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建築デザイン学科

宋 城基

教員紹介

宋 城基SONG Sung-Ki

環境学部 建築デザイン学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○建築環境・建築設備
【担当科目】
建築デザイン数理基礎 、 デザインスタディA/B/C/D/E/F/G/H 、 環境工学A /B 、 環境工学基礎 、 建築設備 、 建築設備演習 、 住環境評価 、 専門ゼミナールA/B 、 デザインスタジオ
【研究テーマ】
1.室内外環境関連:AIを用いた室内温熱環境自動検知システム開発に関する研究、快適な睡眠環境とその環境コントロールシステムの開発研究、快適な学習環境に関する研究
2.ZEH/ZEB関連研究:太陽熱利用システムに関する研究、地中熱利用システムに関する研究、省エネとその効果検証と改善に関する研究、SolarChimneyなどの自然換気とそのシステムに関する研究
3.ZW関連研究:雨水利活用システムの設計と評価に関する研究、ゼロウォーター建築設計と評価に関する研究、雨水利活用による防災減災効果の検討
4.防災減災関連研究:自立型避難所建築に関する研究、避難所建築の実態と評価に関する研究、指定避難場の評価ツール作成に関する研究
【ひとこと】

「覚えるより理解する!」もの事を無理して覚えるより理解することが肝心です。また、「才能がある人より努力する人! 努力する人より面白く実践する人!」は必ず成功すると信じています。何事でも楽しくやれる方は大歓迎です。

研究紹介

宋 城基SONG Sung-Ki

環境学部 建築デザイン学科 教授

「眠れない夜」を解消するために必要な、
快適な「室内温熱環境」とは?
PROLOGUE

夜、ベッドに入ったのだけどなかなか寝付けなかったり、夜中にふと目が覚め、もう一度眠ろうとするのだけど、目が冴えてしまったり…などはありませんか?高齢になってくると、なぜか朝早く起きてしまうこともよくあるようです。健康的な生活の第一歩は、しっかりたっぷり寝ること。せめて室内環境の面から「良い睡眠」がとれるようにできないものでしょうか。宋先生は「睡眠」を始め、生活のさまざまな面に焦点をあて、「快適な室内温熱環境」について研究しています。

「気持ちいい睡眠」の実現には、着衣や代謝の状態まで考慮に入れるべき

室内の気温、湿度、気流、換気、天井や壁の放射温度などをセンサで調べ、生活の快適さを保つ工夫はいろいろ実践されています。AIによって、温湿度などを高精度に自動制御するエアコンも登場しています。
しかし「睡眠環境」を考えた空調システムは、まだほとんどありません。睡眠は、医学的要因や心理面も絡む複雑な生理現象ですが、「良い睡眠」につながる室内温熱環境の整備はできるはずです。
そのため、現段階は「着衣」と「人間の代謝」に着目し、いろんな条件で測定を重ねています。寝ているとき、薄着か厚着かは人それぞれ。着衣の状態で睡眠時の代謝も変わってきます。AIエアコンは温湿度に合わせて風量を調節していますが、人間の着衣や代謝まで考慮するわけではありません。しかし着衣や代謝が睡眠に与える影響を示すデータが揃えば、AIに睡眠時の着衣や代謝を測定させ、それに合わせて制御させることも可能ではないでしょうか。
さらに研究を進めれば、ノンレム睡眠からレム睡眠への変化を検知したAIが、室内のカーテンを自動で開けて目覚めを促す、といったことにも応用できるかもしれません。たっぷり眠り、すっきり目覚めるという、理想的な睡眠環境に近づくわけです。
着衣や代謝まで考慮に入れた室内温熱環境の研究成果は、睡眠時に限らず、仕事や学習など日常の状況にも活かせます。また「室内環境」とは建物はもちろん、車や飛行機なども対象となります。AIなど新たな技術をどう応用するかも含め、さまざまな角度から快適な環境を捉えていきます。

エアコンを使って温熱や気流の状態を
細かく調べるための実験室
サーマルマネキンを用いた着衣状態の計測。
サーマルマネキンではなく被験者により、
着衣時の体温や周囲環境などの測定から
着衣状態を計測したりもしています

環境改善(健全な水循環や水資源)のため、雨水を積極的に活用した方がいい

環境に関連する別のテーマとして、雨水月用にも取り組んでいます。きっかけは、東日本大震災です。多くの人々が避難所に身を寄せましたが、その環境はとても劣悪であり、健全な衛生環境の維持に必要不可欠な、トイレの水が流せないといったこともありました。
ところが外を見ると、普通に雨が降っています。雨水があるなら、直接利用できるようにすれば良いのです。非常時だけでなく、平時から雨水を活用するシステムが常備されていれば、災害時にトイレの水すら困る…といった劣悪な状況は回避できます。そのためには「雨水は浄化しないと使えない」というイメージを変えることが必要かもしれません。そこで、雨水がどういう場面に使えるか、どういった調整を行えば利用範囲が広がるか、といった研究も並行にしています。
究極的には、雨水を飲水に利用できればベストだと思います。水もエネルギーと同じく限られた資源です。上水道を引き、メンテナンスするにもコストがかかります。少子高齢化および人口の都市集中により地方では、水道整備や維持管理に膨大なコストが必要となります。雨水を可能な限り有効活用すれば負担は減りますし、避難所の環境もずっと快適になります。

「より快適な避難所」には何が必要か、調査を開始

雨水活用に伴って、自立型避難所づくりの研究も始めています。避難所にどのような環境が必要なのか。プライバシーの観点や、集団感染症を防ぐということにおいても、あるべき避難所の形を提示していく、というのがこの研究の狙いです。
そのためには、現状を把握し、評価することが第一です。収容人数、密度、換気、冷暖房の状況などを調べたり、住民の方々に「どんな避難所がいいですか?」「何が足りないと思いますか?」「優先順位が高いのは何ですか」といったアンケート調査も実施しています。
他にも、太陽光発電などの自然エネルギーを利用したゼロ・エネルギーハウスやビルディングに関連する研究もすすめています。いずれも一足飛びに結論の出ない課題ばかりですが、人間にとって身近な環境を考えるものばかりなので、学生も興味を持って自主的に取り組んでくれることを期待しています。学生たちとともに、確かな成果を生んでいきたいと思います。