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広島工業大学

地球環境学科

久保 亮

教員紹介

久保 亮KUBO Akira

環境学部 地球環境学科 講師

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○微分幾何学
【担当科目】
食品生命のための数学 、 応用数学 、 微分積分学 、 AI・データサイエンス入門 など
【研究テーマ】
1.対称空間内の等質部分多様体の幾何に関する研究
2.リー群上の左不変幾何構造に関する研究
3.対称空間論を用いたカンドルの幾何に関する研究
【ひとこと】

大学入学は1つの目標かもしれませんが、決してゴールでありません。
皆さんがゴールに向かって進めるように、全力でサポートします。

研究紹介

久保 亮KUBO Akira

環境学部 地球環境学科 講師

数学は「共通語」。相対性理論も生成AIも、
基盤に数学があるからこそ成り立つ
PROLOGUE

数学と聞くと、苦手意識を覚える人も少なくないのではないでしょうか。微分積分、という単語を見ただけで、もう「自分には関係ない」と心のシャッターを閉じてしまったり。しかし今、世の中で盛り上がっている生成AIも、微分積分などの数式がないと成立しません。他にも数学は、いろんな科学や技術の基礎として、それらの発展を支えてくれているのです。その数学を研究しているのが久保先生。先生は、微分幾何学という数式で、様々な空間図形の謎を解き明かそうとしています。

遠い星の宇宙人も、きっとピタゴラスの定理を知っている

遠い星から宇宙船でやって来た宇宙人がいたとします。彼らはきっと、ピタゴラスの定理を知っているでしょう。なぜなら、ピタゴラスの定理を知らずに、宇宙船は建造できないはずだからです。ピタゴラスの定理は紀元前から知られていますが、2000年経っても、その正しさは微塵もぶれません。時空を超え、今も幾何学の基盤の一つであり続けているのです。
ここに数学の魅力があります。言語や習慣、種族の違う相手とも、数学を通しては理解し合えるし、知を分かち合える。全宇宙の共通語のような、あるいは哲学のような役割を果たすのが数学なのです。
私たちは、2+3が5だと知っています。このおかげで、午後2時の3時間後は午後5時であることも、2本の鉛筆を持つ人が新たに3本買ってきたら、手元の鉛筆は5本になることもわかります。
時間を計測したい、物を数えたい…など目的がどう変わろうと、基本の数式を知っていれば答えが出せるわけです。さらに広げると、食品が劣化する日数や細菌が増殖するスピードを知るのにも、システムがディープラーニングを行うのにも、数学が役立ちます。分野を超えて基盤となる学問だから、「数学は共通語」なのです。

多次元空間に置かれた図形の性質を、微分によって詳細に調べる

私は、広く言えば幾何学、つまり多角形や円など図形を取り扱う分野を研究しています。幾何学はもともと、土地を測量する目的で始まった学問とされます。エジプトのナイル川流域では毎年氾濫が起こって自分の土地がわからなくなるため、測量が必須だったのでしょう。エジプトに幾何学が誕生したことが、ピラミッド建設を可能にしたのではないでしょうか。
中でも、私が取り組むのは微分幾何学という分野です。目の前にある図形を詳細に調べるため、微分という道具を用いるのです。そうすると、図形がどの程度曲がっているか、詳細に分かります。
「図形の傾きや曲がり具合を知りたいなら、定規や分度器で測ればいいじゃないか」と思う人もいるかもしれませんね。確かに、紙の上に書かれた2次元の平面図形なら測ることは可能だし、3次元図形も頑張れば何とかなるかもしれません。しかし私たちが挑戦しているのは、4次元、5次元、あるいは10次元といった、人間が目で見ることのできない空間に浮かぶ図形(多様体)です。目に見えないから手で触れられないし、分度器で測れるはずもありません。その図形を知る方法の一つが、数式です。

学生時代から研究に
使用しているテキスト

円柱状のロールケーキを真横に切ったら、どんな図形が浮かび上がる?

私は、対称空間という整った空間に置かれた図形(=多様体)の一部(=部分)をきれい(=等質)に切った時、その切り口はどんな形や性質を示すか、という「対称空間内の等質部分多様体」についての研究を行っています。
円柱状のロールケーキを思い出してください。上から切ると切り口は円ですが、真横から切ってみると、切り口は長方形になるはずです。3次元空間にある物でも、切り方によって切り口の形が変わります。多次元空間にある図形なら、なおさら複雑でしょう。その形を、微分幾何学によって解き明かすのです。
「多次元空間なんて目に見えない図形の研究が、何の役に立つの?」と思う人もいるでしょう。しかし、例えばアインシュタインの相対性理論には、この世が3次元+時間の4次元で成り立っている、という視点が不可欠です。彼が多次元空間の存在に着目しなければ、相対性理論は完成しなかったかもしれません。最新の物理学では「世界は10次元だ」という理論もあるそうです。
物理学や他の学問領域が何らかの理論を構築する際、基盤となる知識を提供するのが、「共通語」たる数学の重要な役目の一つです。いつ役立つかわからないけれど、人類がその知識を必要とした時、いつでも使えるように準備しておく。それが数学者の役割だと思っています。

講義では、数学が得意でない人にも
興味を持ってもらえるよう
心がけています