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地球環境学科

下地 治彦

教員紹介

下地 治彦SHIMOJI haruhiko

環境学部 地球環境学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○制御工学
○宇宙工学
○衛星システム設計
【担当科目】
システム制御
【研究テーマ】
1.小型衛星のシステム設計に関する研究
2.衛星の姿勢・軌道制御に関する研究
3.衛星搭載用のセンサに関する研究
【ひとこと】

頭の中ではできても、いざ作ってみるとうまくいかなかったという経験はありませんか。一緒に、小型衛星の部分モデルを作りながら、製品開発の難しさを学んでみませんか。

研究紹介

下地 治彦SHIMOJI haruhiko

環境学部 地球環境学科 教授

月面へのピンポイント着陸を実現した
「SLIM」の開発プロジェクトを担当
PROLOGUE

2024年1月、月面着陸を成功させた日本の小型月着離陸実証機(SLIM)。月面着陸は世界で5ヶ国目の快挙です。加えてSLIMは、誤差わずか10m程度というピンポイント着陸を世界で初めて達成したことで注目を集めました。このSLIM開発プロジェクトに技術者として関わったのが、下地先生です。先生は広島工業大学に着任する前、三菱電機に勤務しており、SLIM計画ではプロジェクトマネージャーを務めていました。「次々に訪れる課題に苦労の連続だった。それだけに、月面着陸成功の瞬間は感動した」と、下地先生はプロジェクトを振り返ります。

2015年から約7年間、マネージャーとしてSLIM開発に携わる

三菱電機に入社した私は、通信衛星や観測衛星などの設計に長く携わってきました。私がSLIMプロジェクトに関わることになったのは、2015年くらいからです。プロジェクト自体は、JAXA、大学関係者、三菱電機の間で2007年から既にスタートしていました。本格的なプロジェクトとして開発が始まるまで7~8年もの歳月が必要だったのは、SLIMで「月面へのピンポイント着陸」ができるかどうかの見極めが難しかったからです。これを成功に導くためのコア技術検討に、それほど時間がかかったのです。
1969年、アメリカによるアポロ11号の月面探査以来、世界各国が月面探査のための研究や実験を繰り返しており、「一般的な」月面着陸技術はもう確立している、というレベルに達しています。ただし、ここでの「一般的」とは、「着陸地点精度が数km」で、また「障害物の少ない平地での着陸」を指します。誤差が10m程度のものは「ピンポイント着陸」と呼ばれ、これに成功した国は過去にありません。そこでSLIMでピンポイント着陸をめざそう、となったのです。が、これは長く続く苦闘の幕開けでもありました。

前職で開発にあたったSLIM

過去の経験だけでは通用しない、ピンポイント着陸の壁

日本における宇宙技術開発の歴史を振り返ると、1970年に初の人工衛星打ち上げに成功して以来、衛星に関する蓄積は十分にあります。私も衛星については熟知しているつもりです。しかし、SLIMのような月面探査機開発には、新たなアイデアや発想がいくつも必要でした。
プロジェクトのリーダーはJAXAであり、三菱電機はその指導のもと、SLIMの機体全体を開発する、という役割分担で動いていました。私はプロジェクトマネージャーとして、三菱電機のエンジニア約50名、及び協力メーカーからなるチームを統括する立場にありました。機体の多くは三菱電機側で開発にあたっていましたが、燃料タンクや機体の推進を担うスラスターなど、コアとなる一部の部品や特殊な機構については、JAXAから提供を受けました。
しかし、詳細な設計を始めると、悪戦苦闘の連続です。着陸のための細かな制御を行うと電力が足りない、ならば太陽電池を増やして電源装置を大きくしよう、そうすると重くなるので燃料を増やさないといけない、推力も足りなくなるからスラスタを増やそう、着陸脚ももたないから頑丈にしよう、スラスタを増やすと過熱するので耐熱を強化しようなどなど、探査機の構成や制御ロジックの見直しを繰り返して、やっと最終の形態にたどり着きました。

SLIMがピンポイント着陸した時の降下の様子

次の目標である、ファインピンポイント着陸の成功に寄与したい

苦労は尽きず、実際に完成した機体は、当初の構想とは形状も重量も異なるものでした。しかし、技術者たちの努力の結晶として、ピンポイント着陸という成果にたどり着けたのです。私は2022年11月にプロジェクトを離れましたが、JAXAの指導のもと後輩たちが一体となって見事に成し遂げてくれました。
ですが、プロジェクトは終わり、ではありません。世界の月探査はこれからが本番です。SLIMでは着陸位置誤差約10mのピンポイント着陸を実現しましたが、さらに精度を高めたファインピンポイント着陸技術を開発して、穴底だって崖っぷちだってドンピシャで着陸できる技術を開発したい。
今後は大学のゼミ活動を通じ、月探査を始めとする宇宙利用に関する研究を重ねたいと思います。月面を走るローバ、大学発の小さな地球観測衛星開発にもチャレンジしていきたいですね。

研究室内にこのような試験装置を設置し、
実験やシミュレーションに
取り組もうと考えています
衛星開発の経験をもとに、
学生のCanSat(自律惑星ローバ)
コンテスト参加をサポート。
ローバ開発を通してものづくりの
楽しさを伝えています