伊藤 征嗣

いとう せいじ

伊藤 征嗣 Seiji Ito

環境学部 地球環境学科 准教授
出身:兵庫県明石市
seiji@cc.it-hiroshima.ac.jp

粗い画像を“鮮明”にすれば、いろんな使い方ができる

今日では多くの人工衛星が地球上を飛び回り、様々な情報を地上に送ってくれます。地表面の様子を撮影し、情報を送るなんてことが日々行われているのです。衛星の中にもより鮮明な画像(高分解能画像)を撮影できるものと、あまり鮮明でない画像(低・中分解能画像)しか撮影できないものがあります。高分解能の画像を撮影できる衛星の数は少なく、また画像取得の費用も高いのが一般的。一方、低・中分解能画像を撮影できる衛星は多く、ほとんどが低額、または無料で画像が取得できます。
例えば、同じ場所を何年にも渡って観察し、自然の緑がどれだけ増減したか、といったことを研究するには、それだけたくさんの衛星画像を取得しなければなりません。でも高分解能画像は高くて、たくさんは取得できない。より安い低・中分解能の画像を使い、観察に必要なデータを収集するにはどうすればよいか? 低・中分解能画像を、今以上に"鮮明に"してやればいいのではないでしょうか。
そこで私は、低・中分解能画像を可能な限り鮮明にするためのシステムづくりに取り組んでいます。

粗い画像からでも、自然の分布具合が割り出せた

画像データの最小単位は1ピクセルです。ちなみに高分解能画像は1ピクセルあたり数mという細かさ(=それだけ鮮明ということ)ですが、中分解画像だと1ピクセルあたり30mくらい、低分解能画像だと1kmくらいの粗さになります。今、着目しているのは、1ピクセル四方に、森林や草原といった自然の緑がどの程度含まれているか、ということ。緑が含まれる割合を1ピクセル四方の濃度から推定するのです。
さらに精度をあげるための工夫も施しました。衛星が撮影した画像には、目的とする地点の情報だけでなく、光の屈折などによる余分な情報も含まれてしまいます。余分な情報に影響されると、そこにどれくらい緑が含まれるか、正確に推定できません。そこで目的とする1ピクセル四方の地点だけでなく、周囲がどうなっているかという情報も付加して分析することで、余分な情報を取り除くフィルターを作り出しました。
このシステムにより、低・中分解能画像を使用して、自然の緑を割り出してみたのですが、結果は上々。実際の植生分布図とほぼピッタリ合う画像が作成できました。

  • 広島の植生分布

  • 広島市街地の植生分布

精度を高めれば、もっと多彩な情報が取り出せる

近年、環境保護の重要性が世界中で叫ばれるようになりました。自然の緑がどの程度破壊され、減ってしまったかということだけではありません。例えば、本来あるべき氷河が地球温暖化の影響でどんどん縮小している、と報告されています。ではどの地点で、氷河がどれくらい減っているのかを明らかにするには、何年にも渡って観察を続けなければいけません。私の開発した『低・中分解能衛星画像を、より鮮明にする』技術は、こうした場面でも大いに役立つと期待しています。
そのためには、技術の精度をもっともっと高めていきたい。例えば、1ピクセル四方の50%に緑が含まれているとわかっても、緑の分布の仕方は1ピクセル四方の中で様々です。分布の仕方まで分かるようになれば、より精度の高い情報が提供できるようになるわけです。また自然の緑だけでなく、他の様々なものを対象とした時にも分布の様子を明らかにできるようにしていかないといけません。
取り組むべきテーマがたくさんあるので、ノンビリしてるヒマはありませんよ。

ゼミ取材 こぼれ話
『画像データ』を対象として研究に取り組む伊藤先生。以前に手がけていたのは『画像データから自動で"キーワード"を抽出するシステム』というもの。「画像データの中にはいろんな要素が含まれています。例えば緑いっぱいの山だったり、青空や海だったり。これらを自動で認識し、"山""海""空"といったキーワードとしてデータベース化してくれるシステムを考案しました」。この『キーワード自動抽出システム』の開発も継続中。「画像データの専門家」たる伊藤先生のゼミから、次はどんな新しいシステムが生まれるのでしょう。