たかもと のぼる
高本 登 Noboru Takamoto
生命学部 生体医工学科
教授
出身:熊本生まれの広島育ち (基町高校卒業)
n.takamoto.5c@it-hiroshima.ac.jp
世代や性別を問わず、多くの人々が健康維持のため、様々な運動を行っています。ジョギングはブームと言われるほどですし、ウォーキングなどを励行する人も少なくないでしょう。ただ、運動をやり始めたけれど、しんどくてすぐ止めてしまったとか、面倒くさくていつの間にかやらなくなった...という人も結構いるのではないでしょうか。
運動も、やみくもにやればいいというものではありません。適切なやり方をしないと望む効果は得られないし、苦しい思いをするばかりでは続ける意志もそがれてしまいます。
適切なやり方で行えば、体にそれほどハードな負荷をかけなくてもいいんです。例えば1セット10回のスクワットを1日1セットか2セット行う、という程度の運動なら時間もかかりませんし、苦しさを覚えることもないはず。これを毎日続けてみてください。年齢や体重によって差はありますが、1~3ヶ月すると、効果は数値として表れてくると思いますよ。
どういう運動をどの程度やれば、どういう効果が表れるか。そういったことを明確にしたい、というのが私の研究テーマです。
1セット15回のスクワットを3セット、週2回1ヶ月間継続するとどうなるか、学生に被験者になってもらい、朝食前後の血糖値の変化を検証しました。すると、ウォーキング・ランニングなどの有酸素運動を継続した場合と同じくらい血糖値が低下することが分かったんです。このことから、スクワットなどの筋トレも血糖値の低下に効果のある運動と言えるのではないかと思っています。いずれにしても、運動習慣を日常に取り入れる、ということが健康づくりには最も大事です。
ウォーキングやジョギングなどの運動を対象とした実験も行っています。ウォーキングにもその人の体型や年齢に応じた、適切なやり方があるのです。正しい姿勢や歩幅などを意識すると、運動効果が得られやすくなります。いたずらに「早く歩けばよい」というものではありません。手の振りも大事ですよ。手の振りが体の動きをリードしますから。
実験は学生だけでなく、可能な限り中高年の方々にもご協力いただいて行っています。筋肉や脂肪の量を最初にエコーで測定、運動を一定期間継続した後でそれらがどう変化したかを見るのです。エコーを使うと筋肉や脂肪の状態が視覚的に把握できるので、ヤル気がいっそう高まるようですね。
どういう運動が、筋力や体力向上にどんな効果をもたらすかという研究は、一般の方々の健康維持だけでなく、アスリートの運動能力UPにも貢献するもの。私はゼミの学生と共に、筋硬度計という筋肉の硬さを測定する装置を使い、アスリートを対象としたテーマにも取り組んでいます。一定時間トレーニングを行うと、筋肉は硬くなります。硬くなった筋肉をほぐすのも、アスリートにとっては大切なことです。そこで様々な運動を行った後、筋肉を冷やす、温める、磁気を使うなどのいろんなほぐし方を試し、筋硬度計で筋肉の硬さの経時変化を測るのです。部位や運動の違いにより、どんなほぐし方が有効か、見えてくるでしょう。
適切な運動を継続すれば、筋肉量は着実にアップします。これは高齢者でも変わりません。筋肉量が増えればそれだけ自然な動きができ、うっかり転倒することも少なくなります。転倒は高齢者にとって寝たきりにつながりかねないものですが、筋肉がそれを防いでくれるわけです。長く健康的な暮らしを送ろうと思うなら、運動による『貯筋(ちょきん)』が一番。もっといろんな運動について検証し、効果を明らかにしたいですね。
ゼミ取材 こぼれ話
ゼミの学生たちには、『健康運動実践指導者』の資格取得を奨励している、という高本先生。『健康運動実践指導者』とは、健康・体力づくり事業財団が認定する公的な資格で、取得者は地域社会で健康運動の指導を行うことができます。地域の人々に運動習慣を身につける機会を提供することで、生活習慣病の予防や高齢者の健康維持に役立てる実践者となるためのこの資格は、これからの日本にますます必要とされるでしょう。「資格取得支援のため、学外から専門の講師を招いて学生たちを指導してもらう、なども行っています。学生には、資格を取得し、地域社会における健康づくりのリーダーとして活躍してほしいですね」と先生は語ります。