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電子情報工学科

前田 俊二

教員紹介

前田 俊二MAEDA Shunji

工学部 電子情報工学科 教授

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研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○時系列データ分析、マシンビジョンなどに関する研究
【担当科目】
情報理論 、 コンピュータ工学 、 プログラミング 、 人工知能 、 社会実践 、 電子情報工学実験 、 画像処理システム
【研究テーマ】
1.設備状態のモニタリング手法の研究
2.風況などの環境予測手法の研究
3.産業用検査・計測手法の研究
4.異同識別のための画像解析手法の研究
【ひとこと】

みなさんが成長し、さらに変化することが私の希望であり期待です。失敗を恐れず、これぞと思ったら、挑戦しましょう。そして、将来必ず現れる機会を確実に掴めるよう、さまざまな準備をしましょう。

研究紹介

前田 俊二MAEDA Shunji

工学部 電子情報工学科 教授

データを取得して分析し、さまざまな事象の“兆し”を
読むことで、潜在する問題を解決する。
PROLOGUE

多くの人は、定期的に健康診断を受けます。病気にかかっているという自覚症状がなくても、自分の知らないうちに“兆し”が表れているかもしれません。そうした兆候をつかみ、早めの段階でケアすれば、病気になるのを防ぐことができるのです。「同じことが設備やシステムでも言えます」と語るのは前田先生。設備にいろいろなセンサを取り付け、データを取得して分析すれば、設備やシステムが故障する“兆し”をつかめると先生は言います。しかもデータ分析によって、“兆し”を読むという手法は、社会で問題となっている多くの分野に応用でき、潜在する問題も解決できるのです。

“兆し”の段階で対処することで、設備が完全にストップする事態を未然に防ぐ

工場において、生産設備が故障で停止してしまうと、工場はモノが造れなくなり、大ダメージです。自家発電設備を持つ病院も珍しくありませんが、もし患者の治療中に発電設備が停止したら、人命に関わるかもしれません。
そこで、故障してから直す「事後保全」ではなく、故障する前に直す「予防保全」が大事になってくるのです。具体的には設備やシステムに、温度や振動、圧力などを測定するセンサを設置し、問題なく動いている「正常」時のデータをまず記録します。そのまま状態の監視を続けると、どこかのタイミングで正常時のデータと比較して異なる値、「異常」値が出てくるかもしれません。この異常値が、トラブルにつながる“兆し”なのです。“兆し”の段階で、「診断」を実施すれば、設備の故障の大半が防げます。
現在、この“兆し”、すなわち「予兆」の検知ができる事例も見られるようになってきましたが、予兆を発見してから、実際に設備が故障するまでの時間=「余寿命」の予測は、まだ十分には実用に至っていません。「予防保全」を確実に行うには、「予兆検知」「診断」「余寿命予測」の研究が大事になってきます。

発電の効率的運用のため、風速や日射量の“兆し”を予測する

風速の“兆し”を読む、という研究にも取り組んでいます。もちろん気象庁で風速予報は出していますが、気象庁の予報は例えば「広島市の風速は○mです」という具合に、広いエリアに対して出されます。私が想定するのは、風力発電に使う風速予測、つまり「発電用風車の設置場所」というピンポイントの風速を予測するのが研究テーマのひとつです。
風力発電の発電量は、風速に左右されます。風力で十分な発電量が見込めなければ、火力など別の方法で電力を確保しなければなりません。風速予測にあたっては、未来を読む鍵は過去にありと考え、いま起きていることは、過去にも観測されたはずだとみなすのです。そして、過去の類似した気象データを集め、そのときの未来値を、現在の未来値として参考にするのです。
同様に、太陽光発電の場合、日射量の予測が重要になります。ここでは雲の動きを予測するのです。風速予測にしろ、日射量予測にしろ、気象データを深く読み解くことが重要ですね。

風速予測の模式図。
青いW型が示すような傾向に着目し、
データが持つ特徴から未来を予測します

弾丸に残された、キズに潜む証拠を調べる仕組みを構築し、事件の解決に貢献

警察の依頼により、拳銃の弾丸に残された「線条痕」についても研究しています。線条痕とは、拳銃から弾丸が発射された時につく、弾丸のキズ。弾丸が発射された拳銃を示す重要証拠になります。しかし、同じ拳銃から発射されたと言っても、同一の線条痕がつくわけではありません。火薬量や弾の材質によって、見え方は大きく異なるのです。それが同一の拳銃から発射されたと特定できるのは、長年、線条痕に携わってきたベテランが、顕微鏡でキズの特徴的な部分の差異をしっかり見ているからです。だからどうしても調べるのに時間がかかり、1週間~1ヶ月を要する場合もあります。自動で客観的に調べるシステムができれば、人の手を煩わすことなく、短時間で判断できるようになるでしょう。

「設備故障の兆し」「風速予測」「日射量予測」「線条痕判定」といった研究は、どれも「類似性」という点で共通しています。正常時データや過去データとの類似性を比較することで、見えなかったものが明らかになるのです。私は企業に勤めていた時も類似性に基づく比較検査の研究で300件以上の特許を出願しました。最近では、類似性を情報理論や情報幾何の観点で眺める日々を送っています。
2021年には大学での研究の傍ら、兼業で人類の叡智を学術界・産業界と共に育むベンチャー企業の(株)産業数理研究所Calcを立ち上げました。今後も類似性を軸に、様々な研究を進めていきたいと思います。

弾丸に残された線条痕。
このキズを調べることで、
使用された拳銃が特定できます