学生の企業研修 -- 教育における産学共同(2005年4月10日)

中国新聞(2005年4月10日)掲載

学生の企業研修 --- 教育における産学共同

技術者を育て社会に送り出していくために、産学の連携がもっともっと必要と考える。「産学連携憲章」を掲げている私たちがその一つの試みとしてこの春行ったのが、3年生を対象にした「そとが学び」プログラムである。
一言で言えば、オンリーワン的な優れた地元企業での1ヵ月研修だ。電気・機械関連の8社から受け入れの申し出をいただき、9名の応募があった。選考の結果、5人を4社に派遣した。
第一の狙いは「現場体験」である。
技術者教育では、体験によって現象を確認し、知識として体系化するプロセスが大切だ。そうした機会が日常生活の中で極めて少なくなっているだけに、ものづくりの現場そのものである企業での体験は、得るものが大きい。
もう一つは、ずばり就職を意識してもらうことである。
一般に行われているインターンシップは、就職とは切り離されている。「大学教育は就職を目指すものではない」という大学の考えと「特定企業による学生の囲い込みは公平でない」という企業の考えによると思われる。しかし私たちの考えは違う。
見渡せば多くのオンリーワン的な地元企業がある。しかし大企業と違って知名度が低いため、学生に就職先の一つとして認知されていない。これでは双方にとって不幸だろう。そこで私たちは「研修」という形で橋渡しの役割を果たしたいと考えた。
学生が実際に現場で「すごさ」や「面白さ」を実感すれば、「ここで自分の力を試したい」と思ってもおかしくない、いやそういう人が現れてほしいと思っている。
だからこそ私たちは学生に、企業内容や社風がどうか、また社長はどのような考えで会社を経営しているか、研修中によく見定めて来るように言い含めている。
もちろん相手を見るという意味では企業も同じである。入社してうまくやっていけるか、学力や人間力はどうか、をしっかり見てもらえればいいと思う。
さて今回参加した学生たちは、事前に企業や業界の勉強をし、研修期間中には中間発表もした。新学期に入ってから事後研修もみっちりとする予定だ。
中間発表の席で企業の幹部から出たのはこんな声だった。
「企業と大学とでこうした教育をすれば、ものづくりの人材を育てられる」
「技術者教育が大学だけではできないなら、現場をもつわれわれは大いに協力したい」
「学生が達成感を味わうためには今回のように最低1ヵ月は必要だ。今後も受け入れたい」
実際に「この会社に入りたい」「来てもらえるなら採用したい」というケースも生まれている。私たちの願いが受け止められたようでうれしい。
こうした産学の連携は日本だけではない。かつて訪問したカナダのブリティシュコロンビア大学では、企業研修と大学での授業を3ヵ月ごとに交互に行う「サンドイッチ教育」が行われていた。
研修は4回あるため、都合1年間の長期となる。卒業には5年かかるが、学生は企業から給料(的なもの)をもらい、学費に充てていた。「共同教育」という名の正課に位置づけられて、大学のバックアップ体制もしっかりしていた。カナダの大学では競って実施されている。
一気にここまでは行かないにしても「そとが学び」プログラムはこれからも充実させていきたい。それには企業の側の理解が欠かせない。ことしは準備期間が短かったが、今度はもっと多くの企業に呼び掛けたい。
次世代の技術者を育てる喜びを教育パートナーである受け入れ企業の方々と分かち合いたいと思う。