例えば食物繊維は整腸作用、血中高コレステロールやガン抑制作用といった生理機能が調べられています。また、ビタミンやトコフェロールでは老化やガンの原因となる活性酸素の働きを抑え、細胞膜や遺伝子の過酸化を防ぐ抗酸化機能について盛んに研究されています。村上研究室はそんな様々な機能を持つ「機能性成分」や、その働きに注目しています。
一口に食物繊維といって構造も性質も、機能もさまざま。全ての食物繊維にガン抑制効果があるわけではありません。それは、ビタミンやトコフェロールにも同じことがいえます。また、食品の原料にせっかく機能性成分が含まれていても、調理や加工によってその機能が失われてしまう...ということもあります。食品の場合は食べて(例えば消化・吸収という過程を経て)、機能が発揮されなければ、意味がありません。
最近、注目しているのが「全粒粉パン」。この栄養成分の分析や機能性について研究しています。食パンなどの一般的なパンは小麦の胚乳部分を精製した小麦粉で作られています(それらは白パンと呼ばれます)。一方、「全粒粉パン」は小麦粉の外皮(ふすま)や胚芽を含んだ状態で粉にした全粒粉で作られています。そのため、「全粒粉パン」は「白パン」に比べて、ビタミン、ミネラルや食物繊維が豊富です。
しかし、原料の段階で栄養成分・機能性成分が豊富であっても、パンに調理・加工した段階で機能性が保持されているかどうかが重要です。私たちが実際口にするのは、原料ではなく、製品となったパンなのですから。村上研究室では、さまざまな原料や製法の全粒粉パンの食物繊維量や抗酸化機能を比較しています。パンに「美味しくて健康づくりに役立つ」という科学的裏付けがあれば、より多くの人に食べてもらえると期待しています。
アカモクは、北海道の一部を除いて日本全国の海岸に生育する海藻です。昆布やもずくの仲間で、ネバネバ成分のフコイダンやアルギン酸といった水溶性食物繊維のほか、ミネラルも豊富。しかし古くから、アカモクが食べられていたのはごく一部の地域でした。
私たちがアカモクの研究を始めた頃は、栄養学的な研究報告がほとんどなく、栄養成分の分析から始めました。その結果「アカモク」が最もおいしく、しかも栄養満点の時期(旬)がわかりました。
現在は、アカモクが腸内細菌叢(そう)にどのような影響を与えるのかという機能性の研究も進めています。大学の遺伝子解析室にズラリと揃ったバイオ実験機器(DNA分析装置、PCR装置、DGGEシステム)を活用し、アカモクを食べたラットの腸内の細菌を調べるのです。これはアカモクを食べることにより腸内環境が良好になるという機能性を示すための実験です。こうした研究成果を、広島産アカモクの製品開発につなげたいと考えています。
「全粒粉パン」や「アカモク」の機能性成分の分析や、その機能性を明らかにする、といった取り組みは、ゼミ生の卒業研究のテーマにもなっています。