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広島工業大学

地球環境学科

大島 健太

教員紹介

大島 健太OSHIMA Kenta

環境学部 地球環境学科 講師

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○軌道力学
【担当科目】
機械要素の設計A 、 機械設計製図 、 機械システム設計製図A 、 機械力学A 、 近未来輸送システム 、 実践基礎
【研究テーマ】
1.宇宙探査機の軌道設計に関する研究
2.小惑星の軌道解析に関する研究
【ひとこと】

大学時代は人生の中で、良くも悪くも最も自由な時期です。時間をうまく使って、卒業後のために実力を蓄えるとともに、個性を伸ばしてほしいと思います。

研究紹介

大島 健太OSHIMA Kenta

環境学部 地球環境学科 講師

より遠くの宇宙に、より早く到達するための、
効果的な宇宙軌道を発見!
PROLOGUE

地球を飛び立ち、大宇宙の探索に向かう探査機。暗黒に広がる謎や生命の神秘、進化のメカニズムを解き明かす旅…と聞けばワクワクしますよね。しかし宇宙探査に向かうには、莫大な燃料を必要とします。探査機のスペースには限りがあるので、燃料を多く積んでしまうと探査機器を十分、載せられません。これらの問題を解決しようというのが大島先生。先生は、未発見の、あるいはあまり注目されていなかった宇宙の軌道を探査機に利用することで、より遠くに、より少ない燃料で、素早く行けるのではないか、と研究を続けています。

宇宙には無数の軌道がある。それを宇宙探査に活用する。

地球は太陽の周りを回り、月は地球の周りを回っていることは誰でも知っていると思います。しかし宇宙には、他にいろんな軌道があります。小惑星や彗星と地球・月など天体同士の相互作用によって、無数の軌道が生まれているのです。この軌道の中で有望なものを宇宙探査機に利用しよう、というのが私の研究です。
宇宙探査にとって重要なのは、「いかに効率的に燃料を使うか」と言っても過言ではありません。地球を出発し、一直線に目的の星まで飛んでいくのが最も早い…と思うかもしれませんが、そんなルートを取ると莫大な燃料が必要です。探査機の限られたスペースの大半を燃料で埋め尽くすことになり、観測機器などを搭載できません。
そのため多くの場合、月スイングバイなどを行います。探査機が月の近くを通過する時に発生するエネルギーを利用すれば、探査機は少ない燃料でより遠くまで飛んでいけます。言わば、月に探査機を「ハンマー投げの要領で、遠くまで放り投げて」もらうわけですね。
そこで、スイングバイを利用できる軌道に、宇宙探査機を送り込む必要があります。私たちは数値シミュレーションにより、効率的に月スイングバイを実施できそうな軌道を発見しました。名をRetroGrade Co-Orbital(RGCO)と言います。

大島先生が発見した、RetroGrade Co-Orbitalという軌道(左側の図)。
地球と月を囲むような軌道を時計回りで周回している間、探査機はエネルギーをほとんど消費しません。そしてタイミングが来たら、月スイングバイを利用し、より遠くの宇宙に飛んでいけます。

より効率的に、より遠くへ、ベストのタイミングで行ける。

軌道には安定なものと不安定なものがあります。安定過ぎると、軌道から離脱するのに大きなエネルギーがかかりますし、不安定過ぎると、軌道に留まるのにやはりエネルギーを必要とします。RGCOはちょうどいいバランスにあり、軌道にとどまっている間はほぼエネルギーを消費しません。そして軌道から離脱する際は、少ないエネルギーで月スイングバイを利用できます。燃料を節約できるため多くの機器を搭載可能という長所と、より遠くの宇宙に行けるという長所を両立した、探査機にとって最適の軌道なのです。
「探査に向かう時間の短さ」も利点の一つと言えるでしょう。今、世界では彗星が出現した段階でなるべく早く観測に行こうというプロジェクトがあります。彗星が太陽に近づくと、彗星に含まれる氷などの成分が溶けてしまいます。そうなる前に彗星にたどり着けば、宇宙や生命の秘密を解くカギが見つかるかもしれません。
現在の計画では、探査機の滞在ポイントから月スイングバイまで6ヶ月と言われます。しかしRGCOを利用すると、計算上は1ヶ月程度で月スイングバイを実施できそうなのです。月スイングバイにかかる時間を短縮し、より早く彗星に到達できれば、より多方面の観測ができるのは間違いありません。

反時計回りの軌道が大半の太陽系で、時計回りの軌道が見つかった。

地球や月をはじめとして、太陽系の惑星や衛星は反時計回りで周回しています。ところが最近、時計回りに周回する天体が発見され始めました。RGCOもその一つで、地球の周りを時計回りに周回します。反時計回りの天体と、時計回りの天体が近づくと、ものすごいエネルギーが発生します。自動車2台が反対方向から猛スピードで接近し合うようなもので、天体の相対速度が大きくなると発生するエネルギーが高くなります。その結果、月スイングバイの効果が大きくなり、探査機はより遠くまで飛んでいけるわけです。
地球から探査機を余裕を持って出発させ、RGCOに滞在させる。RGCOではほぼ燃料を使わないので、ベストのタイミングまで長期間待機させておけます。そして時機が来たら月スイングバイで、より遠くに向かう。そういった宇宙探査の中継軌道としてRGCOが利用されることを期待しています。そのため数値シミュレーションを行い、軌道の実用性について検証しているところです。

彗星探査など、様々な宇宙プロジェクトが
世界で進んでいます。
有望な軌道を発見するためには、
数値計算によるシミュレーションが
欠かせません。