2007年度に入学された皆さんへ
入学および大学院進学の皆さん、ご入学・進学おめでとうございます。新入生・進学生を受け入れることは私たち大学教職員にとって最高の喜びです。心から歓迎します。
今日は入学生の保護者の方々も多く見えておられますが、ご子女のご入学に誰よりも晴れやかな気持ちでおられることと思います。心からお喜び申し上げます。
ここには山口県出身の方もおられるかと思いますが、2月、萩に出かけました。初めての訪問でしたが、往時の雰囲気をかもし出しながらもなお現代の日常生活が営まれている萩の町並みに、いろんな意味で感銘を受けました。
最初に立ち寄った萩駅には、「長州ファイブ」という映画の説明パネルがありました。幕末、当時の長州からイギリスのロンドン大学に留学した、最初の総理大臣伊藤博文、後に鉄道王といわれた井上勝、明治政府の重鎮井上馨、工部卿山尾庸三そして遠藤謹助の5人の物語だそうです。江戸時代末期とはいえ、ちょんまげを結い、刀を差し、はかま・ぞうりの時代です。そんな時代にイギリス留学を志したのです。ものの本には、「密航」と書いてあります。なんとしても目の前とは違う"世界"を見たい、新しいことを学びたいという志を持っていたことに改めて感銘を受けました。
その後、松下村塾を訪れました。ご承知のように、吉田松陰が作った私塾ですが、想像していたより質素な建物でした。そこから高杉晋作、山県有朋や伊藤博文など幕末から明治にかけて活躍した多くの人材が出ました。吉田松陰も下田に来た黒船に乗ってアメリカに密航しようとしました。失敗して、萩に戻り(戻らされ)松下村塾を始めたわけです。まだ見ぬ新しい世界に魅せられた松陰の志にも深い感銘を受けました。
萩の町の路地は、当時でも若者が肩を張って歩けば帯刀した刀の先と先が触れ合ったのではないかと思われるほど小さな路地でした。この狭い路地を、当時の若者の志と志がすれ違って行き来していたのではないかと想像して、ひとり興奮を覚えました。
皆さんは今広島工業大学に集いました。大学はいわゆる学校教育の最後で、中学校や高等学校とは違った新しい世界です。皆さんにお願いしたいことは、今日、この時に改めてこれからの大学生活で、「何かをしたい」とか、「何かを達成したい」という思い、すなわち大学という新しい世界に対する志をもう一度確認して欲しいということです。萩の町を歩いていた人たちは、ちょんまげを結い、帯刀してはかま・ぞうりをはいていました。しかし彼らの心の中には新しい世界に触れたいという強い思い、志があって、危険をおかしてまで新しい国に出ようとしました。皆さんも、ついこの前高等学校の卒業式を終えてきたばかりです。外見は高校生と急に変わりようがありません。またこの会場も見慣れた光景です。しかし、皆さんにも、目の前の光景にとらわれない新しい世界に対する志を持ってほしいということです。「こんな生き方をしたい」という志も素晴らしいと思います。人一倍の努力が必要ですが、課外活動や仲間と一緒に取り組む活動をしたいという思いも大変価値のある志です。
広島工業大学は、「常に神と共に歩み社会に奉仕する」という志を持っております。広島工業大学の教育方針です。広島工業大学は、この志を持って40年余、教育に当たってきました。そんな本学には、「誠実」という学風があります。私はこれを誇りに思っています。
「常に神と共に歩む」は、わかりやすく言えば、Something Greatとでもいいましょうか、われわれの叡智をはるかに越えた偉大なものと常に一緒にいるということです。具体的な教育にあたっては、「自然を畏敬し、環境と倫理を重んずること」そして、「社会や人とのかかわりを大切にすること」と理解し、「中核技術者としての基礎知識とそれを応用する力、そして社会と環境を重視する認識と技術者としての高い倫理」を培うことを学習教育目標としています。「社会・環境・倫理」に対する思いと行動力を身につけた広い意味での技術者ということです。これからの技術系人材として本当に必要とされているのはこのような人材です。
この広島工業大学の志が皆さんの志とどこかで共鳴することを願っています。
皆さんにとって本学は新しい世界ですが、本学には、皆さんの志を実現させるために他の大学ではあまり見られないプログラムが用意されています。早期卒業制度もその一つです。がんばれば3年で卒業できるという制度です。3月、第1号の先輩が出ています。
トラック制もその一つです。基礎的なことだけでなく、もっと進んだ勉強をしたいと思っている人のために、通常の「基本学習トラック」のほかに「発展学習トラック」があります。「発展学習トラック」では、少しレベルの高い専門科目、中級レベルの英語ないしは中国語、大学院の授業の先行履修、また長期インターンシップなどを履修できます。
教養教育をもっと勉強したいという人には放送大学の提供する科目の単位も30単位まで取れます。昨年は、心理学の単位をとった学生がおりました。
また本学では海外の大学と協定を結んでおり、語学研修プログラムがあります。昨年度マレーシアでの英語研修制度をスタートしましたが、残念ながら参加者はいませんでした。皆さんの中から第1号が出てくれることを期待しております。これからは、アジアの国々との交流がますます盛んになります。本学では、特に隣国の中国に理解のある技術系人材を育成したいと考えています。今年度から中国語の専任の先生に着任していただきました。
英語や数学、物理の復習をし、基礎力をつけたい人あるいは高等学校で選択しなかった人や理解が十分でない人たちのためには、教育学習支援センターがあります。
いま、皆さんの志と志がこのキャンパスの中を行き来し、すれ違う場面を想像し、萩の路地で覚えた興奮と同じような心の高まりを感じております。
このキャンパスが皆さんの志が行き来する空間であり、これからの4年間あるいは大学院生にとっては2年間が、それを実現するための切磋琢磨の時間となることを願って、入学および進学のお祝いの言葉といたします。