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情報コミュニケーション学科

安部 伸治

教員紹介

安部 伸治ABE Shinji

情報学部 情報コミュニケーション学科 教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○コミュニケーション科学
○コミュニケーション支援技術
○情報コミュニケーションメディア
【担当科目】
コミュ二ケーションシステムデザイン 、 サイバネティスク 、 マルチメディア情報学 、 技術者倫理 、 情報技術英語 、 専⾨ゼミナール
【研究テーマ】
1.新しいコミュニケーションメディアの研究
2.コミュ二ケーション支援技術の研究開発
3.高齢者のQoL改善システムの研究開発
4.コミュニケーション科学の研究
【ひとこと】

ものごとに対する強い執着(こだわり)は、クリエイティブな業界に身を置く者として、あらゆる行動の原動力となるのでとても大切です。
大学・大学院はその執着の対象を自ら見出し、探究する場です。
ただ、研究者はその執着を世の中の諸問題に対して位置づけ、訴求できるか、また将来へのビジョンを持てるかどうかが問われます。
それができなければ、ただの"ヲタク"で終わってしまいます。
大学・大学院を実社会への入り口と捉え、ここで得た執着と、ここで学んだ技術を実社会で生かすことのできるプロフェッショナルを目指してください。

研究紹介

安部 伸治ABE Shinji

情報学部 情報コミュニケーション学科 教授

⽣きているような「ぬいぐるみロボット」が、
⾼齢者のコミュニケーションを活性化
PROLOGUE

認知症は脳の細胞が死んだり、働きが低下することによってさまざまな症状を引き起こす病気で、いまだに治療法は⾒つかっていません。「確かに、現在の医療では認知症を治すことはできません。でも進⾏を遅らせることはできる。その最⼤の⼿段が“コミュニケーション”だと考えています」そう話す安部先⽣は、ITを活⽤した⾼齢者のコミュニケーション⽀援の研究に取り組んでいます。

右脳がつかさどる、もうひとつのコミュニケーション

⼈は⾔葉や⽂字で、相⼿とコミュニケーションをとります。こうした情報は通常、左脳の⾔語野という部分で処理されます。しかし「コミュニケーション」とは⾔葉や⽂字だけではありません。例えば、会話をする時に⾝ぶり⼿ぶりや声の抑揚があると、意図が相⼿により伝わりやすくなりますよね。この時の動作もまた、コミュニケーションの⼀部なのです。
言葉によらないこれらの動作は「非⾔語コミュニケーション」と呼ばれ、左脳ではなく、右脳で感受されます。非⾔語コミュニケーションは、実は私たちが⽣まれて初めて獲得するコミュニケーション⼿段でもあります。⾚ちゃんは、お⺟さんの指さす⽅向を⾒て、外界へ関⼼を持ち始めます。また、お⺟さんと視線が合った時、お⺟さんに優しく微笑みかけられると、⾚ちゃんはとても嬉しそうな反応をします。これがコミュニケーションの原型なのです。
相⼿と同じものを⾒て共感し合うことを「ジョイントアテンション」、目が合った時に好意的なリアクションを返すことを「アイコンタクトリアクション」と⾔い、どちらも相⼿との信頼関係の醸成につながる、⼤切な⾏動です。

「コミュニケーション科学」という新たな学問分野

私は「コミュニケーション科学」を専門としています。これは、⽐較的新しい境界領域の学問分野です。ですから「昔からこの分野⼀筋だった」という研究者はおらず、私たちのような情報⼯学系のエンジニアもいれば、⾔語学者や⼼理学者、⼈間⼯学や脳科学の専門家などもいて、協⼒して研究を進めています。私はもともとの専門であるITを駆使し、⼈と⼈とのコミュニケーションの充実を支援したいと考えているのです。
写真は私の研究室で基盤技術開発を行い、2016年に市内の事業会社経由で商用化した「スマクロ」というサービスです。このシステムを使えば、高齢者は着ぐるみを着たスマホの顔に触れるだけで遠くの家族と顔を見ながらコミュニケーションができます。

高齢者と遠隔の家族をつなぐスマクロシステム

新たなコミュニケーションの場を提供

最近では、新たなコミュニケーションの場を提供しようという取り組みの一環として、没入感メディアという新しい技術の研究開発をしています。人が感じる人や物の存在感は、メディア表現のリアリティや精細度に依存します。高精細表示装置を使えば、より実体感のある映像を提供できるのです。本研究はそれをさらに一歩進め、利用者の視野を覆うような高精細映像空間を構成することで、映像への没入感を高めます。日本の高齢化は各種メディアで大きく取り上げられ、近年は「認知症患者の徘徊」が社会問題化しています。また,徘徊による行方不明者の届け出が増加しており、毎年2万人近くに達しています。利用者の視野を覆うように、高精細ディスプレイを湾曲型に配置し、高精細かつ臨場感のある映像空間を作り出します。その空間にGoogle Earthなどの全方位映像を表示させることで、疑似的な外出体験を提供します。また、電動車椅子に似せたインタフェースを用いることで、全方位映像の中を自由に歩き回ることができるため、高い没入感が得られます。
学生たちが取り組んでいるすべてのテーマは、最終的に商用化を目指しています。ご利用者様やご家族の方々に実際に使ってもらうことによって、生活がどう変わって行くのか、どんな効果をもたらすのか、さまざまな角度から検証したいと思っています。また、「こんな機能があれば…こんなことがしてみたい…」という率直なニーズを拾いたいですね。私たちは企業や他大学の研究室とも連携し、開発したシステムの本格的な普及を目指しています。

没入感メディアによる疑似外出体験システム
学⽣時代からジャスをやっていた先⽣の研究室には、コントラバスやベースが置いてあります。「あうんの呼吸でアドリブを演じ合うジャズも
また、非⾔語コミュニケーションなのです」