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食健康科学科

玉里 祐太郎

教員紹介

玉里 祐太郎TAMARI Yutaro

環境学部 食健康科学科 講師

研究者情報

プロフィール

【専門分野】
○運動生理学
○健康科学
【担当科目】
生涯スポーツA/B 、 健康とスポーツの科学 、 解剖学 ほか
【研究テーマ】
1.登山後における下肢の遅発性筋肉痛に関する研究
2.中高齢者における運動時の生理応答特性に関する研究
【ひとこと】

人は生まれてから死ぬまで学び続けます。「学び」は、人生を豊かにするための営みです。大学4年間では、学ぶことの楽しさを実感してください。

研究紹介

玉里 祐太郎TAMARI Yutaro

環境学部 食健康科学科 講師

場合によっては重大な事故につながりかねない「筋肉痛」を防ぐには?
PROLOGUE

普段、デスクワークばかりでなまっているから...と急に激しく運動すると、たいてい起こるのが筋肉痛。イタタタ、と唸るだけで済むなら笑い話みたいなものですが、場合によっては重大な事故につながることもあります。例えば登山中に筋肉痛が発生してしまったら?「登山によって発生する筋肉痛は、さらなる重大事故の引き金になりかねません」と話すのは玉里先生。先生は筋肉痛の予防策や、痛みを軽減する方法について研究しています。

重大事故はむしろ下山時に多く発生する

私がテーマとしているのは、遅発性筋肉痛、つまり運動して半日・1日経ってから発生する筋肉痛です。痛みをどうやったら予防できるか、軽減できるかに主眼を置いて研究しています。
最近、着目しているのが、登山の後の筋肉痛です。登山では、脚の筋収縮を何度も繰り返します。繰り返しているうちに疲労が蓄積し、筋肉痛が発生するわけです。登山での筋肉痛は、大半が登りより下りで起こります。下りの時は、長い時間筋肉を使って疲労も溜まっていますし、より重要なのは、筋肉が伸張性収縮になってしまうことです。
伸長性収縮というのは、筋肉が伸びている状況で筋力を発揮すること。簡単に言うと、動きに対してブレーキをかける状態です。下山時は自然と体が下に引っ張られるので、足でブレーキをかけ、歩行スピードを制限しながら進みますよね。この時、足の筋繊維は伸びており、さらに力がかかると切れやすくなります。これが筋肉痛につながるのです。
登山の重大事故は、登りより下りのときに多く起こりがちです。これは疲労の蓄積に加え、伸長性収縮の連続で負荷がかかり、元気な時と同じ行動が下山時にできにくい点に原因の一端があります。

日頃の運動習慣が筋肉痛を軽減する

登山中に筋肉痛が起こってしまったら、早急な回復は難しくなります。そうなると大事なのは、登山を始める前、筋肉痛を起こさないためにどんな準備をしておくか。私はその予防法を研究しています。
以前、富士山の麓で、富士山に登った人たちにアンケートを取ったことがあります。その結果、やはり普段からの運動習慣があると、筋肉痛はかなり軽減できるとわかりました。と言っても別に、ジムでトレーニングなどしなくてもいいのです。重要なのは運動強度よりも、運動時間です。ウォーキングなど軽いものでいいから、1日30分を継続する、とか。
アンケートでは登山者の登山歴や休憩時間のとり方なども聞いてみました。登山歴の長い人が筋肉痛を起こしにくいのも、日頃の運動習慣があるおかげのようです。一方、休憩時間と筋肉痛との相関性は見られませんでした。やはり登山に入る前の準備が大事だと実感します。
広島工大の近くには、世界遺産に登録された厳島神社がある宮島があり、宮島には弥山という山があります。535mとそれほど高くないので観光客にも人気ですが、登ってみると意外に険しい。登山時の筋肉痛研究にもってこいなので、学生たちを連れてよく登っています。慣れていない学生は、下山時に筋肉痛を起こすことがありますね。実際の登山を使った研究は年2回程度行っており、今後は鳥取の大山などにも行ってみたいと考えています。

登山に入る前の準備が重要であることを実感
宮島の弥山からの眺め。
実際に登山をして筋肉痛の研究を行うことも

登山以外のスポーツや健康全般に関する研究もサポート

高齢になると、筋肉痛が若い時よりも遅れてやってくる…と言う人も多いですが、加齢によって筋肉痛の起きるタイミングが遅れることはないというのが、最近の定説です。影響しているのは、運動習慣です。若い人は運動習慣がないようでも、日常的に動く量が多い。高齢になると、短い距離でも車を使うなど、どんどん運動量が減っていく。運動習慣が少なくなるため、筋肉痛の起き方が変わるのです。
普段から運動習慣をつけるには、何か特別に始めようと難しく考えないことです。通勤で10分だけ歩く時間を増やすとか、エレベータでなく階段を使うとか、今の生活でできる範囲でいい。それが登山時の重大事故を防ぐだけでなく、あらゆる方面で健康を維持するための基本なのです。
学生たちにはそれぞれの興味に応じてテーマの幅を広げてほしいと考えています。登山以外のスポーツを対象にするとか、健康運動全般をとらえるとか。この学科にはリハビリや運動療法に興味を持つ学生も多いので、そういう研究もしっかりサポートしていきます。