©Hiroshima Institute of Technology. All Rights Reserved.

生体医工学科

渡邊 琢朗

教員紹介

渡邊 琢朗WATANABE Takuro

生命学部 生体医工学科 准教授

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○臨床工学
○医療安全
○医用機器安全管理
【担当科目】
生体機能代行装置学 、 医用治療機器学 、 医用機器安全管理学 ほか
【研究テーマ】
1.呼吸療法に用いる医療機器の定量的測定と評価に関する研究
2.医療機器・医療環境の安全性向上に関する研究
3.医療現場が求める臨床工学技士の素養に関する研究
【ひとこと】

患者から信頼される医療および臨床工学技士を目指し、ともに歩んでいきましょう。

研究紹介

渡邊 琢朗WATANABE Takuro

生命学部 生体医工学科 准教授

機器トラブルを監視するシステムがあれば、
医療事故はもっと減らせるはず。
PROLOGUE

今や医療の現場には様々な医療機器が導⼊され、診断や治療をサポートする存在となっています。場合によっては⽣命に直結するものだけに、安全性をどれほど徹底的に追求してもやり過ぎということはありません。
そんな観点で、医療環境の安全性を向上させる研究に取り組んでいるのが渡邊先⽣。「ジャンルにこだわらず、医療の安全につながる幅広い領域に挑戦していきたい」と意欲を語る先⽣は、多彩な機器・システムの開発に取り組んでいます。

ヒューマンエラーに起因する医療機器のアクシデントが増えている。

医療現場に高性能の医療機器が導入され、医療の質は格段に向上しています。一方、医療機器に関するアクシデントも増えてきました。機器自体のトラブルに加え、操作する医療従事者のヒューマンエラーが原因となるケースも少なくありません。私は、そうしたアクシデントをゼロに近づけるためのシステムを開発しています。
例えば、「⼈⼯呼吸器に取り付けられた加温加湿器の監視システム」がその一つです。人工呼吸器で酸素と空気を混合して患者の肺に送る際、送り込むガスに、あらかじめ適度な湿度と温度を与える必要があります。湿度ゼロの空気は、気管などを傷つける恐れがあるからです。
そのため人工呼吸器には加温加湿器が備わっています。ですが、途中で加湿のための滅菌水がなくなってしまうかもしれません。また機器の暴走で、ガスが高温になる事態もあります。通常はトラブルに備え、加温加湿器をセンサが監視しています。しかし、センサは加温加湿器と同系統の電源で動作しているため、システム自体にエラーが起こると、センサも機能しなくなります。

人工呼吸器に付随する加温加湿器を
監視するシステム。

人工呼吸器の加温加湿を監視する、独立系統のシステム。

そこで私は、人工呼吸器・加温加湿器とは別系統で動く、加温加湿器の監視システムを開発しました。呼気出口にセンサを取り付け、ガスの加温加湿を監視、異常があれば早急に警告するのです。これにより、機器に携わる医療従事者の負担を減らし、トラブル削減にもつながります。
他にも、各種チューブの動きを検出するシステムにも取り組んでいます。点滴チューブや導尿チューブなど、医療では患者の体にチューブをつなぐケースが結構あります。動いてずれてしまうとチューブが外れたり、必要以上に体の奥深くへ入り込む可能性があるため、通常はテープなどで固定します。しかし、絶対動かないとは言い切れません。であれば、チューブ自体にセンサをつなげば良いのです。そして動きを検出したらアラームで知らせます。すぐにチューブをつけ直せば、事態悪化を回避できるでしょう。
血管注射後の止血の際、どれくらいの圧力・時間で血管を押さえればよいのか体感できる⽌⾎シミュレータも開発しています。臨床工学技士も止血を行う場面があるので、シミュレーターで訓練すれば、止血に必要な圧力の感覚を養えます。

システムのサポートにより、医療者の負荷が大幅に軽減できる。

機器がどれだけ高度化しようとも、完全無欠になることはあり得ません。また、人が操作・管理する以上、ヒューマンエラーを無くすのも難しいでしょう。高齢化社会の進行により、今後は在宅医療が増加し、一般家庭で医療機器を扱う、というケースも増えます。医療従事者ならまだしも、専門知識を持たない人に確実な管理を任せるのは、荷が重すぎます。
そうした場合にこそ、センサとシステムが必要とされるのです。センサがエラーを警告した段階で素早く対処すれば、最悪の事態は避けられます。またシステムをネットワークで医療機関とつなげば、医療従事者による遠隔からのモニタリングも可能になります。遠隔医療の実現のためにも、これらのシステムは不可欠です。
医療現場では、まだまだ多くを人の目に頼っています。しかしセンサを活用すれば、医療従事者にかかる過大な負担を軽減できます。
事故になる前のインシデントの段階で機器トラブルやヒューマンエラーをキャッチできれば、医療事故は限りなくゼロに近づくはず。医療現場において唯一、工学知識を持つ存在の臨床工学技士は、そのために知識やアイデアを駆使しなければならない。そんな責任感を持って、開発に取り組みたいと思います。

点滴チューブや導尿チューブなどのずれや
意図しない外れを検出するシステム。
これは止血シミュレータ。止血にはどれくらいの圧力と時間が必要か、体感できます。