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地球環境学科

菅 雄三

教員紹介

菅 雄三SUGA Yuzo

環境学部 地球環境学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○リモートセンシング
○空間情報科学
○測量学
【担当科目】
環境情報概論 、 環境数理基礎 、 測量情報処理論 、 空間情報処理論 、 測量情報処理実習 、 環境情報処理演習 、 環境情報システム 、 環境情報特論 ほか
【研究テーマ】
1.リアルタイム位置情報システムを活用したマシンガイダンス/コントロール支援システム開発
2.多次元時空間情報IoTプラットフォーム開発
【ひとこと】

一日生きることは、一歩進むことでありたい。
日々探求することの楽しさを体験してください。

研究紹介

菅 雄三SUGA Yuzo

環境学部 地球環境学科 教授

人工衛星などを活用したリモートセンシング技術で、
くらしの安全保障に貢献
PROLOGUE

地球の周りには12,000機を超える人工衛星(2021年12月時点の登録数:JAXA調べ)が飛んでいると言われています。人工衛星は気象や陸・海・生物圏に関するさまざまな情報を取得し、地上に向けて送ってくれています。スマートフォンやカーナビで自分の現在位置がわかるのも、人工衛星が送る情報のおかげです。この情報を利用し、広い地域の環境変化や、災害発生時の地域の状況を観測するのが「リモートセンシング」技術。菅先生はこの技術が日本に入ってきた1976年頃から、研究に取り組んできました。そしてリモートセンシングは、さらに進化しているらしいのです。

さまざまなプラットフォームを用いた、多次元時空間情報の構築とその応用について長年研究してきた

「リモートセンシング」というと、人工衛星を使った地球環境観測を指すと思われがちですが、それだけではありません。Googleは自動車にレーダを搭載してストリートビューというマップを作っていますが、あれもリモートセンシングの一つ。他に船や航空機、最近はドローンのような無人飛翔体を用いる場合もあります。これらさまざまなプラットフォームを用いて、空間的さらに時間的経過も含めて多次元的に陸海空の地球環境情報を取得してさまざまな産業分野で応用するのが、「リモートセンシング技術」なのです。
私は、日本におけるこの分野の初期から、人工衛星を始めとした多次元時空間リモートセンシング技術の構築とその応用について研究してきました。環境変化や自然災害を対象に、宇宙・空中・地上・海上におけるリモートセンシング技術を活用して時間的・空間的情報の構築から応用まで一気通貫(ワンストップ)でつなげる。そんな技術開発に取り組んできました。
その取り組みが、さらに進化しています。日本は2018年、準天頂衛星「みちびき」を打ち上げました。従来のGPS(全球測位衛星システム)だと位置情報に10m程度の誤差が出ることもあったのですが、みちびきは移動体の位置をcm単位で特定できます。これは日本独自の衛星測位システムです。私は、移動体の高精度な位置情報の取得が可能なみちびきを活用した、除雪支援システムの開発に注力しています。

準天頂衛星「みちびき」を活用した、除雪支援システムを開発

広島から島根に抜ける辺りは、冬に大雪が降るため、道路の除雪が欠かせません。除雪車は時速50kmのスピードで移動しながら、プラウやグレーダと呼ばれる排雪板で道路に積もった雪を取り除きます。
ここで問題となるのがジョイントや排水桝などの、道路上に存在するわずかなでっぱりです。でっぱりに排雪板が引っかかると排雪板を破損したり、除雪車が事故を起こす場合もあります。そこで引っかからないよう、でっぱりの箇所だけ排雪板を十数cm上げ、通り過ぎたら元通り下げる動作を繰り返します。時速50kmで移動しながらの作業なので、熟練技術者にしかできません。
しかし少子高齢化の中、熟練者の数は減少しています。このままでは、豪雪地帯の暮らしに不可欠の除雪作業ができなくなるかもしれません。
道路を管理する会社や業界団体からの相談を受け、私たちが開発したのが「CLAS(みちびきのセンチメータ級測位補強サービス)を活用した機械除雪支援システム」です。除雪車の位置情報をcm単位で取得。精密な3次元道路施設情報と組み合わせ、でっぱり箇所等の障害物までの距離をリアルタイムで計算。対象の位置で排雪板を自動昇降させるのです。
私は従来から、多次元時空間情報の構築とその応用について研究してきました。その知見に、「みちびき」という新たなプラットフォームが加わったことで実現したシステムと言えます。

「みちびき」を利用した、
機械除雪支援システムのモデル
(出典:内閣府「みちびき」HP)

宇宙から地球を見守る、多彩な技術を提供していきたい

システムを除雪車に搭載し、道路管理会社などの立ち会いのもとで実験を行いました。すると、意図した通りの排雪板の自動昇降に成功。実用レベルに近づきました。長年、除雪車の操作を担ってきた熟練技術者たちも「これは使える」と拍手で祝福してくれました。プロが認めてくれて、私も嬉しく感じましたね。
システムは実用の一歩手前まで来ており、実験と調整を繰り返しているところです。広島の豪雪地帯だけでなく、雪に悩まされることの多い関越道の道路管理関係者との共同研究も行ってきました。それだけ少子高齢化の日本では、困っている人が多いという証でしょう。
今は除雪を対象としていますが、みちびきの性能と、多次元時空間情報に関する知見は、くらしのさまざまな分野で活かしていけるのではないかと思います。「宇宙から地球を見守る くらしの安全保障を支える多次元時空間情報DXプラットフォーム」をテーマとして、いろいろな課題に応えていきたいですね。

関越道の実験場で、
でっぱりのある箇所を想定した
位置での排雪板の自動昇降に成功。
赤丸部に、みちびきからの測位情報
を受信するアンテナが設置されています
(出典:内閣府「みちびき」HP
東日本高速道路㈱新潟支社)