大東 延幸

おおひがし のぶゆき

大東 延幸 Nobuyuki Ohhigashi

工学部 都市デザイン工学科 講師
出身:奈良県 ((私立)東大寺学園高等学校)
n.ohhigashi.sk@it-hiroshima.ac.jp
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地域の実情に合わせた交通計画が実行されているか?

120万人都市である広島市の中心部では、30万人の人が働いています。この人たちは、鉄道・路面電車・バス・マイカーなど様々な交通手段を利用しています。もし30万人がいっせいにマイカー通勤をし始めたら、どうなると思います?
鉄道は1時間に3万人を運べます。バスなら1万人、路面電車は5000人です。ところがマイカーは、1時間あたりせいぜい700人しか運べません。人数だけの問題ではありませんよ。今の広島の道路は、1時間に700台もの車を通すようには造られていない。となると、道路を広げてやらないといけない。通勤で使った車を停める駐車場も必要ですが、30万人分となると4平方kmもの広さになる。そんな広い道路や駐車場は造れるはずがない。
じゃあ全員マイカー通勤を止め、東京や大阪のように公共交通機関を利用すればいいのか?と言うと、そうはいかない。東京や大阪では、網の目のような路線が構築され、5分間隔で電車が走っています。しかし人口の遥かに少ない広島で同じことをやろうとすると、鉄道会社は大赤字になってしまう。
大事なのは、地域の実情に合わせた交通計画がなされているか?ということなんです。

120万人都市と10万人都市とでは、交通のあり方が異なる

人口10万人以下の小さな都市なら、交通の主流はマイカーになります。公共交通機関の発達にも限界があるので、マイカーを使った方が便利です。しかし、その都市と同じ感覚で広島市の住民たちがマイカーを使い始めたら、交通はマヒします。120万人都市には、規模にあった交通計画があるべき。なのに、交通と言えば、みんな「車に乗ることだ」と思ってしまう傾向が広島市にはあるようです。この発想を変えなければ、交通のムダは省けません。
さらに、広島市中心部と、広島工業大学のある五日市地区でも、あるべき交通計画には違いがあります。五日市地区の住民の半分は、山の斜面を切り開いた住宅街に住んでいる。彼らが高齢者になったら、交通計画も変わるはずです。高齢者にとって斜面の昇り降りは大変なので、車を使いたがるでしょう。しかし高齢になると車の運転は不安と考える人もいる。そういう人は街中に住みたいと思うようになるかもしれない。こういう状況になった時、どう“住民の足”を確保するか。
交通計画は、暮らしやすい街づくりに直結する課題。「どこかの地域のマネ」では、決してうまくいきません。

交通のムダを省くことが、暮らしやすい街をつくる第一歩

今までは、交通渋滞を緩和するため、新たな道路を造ったりしていました。また鉄道などの新たな路線を引き、人の流れを変えようとしました。しかし、今はどの自治体にも、そんなことをする予算の余裕がありません。お金をかけずに交通の問題を解決するには、確かな交通計画を構築することが重要なんです。マイカーと、鉄道・路面電車・バスなどの公共交通機関の使い分けを視野に入れ、どういう状況で何を使えば交通のムダを省けるか考える。それが、住民に“快適な足”を提供することにつながります。
人間とは「どこかに移動する生き物」です。学校に行く、仕事に行く、ショッピングやレジャーに行く...。人間の営みには、どこかに移動し、誰かと出会うという行為がつきまといます。その人間の営みを支えるのが交通。確かな交通計画がないと人が流れなくなり、街が活力を失っていくんです。広島市や五日市地区がいつまでも活力ある街であるように、私は、地域のあるべき交通の姿を追究していきます。

ゼミ取材 こぼれ話
「地域の人々が“交通”をどうとらえているか、ちょっとしたことから分かります。例えば中古車の広告からでも」と語る大東先生。先生によると、東京で中古車広告は、たいてい新聞の折り込みチラシとして提供されています。ところが広島で中古車広告は、折り込みチラシではなく、新聞の本紙面に掲載されることが多いらしいのです。「これは、広島の人々が東京に比べ、車に関する情報に敏感だということを表しています。広島では交通と言えば、やはり“車”なのです」。こうした実情を理解しておくことが、地域で有効な交通計画を立てるための第一歩です。