自分の体を鍛えるために、最も効果的なトレーニング方法とは、どのようなものか。限られた時間で、効率の良いトレーニングを行うには、どうしたら良いのか。ケガを防ぎながら、運動能力を高めるために、何に気を付けなければならないのか。スポーツ好きだった私は、常にこうした疑問を抱いていました。
勘や経験だけに頼るのではなく、もっと科学的なトレーニング方法を研究しようと、スポーツ科学を専攻したのです。
一流のスポーツ選手でも、激しいトレーニングを積み重ねた末に、ケガで苦しむ例が後を絶ちません。「疲れた」「体調が悪い」と感じた時に、それが「気分」によるものなのか、「体に具体的な疲労がたまっていること」によるものなのか、科学的に判断できれば、ケガや体調を崩すことを防げます。
自分の体の状態が客観的にわかれば、それに合せたトレーニング方法を考えることができるようになります。
これは、スポーツ選手だけに役立つものではありません。一般の人が健康を目的として適度な運動をする場合にも、高齢者が健康を維持する上でも、また効果的なリハビリの実現にも、利用できるものなのです。
その意味で、社会の広いニーズに応える研究テーマに取り組んでいます。
私が取り組んでいる研究は、「近赤外分光法」という方法を使っています。近赤外光は、可視光と赤外光の中間にある光です。この近赤外光を使って、血液中の酸素の変化を測り、それによって筋肉内の血液の変化のエネルギー消費量などを測定しています。
従来、血液中の酸素量の変化を測るには、実際に血液を採取しなければなりませんでした。何回も繰り返すのは、体の負担にもなります。
「近赤外分光法」では、近赤外光がヘモグロビンに強く吸収される性質を利用して、近赤外光を体外から照射するだけで筋肉中の酸素量の変化が分かります。したがって、体へのダメージはありません。短時間内の連続測定もできますし、子供や高齢者も測定できます。しかも、実際の測定機器は、手のひらに乗るくらい小型化されています。
「近赤外分光法」によって、例えば「運動した後の筋肉の酸素回復能力が高い人ほど、持久力が優れている」ことなどが、明らかになってきました。
ゼミでは現在、「ストレッチ中の筋肉の酸素変動」などを研究テーマにしています。筋肉を伸ばしている時に筋肉の酸素量はどう変動するのか、血流は増えてくるのか。こうした効果を数値化して、効果を判断していきたいと考えています。
また、「1週間だけ有酸素運動を行った場合、トレーニング効果はあるのか」というテーマにも取り組んでいます。自転車こぎやウォーキングなど、実際に有酸素トレーニングを行い、持久力や筋肉の酸素量の変化を調べるというものです。
ゼミの学生は、在学中に「健康運動実践指導者」や「健康運動指導士」の資格を取る者もいます。こうした健康運動指導の資格は、生活習慣病の予防や筋力低下予防など、人々の健康を維持・改善するために、安全で効果的な運動プログラムを提案・指導する専門家です。この分野は最近、学生に人気が高く、私のゼミでもこの資格を希望する学生が増えてきました。
卒業生は、この資格を活かして運動施設やスポーツ関係の仕事で活躍しています。