかげで軽量であり、折り曲げも自由。入手の容易な有機材料が素材であり、加えて印刷機などで大量製造できるため、コストも低く抑えられます。クルマのボディーに印刷すれば、外装を有機薄膜太陽電池で覆われた電気自動車が誕生…も不可能ではありません。
そんな有機薄膜太陽電池の大きな課題が、変換効率の向上です。当研究室ではこの変換効率を上げるために、金を始めとする様々な金属ナノ粒子の利用を考えています。

金ナノ粒子を利用することで、変換効率は20~30%アップ

金ナノ粒子は、実は古くから利用されていました。教会でお馴染みの、ステンドグラスの鮮やかな赤の発色も、金ナノ粒子の働きによるものです。
この金ナノ粒子を、有機薄膜の中に埋め込みます。すると金ナノ粒子の表面近くで、表面プラズモン共鳴という現象が起こります。ナノレベルの微細な領域中では金属電子と光が相互作用し、常識を覆す高い光出力をもたらすのです。平たく言うと、光の吸収効率が上がるわけですね。
金ナノ粒子によって、変換効率は20~30%上がるとわかっています。しかし、この程度では十分とは言えません。他の金属ナノ粒子も視野に入れながら、どう活用すれば変換効率を向上させられるか、あるいは新たな機能を引き出せるのか、知見を重ねていきたいと思います。
有機薄膜太陽電池は有機材料を利用した「受光デバイス」ですが、並行して有機材料を利用した「発光デバイス」の研究も進めています。有機EL照明・ディスプレイといった発光デバイスはご存知の人も多いのではないでしょうか。ここで発光効率を高めるため、私は有機薄膜太陽電池と同じく、ナノ粒子を組み合わせようと考えています。

表面プラズモン共鳴現象を測定するためのATR測定装置。手作りの精密機器です

金属も半導体も、ナノオーダーになると従来と異なる物性を示し始める

有望そうなのは、例えばシリコンです。半導体であるシリコンは、通常は発光材料として使用しません。ところが不思議なもので、ナノオーダー(10億分の1m)の粒子に加工すると「量子サイズ効果」と呼ばれる現象が発生し、高効率で発光するようになるのです。シリコン表面には欠陥が多いなどの問題もあり、実用化には至っていません。しかし将来、半導体ナノ粒子をうまく応用すれば、より鮮やかな有機ELディスプレイが生み出せると思います。
ゼミの学生にはいろんなことを体験させます。太陽電池で言えば、有機薄膜太陽電池のサンプルづくりからしてもらいます。私の研究は先端分野のものなので、大学生が完全に理解するのは難しいでしょう。それでも基礎研究レベルで成果を上げるなど、最低限必要な知識は学べます。
私と同じ分野で研究に取り組む者は大勢います。大規模な資金や人員を投下して研究を進める企業もあります。そんな中で大事なのは、独自の着眼点を持つことです。粘り強くやり続け、さまざまなアイデアを駆使しながら実績を重ねることが、いい成果につながるのです。学生にもそういった姿勢を身に着けてもらいたいですね。彼らの大半は社会に出て研究者・技術者として活躍するのですから、自信を持って第一歩を踏み出せるように育てます。

ゼミの学生たちは、
有機薄膜太陽電池のサンプル製作から
取り組んでいます
実験をしながら、
その場で原理の説明が始まります。
現場での講義が学生の好奇心を刺激するのです